聖火ランナーで41年前のリベンジを果たした谷津嘉章 次は義足レスラーとしてリングに立つ

聖火のバトンタッチを終え走り出す谷津嘉章【写真:柴田惣一】
聖火のバトンタッチを終え走り出す谷津嘉章【写真:柴田惣一】

200メートルを見事に完走「自分のオリンピックはこれで完結した」

 そんな中、聖火リレーは3月25日に福島からスタートした。28日、栃木県の初日。谷津は特注のランナー用バネ板義足をつけ、聖火を持って「日本最古の学校」足利学校・入徳門前で、聖火をバトンタッチされた。

 いつになく緊張した表情だったが、自分の持つトーチに聖火が灯ったときには、マスク越しにも満面の笑顔が見て取れた。

 春まだ浅い、空気がりんとした朝。駆けつけた妹さんら「谷津応援団」と一緒に見守った。一歩、一歩、石畳の道を踏みしめながら、着実に進んだ。

 今までの人生が走馬灯のように甦ったのではないか。200メートルを見事に完走。谷津にとっては41年の月日を走ったのだろう。「モスクワから41年。悲しい、悔しい思いをずっと引きずって来たけど、やっと解放された気分。自分のオリンピックはこれで完結した」と、達成感にあふれスッキリした笑顔を浮かべた。

 聖火ランナーは谷津にとって、区切りをつけるための、そして前に進むためのリベンジだった。足は失ってしまったが、得たものも大きいハズ。

 次の目標も見えている。昨年6月「義足レスラー」デビュー戦も決まり、ファイト用の義足も完成が目の前だったが、コロナ禍のために大会が中止されてしまった。今年の6月、同じ会場で1年越しの試合出場プランが進んでいる。

 聖火ランナーという貴重な経験を積んだ谷津。波乱万丈の人生に、またひとつ勲章が加わったが、人生はまだまだ続く。義足レスラーの大暴れが待ちきれない。

次のページへ (3/3) 【写真】聖火リレーを終えほっととする谷津嘉章
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