アカデミー賞助演女優賞のユン・ヨジョン 73歳でつかんだ栄冠と“芸能界引退”波乱の人生

“韓国のおばあちゃん”的存在の女優、ユン・ヨジョン(尹汝貞)が第93回アカデミー賞で助演女優賞を授賞した。韓国人俳優の助演女優賞受賞は初の快挙で、アジア人としては1957年に映画「サヨナラ」で日本人女優のナンシー梅木が受賞して以来、64年ぶり2人目。昨年のアカデミー賞作品賞など4冠を獲得した「パラサイト 半地下の家族」に続き、韓国映画界にとって歴史に残る偉業達成となった。

第93回アカデミー賞で助演女優賞を授賞した女優のユン・ヨジョン。映画の場面カット【写真:(C)2020 A24 DISTRIBUTION, LLC All Rights Reserved.】
第93回アカデミー賞で助演女優賞を授賞した女優のユン・ヨジョン。映画の場面カット【写真:(C)2020 A24 DISTRIBUTION, LLC All Rights Reserved.】

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“韓国のおばあちゃん”的存在の女優、ユン・ヨジョン(尹汝貞)が第93回アカデミー賞で助演女優賞を授賞した。韓国人俳優の助演女優賞受賞は初の快挙で、アジア人としては1957年に映画「サヨナラ」で日本人女優のナンシー梅木が受賞して以来、64年ぶり2人目。昨年のアカデミー賞作品賞など4冠を獲得した「パラサイト 半地下の家族」に続き、韓国映画界にとって歴史に残る偉業達成となった。

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 出演作「ミナリ」は、1980年代の米国南部アーカンソー州を舞台に、農業での成功を夢見て移住してきた韓国人一家の苦闘を描いている。監督は第73回全米監督協会賞でデビット・フィンチャー、クロエ・ジャオと並んで監督賞にノミネートされた韓国系アメリカ人のリー・アイザック・チョン。新海誠監督のアニメ映画「君の名は。」のハリウッド実写版を手がけた監督と言えば通りがいいだろうか。

 1947年生まれ、現在73歳のヨジョンは、劇中で一家と同居するため韓国からやってくる祖母・スンジャを演じた。男もののトランクス姿でプロレスをテレビ観戦する破天荒な姿もさることながら、物言いがストレートで飾り気のないスンジャが孫の心を徐々に開いていく様子が温かく描かれており、逆境の中でも力強く立ち直るラストの印象を際立たせる名演技を見せている。

「パラサイト 半地下の家族」のポン・ジュノ監督も地元メディアに「彼女の55年にわたる演技人生で最もラブリーでユニークで強烈なキャラクターを印象付けた。家事労働をしないおばあちゃんが一般的なおばあちゃん像を壊していて痛快だった」とヨジョンの熱演を絶賛するほどだ。

 授賞式のスピーチでヨジョンは英語で「ブラッド・ピットさん、やっとお目にかかれてうれしいです。タルサ(オクラホマ州東部に位置する都市)で撮影していたとき、どこにいらしたんですか?」と皮肉たっぷりにスピーチし、会場は笑いに包まれた。「ミナリ」にはブラッド率いる映画製作会社「PLAN Bエンターテインメント」が関わっており、ブラッドもプロデューサーとして名を連ねている。ヨジョンは「やっとお会いできてとても光栄です」と昨年助演男優賞を授賞してこの日はプレゼンターを務めたブラッドに笑顔を送った。

 ウィットに富んだスピーチとともに視聴者はヨジョンの英語力に驚いたはず。ヨジョンは、デビュー当時から演技力の高さで注目され、71年には韓国時代劇には欠かせない朝鮮時代3大悪女の1人である張禧嬪(チャン・ヒビン)を熱演して一躍スターダムにのし上がった。あまりに完成度が高かったためヨジョンの“悪女ぶり”に視聴者が憤り、街を歩いていて石を投げつけられたこともあったという。厳格で保守的な姑役から妖艶な色気のある役まで幅広い演技力で観客を魅了し続けた。しかし、人気最盛期の72年に歌手の趙英男と結婚して芸能界を引退。その後、渡米し2人の息子をもうけたが、85年に離婚し芸能界復帰した。この十数年に及ぶ米国生活で英語を身につけたのだ。

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