ピアノが楽しくなる“スイッチ”とは? 大塚愛のひと言で誕生した西村由紀江の新シリーズ

デビュー35周年を迎えたピアニストで作曲家の西村由紀江が21日、通算41枚目となるアルバム「PIANO SWITCH 2~PIANO LOVE COLLECTION~」をリリースした。オリジナルアルバムとしては8年ぶりとなる今作は、カラフルなクッキーの詰め合わせのような、どこから食べても「ピアニスト西村由紀江」の面白さや優しさといったフレーバーが気軽に味わえる12曲が用意された。「ピアノ愛が止まらない」と語る彼女とピアノのちょっと良い関係について聞いた。

西村由紀江が41作目のアルバム「PIANO SWITCH 2~PIANO LOVE COLLECTION~」をリリース【写真:本多元】
西村由紀江が41作目のアルバム「PIANO SWITCH 2~PIANO LOVE COLLECTION~」をリリース【写真:本多元】

西村由紀江がピアニストとして35年目でたどり着いた先

 デビュー35周年を迎えたピアニストで作曲家の西村由紀江が21日、通算41枚目となるアルバム「PIANO SWITCH 2~PIANO LOVE COLLECTION~」をリリースした。オリジナルアルバムとしては8年ぶりとなる今作は、カラフルなクッキーの詰め合わせのような、どこから食べても「ピアニスト西村由紀江」の面白さや優しさといったフレーバーが気軽に味わえる12曲が用意された。「ピアノ愛が止まらない」と語る彼女とピアノのちょっと良い関係について聞いた。(取材・文=福嶋剛)

 2021年、デビュー35周年を迎えました。振り返ってみると私はつくづくピアノに救われた人生だったなって実感しています。子どもの頃はとても引っ込み思案で、小学校では友だちに話しかけることができず、いつも目立たないように教室の隅っこに座っていました。そんな私を救ってくれたのがピアノで、うれしいことや悲しいことを言葉の代わりにメロディーで表現することを覚えたのがこの頃でした。

 それからプロとしてデビューして、毎日必死に自分にしか表現できない音楽を追い求めてきました。ところが、人見知りと不器用な性格の私は社会のさまざまな問題にぶつかり、一時はピアノを弾くことさえつらいと思った時期を経験しました。それでもここまでやってこられたのは、いつもピアノが見守っていてくれたからなんです。

 転機が訪れたのは10年前。東日本大震災で被災した方々の心に私を救ってくれたピアノで癒しを届けたくて、震災で失ってしまったピアノを被災地のご家庭に届ける活動「Smile Piano 500」をはじめました。この活動をきっかけにピアノの楽しさをもっと多くの人に伝えたいと思うようになり、2019年に「PIANO SWITCH(ピアノスイッチ)」というアルバムを作りました。アルバムタイトルは大塚愛さんの言葉がきっかけで、子どもの頃、レッスンが厳しくて止めたいと思っていたときに私の作品を弾いて、ピアノの楽しさを知る「スイッチ」が入ったそうです。それを聞いてとてもうれしくて、もっと誰かの「スイッチ」を押したいと思うようになりました。

 そして今回続編となる「PIANO SWITCH 2」が完成しました。ピアノに少しでも興味のある人やしばらくピアノから離れてしまった人に「また弾いてみたいな」「ピアノって楽しい!」と思ってもらえるように私自身もピアノを習い始めた頃の“原点”に戻って伸び伸びと楽しみながら曲を作りました。

 震災から立ち上がり、そこで生きる人々や新しい風景を描いた曲「あたらしい風」(テレビ岩手「ニュースプラス1いわて」テーマ曲)は、東京にはない空の高さをピアノで表現してみました。また「スマイルピアノ」という楽曲は、まさにタイトルの通りこれまでの活動を振り返った曲です。震災直後に訪れた被災地の何もないというところからメロディーがはじまります。そして同じ場所に何度も足を運ぶたび、緑が増えて建物が立ち、人々の笑顔が少しずつ戻ってくる……メロディーを繰り返しながら時を刻む様子を表現しました。

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