ビジネスでも役立つ“妄想力”…大喜利力アップで「人とは違うアイデアも出てきます」

作家で俳人のせきしろさんが、この春出版した「その落とし物は誰かの形見かもしれない」(集英社)は、落とし物をめぐる妄想エッセー集だ。主に東京で、さまざまな落とし物を発見しては「なぜここにあるのか」と妄想し、それぞれ笑いと涙の物語を紡ぐ。仕事仲間でお笑い芸人の山里亮太(南海キャンディーズ)が「妄想脳トレの最終形態」(帯文)と評した本書への著者の思いを聞いた。

落とし物をネタに妄想するというせきしろさん【写真:倉野武】
落とし物をネタに妄想するというせきしろさん【写真:倉野武】

せきしろさんインタビュー、エッセー集「その落とし物は誰かの形見かもしれない」

 作家で俳人のせきしろさんが、この春出版した「その落とし物は誰かの形見かもしれない」(集英社)は、落とし物をめぐる妄想エッセー集だ。主に東京で、さまざまな落とし物を発見しては「なぜここにあるのか」と妄想し、それぞれ笑いと涙の物語を紡ぐ。仕事仲間でお笑い芸人の山里亮太(南海キャンディーズ)が「妄想脳トレの最終形態」(帯文)と評した本書への著者の思いを聞いた。(取材・文=倉野武)

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「10年くらい前から何となく落とし物の写真を撮っていて、集英社のウェブで連載の話があった時に、そこそこの枚数になっていたので、これで企画を動かしていけるんじゃないかと」

 2018年10月から20年9月まで、集英社のウェブメディア「よみタイ」で連載した「東京落物百景」をもとに加筆修正した本書。手袋にはじまり靴底、象のジョウロ、携帯電話のストラップ、サングラス、レモン、ぬいぐるみ、買い物メモ、VHSビデオテープ、突っ張り棒……、実際にあった50の落とし物をネタにさまざまな妄想を披露する。

 例えば、“落ちている軍手を数えて歩く”の回では、「なぜそこに軍手があるのか?」の疑問に、「場所取り、決闘を申し込んだ形跡、軍手が好きだった友人へのお供え」から、「この近くに手袋のなる木があるから」「変わり身の術」「姿を変えられた王子様」などと展開。さらに、「誰かと軍手が衝突した時に中身が入れ替わった」と映画「転校生」や、舘ひろしと新垣結衣のドラマ「パパとムスメの7日間」、そして、「最近だと『君の名は。』と言った方が最も伝わるだろうか」とフォローして話は進む。

“悲しい「PASMO」が落ちている”では、落とし物がただのPASMOでなく、それに(レッスン)の言葉が書かれていたことから、落とし主について「もっとも感情を揺さぶるのは子どもに設定した時だ」とし、ダンスのレッスン用に親から渡されたPASMOを落としたと仮定し、「悲しさ以外何があるだろうか」と子供の心中に思いをはせる。

“落ちているベルを押してしまったばかりに”では、「これ(ベル)を押せば何かが起こるのだ」といい、押してだれかが出てきて「何?」と言われたらどうするか、謝っても「謝って済んだら警察いらないよね」と言われて長引くと心配。逃げても足の速いおじさんがぐんぐん迫ってきたらどうしよう、と「ベルおじさん」なる都市伝説も生まれ、「自分で勝手に想像したというのに怖くなってしまった」とも。

 まさに縦横無尽、八面六臂(ろっぴ)、七転八倒? で繰り広げる妄想の数々。「例えば軍手からどれだけのパターンを考えらえるかというのが好きですね。20個考えるまではその場を動かない、それくらい考えられなきゃと、自分にノルマを課すみたいなところがあって、それも10分以内にできないとダメとか」とまるで修業僧のよう。「性格ですね。今回はそれが作品になったから救われてますけど、ただ1人でずっと(妄想を)やっているだけということもありますからね」

 中には、幼い頃の友人や家族、ふるさとの情景を切り取ったような詩的で作品もちりばめられ、「結構泣ける」の反響も。生まれ育った北海道の春の匂いが立ちのぼる“雪国の落とし物は春に見つかる”や、小学生時代、弟が買ったソフトクリームを道に落としたときのほろ苦い思い出をつづった“記憶のソフトクリームはいつまでも溶けない”などはしみじみと胸に迫る。

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