“持っている”女子格闘家、「キラーRENA」はアスリートを超えた

RIZINが2015年12月29日に旗揚げしてから丸4年。その間、何度か全身に衝撃が走った場面に遭遇した。

宿敵に猛攻を浴びせたRENA(右)(C)RIZIN FF
宿敵に猛攻を浴びせたRENA(右)(C)RIZIN FF

RIZIN.20で鮮烈なTKO勝利

 RIZINが2015年12月29日に旗揚げしてから丸4年。その間、何度か全身に衝撃が走った場面に遭遇した。

 果たして女子格闘技のそれは、RENAによって強く印象付けられた「踏みつけ」だった!

 もちろんルール上は許された攻撃である。あっても不思議ではないのだが、実際にやるとなるとまたそれは違った意識が必要となってくるのではないか。ましてや女子となればその数は激減するのも頷ける。当然のことながら、それ相応の練習を積む必要もあるのかもしれないが、それ以上に不可欠なのは「度胸!」。これではないかと考える。

 実際、RENAによるその場面を目撃した際には、「いいものを観たな」と思ったと同時に、思わず「肝っ玉座ってるなー」と心が震えた。理由は簡単。ついに「キラーRENA」が覚醒した気がしたからだ。つまりRENAの意識下に存在する競技者(アスリート)を超えたゾーンに至るスイッチが入ったように思えたからである。

 さて、そんなRENAが初めてMMAルールに挑戦したのが丸4年前の大晦日。なんとMMA初挑戦ながら、まさかの飛びつき逆十字を極めての激勝だった。まさに“持っている”ことをまざまざと見せつけたRENA。こうしてRIZINのスタートとほぼ時を同じくしてRENAのMMA人生はスタートした。以降、年末には必ず大一番が組まれてきたRENAだったが、ちょうど1年前に大きな挫折を味わうこととなる。

 試合前日の計量までに契約した体重まで落とすことができず、僅か300グラムに泣いたのだ。

 それだけではない。減量からくる体調不良で緊急搬送までされてしまったため、思いのほかその話題が大きく取り上げられ、物議をかもすことになってしまった。その結果、RENAはRIZINがスタートして以来、初めて自宅のテレビ画面で大晦日にRIZINを観るという、まさかの経験をすることになる。

「本来なら自分もリングに立っていたはずなので、変な感覚というか、複雑な心境ではありました。でも、地元の大阪から家族や友達が来てくれて一緒に見ていたので助かりました。ひとりでいたらダメージは大きかったと思うので周りに助けられました」

 そして迎えた1年後。2019年の大晦日、RIZIN.20(さいたまスーパーアリーナ)で、RENAはリンジー・ヴァンザントと相対した。RENAにとっては半年前(6月14日)に米国ニューヨークのMSGで開催された、ベラトールのリングで失神負けをした試合のリベンジマッチになる。

 実はこのリベンジマッチ、格闘技でこれを制するのは難しいという説がある。理由は自然と苦手意識が刷り込まれてしまうため、そのトラウマを覆すのは容易ではないとされるからだ。

 そんな説を知ってか知らずか、RENAも「不安で朝5時や6時まで眠れない日もあった」と言い、それだけ「今回はツラくて怖くて不安がいっぱいだった」と明かす。

 実際、試合が始まると、RENAが防戦に回る場面が何度も見られた。とくに1R、2Rは決してRENAが優勢とは言えない場面が連発される。

 これに関してRENAは「私はやられてからスイッチが入るパターンがある」と話し、「3R目に入る前に、(セコンドに)ビンタされて、より気合いが入った」と語っていたが、その後、RENAは隙を突いてリンジーのバックをうかがい、そこから馬乗りの体勢になるとパウンド・鉄槌を連打! この時点で十分「キラーRENA」の片鱗が窺えた。

 というのはそのまま渾身のパウンドを打ち続けるRENAをレフェリーが止めた瞬間、「なぜ止めるの?」と言いたげな一瞬の間があったではないか。つまりその瞬間こそRENAが我に返った場面だった。その瞬間、RENAは相手コーナーからタオル投入により、3R4分42秒、TKOで見事リベンジを達成したのである。

 RIZINの榊原信行CEOは「RENAは覚悟を持って今日のリングに上がったと思います。もし違う結果になっていたら、ひょっとすると彼女の格闘家としてのキャリアにも大きな決断が下されるかもしれない、と思わせるぐらいの鬼気迫る思いを持った試合だった」とコメント。要約するとRENAは「引退」を賭けて闘っていたことになる。

 それでもRENAはリベンジマッチを制した。かといって自分が迷路から抜け出せたかどうかは確証が持てないらしい。なぜなら試合後のRENAは、「いっぱいいっぱいで、映像を確認しながら(判断する)」と口にし、続けて「強さを求めるのかは果てしない。どうやったら最強なのか、自分が満足するのか。それをあきらめた時に終わり。だから満足することはない」と言葉をつないだからだ。

 要は観客を湧かし、かつ追い込まれながらもKOでリベンジを果たす、という芸当をやってのけてもまだ、自分に満足できないなんて…。やはり“持っている”人間の合格点の高さは半端ではない。だからこそ“持っている”というのだろう。

 ところでRENAはリンジーとのリベンジ戦で、いわゆる猪木ーアリ状態になると、RENAは比較的早い段階で寝ている相手を立たせる仕草を見せた。なぜ「踏みつけ」を選択しなかったのか?

「踏みつけ? 行こうと思ったけど、足関(節技を)取られるかと思って」

 右のこめかみ辺りに受けた傷をほんの少しだけ気にする様子でRENAが答える。

 果たして、次に「キラーRENA」が覚醒する日はいつになるのか。その日が待ち遠しくてたまらない――。

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