ビジネスでも役立つ“妄想力”…大喜利力アップで「人とは違うアイデアも出てきます」

「妄想に正解はなく、自由」だというせきしろさん【写真:倉野武】
「妄想に正解はなく、自由」だというせきしろさん【写真:倉野武】

エアコンのリモコンが落ちていた「神のリモコン? 地球の温度設定している?」

“無自覚な路上詩人たちは無意識を置いていく”では、路上に落ちていた「本日お休みさせて頂きます 清」と書かれていたメモを「清さんの人生や生きざまが凝縮された一文」とし、「『清』が『みつを』のような署名にすら見えてきて……」と相田みつをの書にたとえて絶妙な味わいも醸し出す。

「今回の本を読んで、10年、20年会ってない人から『よかったよ』と連絡がくることが多かった」という。その理由について、担当編集者は「自分のふるさとを思い出したり、昭和の風景とか、時代を共有して懐かしく思えるようなものが多いのでは」と代弁してくれた。

 せきしろさんは、妄想についてこう語る。

「落とし物1つにもいろいろなドラマがあるし、可能性があるんだということ。皆さんにもやってもらいたい。いろいろなパターンを考えれば楽しくなるし、妄想だけで本になるんだとか、これだったら俺にもできるとか理由はなんでも構わないのでやってみようと考えるきっかけになってくれたらと思います」

 妄想の秘訣について、「妄想に正解はなく、自由。大喜利みたいにお題があってその答えを考える。その数が多いほどよくて、徐々にゲームだったり漫画だったり自分の得意分野が明確にもなってくる。そこから自分の才能に気づいたりする可能性もある。また暇つぶしにもなるのでビジネスマンなら会社の会議中に時間が早く過ぎるのにも役立つし、大喜利力もアップするのでとっさに人とは違うアイデアも出てきますよ」とアドバイスする。

 連載は終わっても、「この前もエアコンのリモコンが落ちていて、表示温度が25度になっていた。これって神のリモコン? 地球の温度設定している? なんて考えてますね」と妄想の日々は続いている。

 一方、作家とともに、近年はお笑い芸人で芥川賞作家の又吉直樹と共著で自由律俳句(五七五の定型ではない俳句)の本を3冊出すなど俳人としても活躍。今後について聞くと、目を輝かせてこう話した。

「自由律俳句を投稿してもらう連載もやっていますが、10代の人の俳句とか見ると、自分じゃ考えもつかないことが書いてある。自由律でも定型でもいいので、若い人にもっと詩歌にふれあってもらえるように導いていきたい」

 妄想でも俳句でも、こういう指導者についていきたい。

□せきしろ 1970年、北海道出身。北海道北見北斗高校卒業。「去年ルノアールで」「海辺の週刊大衆」「たとえる技術」など著書多数。共著では又吉直樹さんとの「カキフライが無いなら来なかった」「まさかジープで来るとは」「蕎麦湯が来ない」、西加奈子さんとの「ダイオウイカは知らないでしょう」もある。

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