「金網の鬼」「国際軍団」「マイク」…多彩なスタイルでファンを熱狂させたラッシャー木村さんの思い出【連載vol.42】
こだわりの髪型に微笑「そう、そうなんです。だからね、アイパーなんです」
実際、木村さんを悪く言う人はいない。口数は少ないが、いつも誠実に答えてくれた。「その髪型、パンチですか?」という何気ない問いかけに「いや、あのですね、これはパンチではなくアイパーなんです」「え、パンチとどう違うんですか?」「難しいことは分からないんですけれどもね、でもパンチではなくてアイパーなんです」。
こだわりの髪型だったようだ。後日、理容店で聞いたことを木村さんに伝えた。「パンチはペタンとチリチリになるのに対し、アイパーはやや大きめのカールなので、ちょっとフワッとした感じになるみたいです」。
すると木村さんはうれしそうに「そう、そうなんです。だからね、アイパーなんです」と微笑んだ。「でもね、よくタクシーに乗車拒否されるんです。怖い人に見えるんでしょうね。まあ仕方ないですね」と、少し寂しそうに笑った。
よく着ていらっしゃった派手な柄物のシャツは「普通のモノは合うサイズが少ない。好きなシャツではなく、着られるシャツを選ぶとこうなってしまうんですね。派手ですかね?」と、ちょっと弱々しく笑う。「いや、分厚い体にお似合いですよ」と答えると、少し照れたように微笑んでいた。
木村さん、天国で熊五郎と再会しましたか? 愛犬は、死後も飼い主のそばを離れないといいます。きっと木村さんに甘えているのでしょうね。
多種多様なスタイルで会場を沸かせていた、あなたのファイトを、多くの後輩レスラーたちが受け継いでいます。あの優しい笑顔で、見守っていてくださいね。(文中・一部敬称略)
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【写真】日本初の金網デスマッチで勝利したラッシャー木村さん