プロレスを愛する台湾の新世代作家・林育徳 三沢光晴さんへの“特別な感情”

プロレスがマイナーな地・台湾に、プロレスを愛する新世代作家がいる。“中華圏初”のプロレス小説「リングサイド」(小学館)の著者、林育徳(リン・ユゥダー)氏だ。同作は、三沢光晴さんの死と向き合った物語「ばあちゃんのエメラルド」など、日本の有名なプロレスラーも登場する全10編の連作短編集。台湾東部にある花蓮(かれん)がモデルとされる地方都市を舞台に、プロレスに魅せられた老若男女の人生ドラマが描かれている。彼はなぜ、台湾ではマイナーな娯楽であるプロレスに熱狂し、本作品を創作したのか。台湾のプロレス事情、プロレスへの愛をたっぷり語ってもらった。

“中華圏初”のプロレス小説「リングサイド」著者の林育德(リン・ユゥダー)氏
“中華圏初”のプロレス小説「リングサイド」著者の林育德(リン・ユゥダー)氏

台湾でのプロレス人気「まだまだマイナーな娯楽」

 プロレスがマイナーな地・台湾に、プロレスを愛する新世代作家がいる。“中華圏初”のプロレス小説「リングサイド」(小学館)の著者、林育徳(リン・ユゥダー)氏だ。同作は、三沢光晴さんの死と向き合った物語「ばあちゃんのエメラルド」など、日本の有名なプロレスラーも登場する全10編の連作短編集。台湾東部にある花蓮(かれん)がモデルとされる地方都市を舞台に、プロレスに魅せられた老若男女の人生ドラマが描かれている。彼はなぜ、台湾ではマイナーな娯楽であるプロレスに熱狂し、本作品を創作したのか。台湾のプロレス事情、プロレスへの愛をたっぷり語ってもらった。(取材・構成=イシイヒデキ)

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――プロレスとの出会い、プロレスが好きになったきっかけは。

「幼い頃から、テレビで放送されていたプロレス中継を大人たちと見ていました。プロレスを好きだと自覚をしたのは、大学生になって、1人暮らしを始めてからです。テレビを見る時間が長くなり、ずっとプロレスを見ていて、そこから本格的なファンになったと思っています」

――台湾のテレビでは、どのようにプロレス中継が放送されているのでしょうか。

「日本のプロレス、時代劇、釣り番組などを24時間放映するケーブルテレビ局(Zチャンネル)があり、そのチャンネルでは、主にメジャーな団体、新日本プロレス、全日本プロレス、プロレスリング・ノアが放送されています」

――テレビ以外では、どのように情報を得ていましたか。

「私たちの世代はインターネットでさまざまな情報を得ていましたね。愛好者がSNSやインターネット掲示板で日本のプロレス界の情報を積極的にシェアしてくれて、そういったところでプロレスについて話していました」

――台湾でのプロレス人気というのは。

「まだまだマイナーな娯楽ではありますが、私個人としては、徐々に人気が高まっていると感じています。2016年に台湾で本書を刊行した際、いくつかインタビュー取材を受けたのですが、当時はプロレスという競技を説明することが多かったです。それだけプロレスが、どんなスポーツ、エンターテインメントなのか知られていませんでした。あれから5年が経ち、インターネット上で愛好家の交流も増えて、少しずつプロレスが広まっています」

――台湾で有名なプロレスラーを教えてください。

「日本人選手では、アントニオ猪木さん。それから、全日本プロレスの四天王と呼ばれた三沢光晴さん、川田利明さん、小橋建太さん、田上明さん。アメリカの選手ですと、WWEのスーパースターで、俳優としても有名なザ・ロック(ドウェイン・ジョンソン)などですね」

――林先生は三沢さんの大ファンということですが、三沢さんのどんなところに惹かれたのでしょうか。

「リングの中と外でのギャップがあることに惹かれました。リングを下りた彼は、中年のおじさんのような雰囲気ですが、リングに上がるとタフなファイトで、数々の名勝負を繰り広げました。そのギャップで、たくさんのプロレスファンを魅了してきたのではないでしょうか。三沢さんが亡くなったことを知ったときは衝撃を受けました。体が衰えて亡くなったのではなく、リングで戦い亡くなった。プロレスを好きになってから、たくさんの試合を見てきましたが、三沢光晴さんは私の中で特別な存在です」

――本書には、三沢さんが大好きな老女と主人公である孫の物語「ばあちゃんのエメラルド」も収録されています。ここまでインタビューをしていて、主人公と林先生が重なるように感じました。

「三沢さんの魅力、彼の試合を見ているときの気持ち、そういった描写は私が経験したこと、感じたことです。私たちの世代にはインターネットがありますが、年配の方々はそういったものとは無縁で、リアルタイムの情報が入ってこない。世代によってプロレスに対する気持ち、イメージが違うことがおもしろいと感じ、この作品を書きました」

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