コロナ禍で留学を切り上げて帰国、オーディションで大役つかんだ15歳 若手俳優の素顔
尾野真千子主演の映画「茜色に焼かれる」(5月21日公開、石井裕也監督)での好演が光るのが、俳優の和田庵だ。8歳から子役として活躍し、昨年夏までカナダで語学留学していた15歳。コロナ禍、留学を切り上げて、帰国し、オーディションで役をつかんだ。今年の映画賞レースでも、注目を集めそうだ。
和田庵インタビュー…映画「茜色に焼かれる」で中学生の息子・純平役
尾野真千子主演の映画「茜色に焼かれる」(5月21日公開、石井裕也監督)での好演が光るのが、俳優の和田庵だ。8歳から子役として活躍し、昨年夏までカナダで語学留学していた15歳。コロナ禍、留学を切り上げて、帰国し、オーディションで役をつかんだ。今年の映画賞レースでも、注目を集めそうだ。(取材・文=平辻哲也)
「茜色に焼かれる」は交通事故で夫を亡くしたヒロイン、田中良子が数々の苦境の中でも、「まあ、頑張りましょう」と自らや周囲を励まし、ピンクサロンの従業員やスーパーの花屋を掛け持ちしながら、力強く生きていく物語。「舟を編む」や「ぼくたちの家族」の石井裕也監督がコロナ禍の今、市井の人々の姿を真正面から描いた。
和田が演じるのは、そんな肝っ玉母ちゃんを間近に見て、その迫力に少し戸惑いながらも尊敬し、ピンサロの従業員(片山友希)に淡い恋心を描く中学生・純平役。「昨夏までカナダに1年半、語学留学していたんです。カナダは、感染者数は日本より少ないと思うんですが、差別がひどく、中国人はマスクしているだけでも病人扱いされているというニュースを見て、両親が心配したんです。去年の7月に帰国後、最初のお仕事でした。もともと自己PRのビデオを送って、そこからオーディション。自己PR動画では今までどういうふうに生きてきたか、今後どうしていきたいかを話したんですが、オーディションで石井監督がその内容をすごく褒めてくれて、その帰り道に合格通知を頂きました」と明かす。
映画は純平の目線から語られており、軸となる役だ。「この役をやる前とやった後では全然違うものになっていると思います。自分のセリフが本当にすごい多くて、できるかなって。普段はあんまり緊張しないタイプなんですけど。R-15(中学生以下入場禁止)ということもあって、内容が大人。純平はすごい理不尽な環境で育った男の子の役で、しかも、自分がいろいろ見てきた尾野さんの息子役ということもあって、プレッシャーがすごかったです。その分、燃えるところもありました」
純平は自身の境遇や性格とは、かけ離れた役だった。「自分だったら、耐えられないだろうなって思うところがほとんどです。いろいろ大変な思いをしてきたんだろうなと、すごい意識しました。負けず嫌いなところは自分と似たものを感じました」。大変だったのは、終盤のシーン。ヒロインが思いを寄せた同級生に裏切られ、激怒し、包丁を持って、襲いかかる。純平はそんな母を必死に止めにかかるのだ。
「神社での撮影でしたが、鳥たちがバサバサと飛ぶぐらい尾野さんの気迫がすごかったんです。本当に殺されるんじゃないかというくらい。僕も立ち向かっていくのに精いっぱいでした。その後、僕が相手にドロップキックするシーンもありました。アクションシーンは初めてだったので、すごく新鮮でした。着地するところでは、痛そうに見せることもすごい大変なんだなと思いました」。