コロナで困窮…外国人女性からのDV相談4倍に 日本人夫が脅迫「オレがビザを与えている」

外国籍女性が受けているDV被害について語る石井さわ子理事【写真:石井さわ子さん提供】
外国籍女性が受けているDV被害について語る石井さわ子理事【写真:石井さわ子さん提供】

DVに関する女性からの相談がコロナ前の4倍に、日本人夫「オレがビザを与えている」

――男女比の変化はありますか?

「コロナ前は6:4で女性からの相談が多かったのですが、コロナ後は男性の雇用相談が増えたこともあり5:5になりました。ただ、DV(家庭内暴力)に関する女性からの相談が4倍に増えています。コロナによるリモートや失職で男性が家庭内にいることが増えたこと、また経済状況悪化によるストレスの発散が女性に向かってしまうことなどが原因です。加害者の国籍はさまざまですが、日本人の夫が外国人の妻に暴力をふるうケースも多く見られます。夫から体を壁に打ち付けられた人、あばら骨を折られ、足を引きずっていた外国籍女性もいました」

――背景には何があるのでしょう?

「在留資格が関係しています。外国籍の女性の場合、日本人の夫と結婚すると『日本人の配偶者等』という在留資格(ビザ)が取得できて就労活動の制限がなくなるため、自由に職場を変えたりアルバイトができます。しかし、離婚するとこの在留資格を失い、帰国を余儀なくされることがあります。この仕組みを知っている日本人夫から『オレがビザを与えてやっているんだぞ』と脅迫を受けたフィリピン国籍の女性もいます。夫婦間のパワーバランスの差がこうした深刻な事態を生んでいます。夫に見張られていたり、外出を制限されていて相談にすら来ることができない状況に陥っている女性がまだたくさんいると想定されます。サポートをどう届けるか、情報をどう届けるか、が喫緊の課題だと感じています」

多くのフィリピン出身者が羽田空港関連の職種に従事していた

――国籍による相談内容に特徴はありますか?

「レガートおおたが運営している相談窓口に来る方々のケースですが、中国の方の場合、中華料理店でコックとして働いている人が多くいます。彼らの在留資格は『技能』です。しかし、コロナによる来店客の激減と営業時間短縮要請で雇用主から休業を命じられたケースが相次いでいるため、厚労省の『新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金』の申請方法に関する相談が増えています。ただ、彼らは公的機関からの貸付の利用は積極的に行わない傾向があるため、一時的な貸付金である社会福祉協議会の緊急小口資金や総合支援資金の借り入れの希望は少ない印象ですね」

「フィリピンの方は『永住者』や『定住者』の在留資格が多いです。非正規雇用で働く労働者の多くが、ホテルのベッドメーキングやお弁当工場、空港関連の仕事をしています。休業支援金・給付金の申請より、緊急小口資金や総合支援資金の申請、住居確保給付金の申請希望に関する相談が多い傾向が見られます」

「ネパールの方は『技能』の在留資格を得て、インド・ネパール料理店で調理師として働いているケースが多いです。しかし、コロナで雇用主から休業を命じられたため、休業支援金・給付金の申請や緊急小口資金の貸し付け申請を希望する相談が増えています。ネパール国籍の女性は同国人と結婚しているケースが多数で、その在留資格は『家族滞在』です。ネパールは家父長制が根強く残っていて、娘に教育は必要ないという父親もいます。そもそも女性からの生活相談は少なく、男性の40%程度。DVだけでなく家庭内の相談もあまりしない傾向があります。相談は子どもや学校のこと、保険・年金に関するものが多いです」

次のページへ (3/4) 中華料理店の中国人調理師がラーメン店に転職できない理由
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