「バキ道」連載中の板垣恵介氏、刺激を受けた格闘技の名シーン・名せりふを大いに語る

「週刊少年チャンピオン」で「バキ道」を連載中の漫画家・板垣恵介氏(63)が、今年で刃牙シリーズの連載開始から30周年を迎える。「バキ道」では現在、相撲VS刃牙軍団による全面対抗戦が行われている。これまで「最強」を求めてプロレスラーや格闘家、中国拳法家、侠客、毒の使い手、死刑囚…、はたまた古代の原人から宮本武蔵まで復活させて刃牙と闘わせてきた。板垣氏は、なぜ相撲に行き着いたのか。インタビュー後編では、漫画の秘話や今後の展開、バーリ・トゥードのルーツとなるブラジルの格闘技からUFCの黎明期、そしてブルース・リーまで、幅広く語ってもらった。(取材・文=“Show”大谷泰顕)

石炭をダイヤモンドに変えた宿禰【画像:(C)板垣恵介(秋田書店) 1992】
石炭をダイヤモンドに変えた宿禰【画像:(C)板垣恵介(秋田書店) 1992】

石炭をダイヤモンドに!?

「週刊少年チャンピオン」で「バキ道」を連載中の漫画家・板垣恵介氏(63)が、今年で刃牙シリーズの連載開始から30周年を迎える。「バキ道」では現在、相撲VS刃牙軍団による全面対抗戦が行われている。これまで「最強」を求めてプロレスラーや格闘家、中国拳法家、侠客、毒の使い手、死刑囚…、はたまた古代の原人から宮本武蔵まで復活させて刃牙と闘わせてきた。板垣氏は、なぜ相撲に行き着いたのか。インタビュー後編では、漫画の秘話や今後の展開、バーリ・トゥードのルーツとなるブラジルの格闘技からUFCの黎明期、そしてブルース・リーまで、幅広く語ってもらった。(取材・文=“Show”大谷泰顕)

――お相撲の方々からすれば、リンゴを潰すなんて当たり前の話なんでしょうね?

「リンゴなんか全然だよ」

――ちなみに「刃牙道」に登場する、“日本最古の最強力士の系譜を継ぐ”野見宿禰(のみの・すくね)が石炭を素手でダイヤモンドにする、という話が出てくるんですけど、あの場面は、そういう文献があったりしたってことなんですか?

「(あっさりと)ないよ」

――あ、ない(笑)。とはいえ伝説のお相撲さんだったら、それに近いことをしそうなイメージはありますね?

「だって、あれ100万気圧だったかな?」

――100万気圧!?

「石炭もダイヤモンドも化学記号は『C(carbon)』。炭素だから。成分は全く同じなのよ。ただし密度が違う」

――密度の違いで石炭とダイヤに分かれるんですね。

「すごいよね。密度を高めると透明度を帯びるんだな」

――素朴な疑問として、先生が作品中で相撲を描きたいっていう思いは、前々から思われていたんですか?

「10年以上前から思ってた」

――「ピクル」という古代の原人が登場し、宮本武蔵も復活させて、次に今度は何が出てくるかと思ったら、大相撲がテーマになりました。

「いや、大相撲じゃなく、相撲だね。大相撲をそのまま決着までやっちゃうのはよろしいとは思わないので。協会さんも迷惑するだろうし。ただ、たたえる気持ちがあるから、大相撲って本当は強いんじゃないの? っていう疑いがずーっとあるから、彼らの全力ってどうなんだろうと。(立ち合いで)あれだけ頭同士で当たってさ。彼らが『打たれる覚悟』をした時に、パンチなんかで倒れるの? ってね」

――そこは非常に興味があります。

「時々、張り手でいいのが入れば、一発で倒れる場面は観ているけどね。それはアゴが上がってる時だけど、こうやって(構えて)突進してくる関取に何ができるんだろう? カーフキックの1つくらいじゃ無理だろう」

――以前、格闘家の堀口恭司選手に、「もし白鵬戦があったらどうしますか?」と聞いたら、「とにかく(白鵬が)追いかけてくる前提で逃げ回って、疲れたところに打撃を入れます」みたいな話をしていました。

「だからリングなどの競技場だとね、そういうことも可能だと思う。でも完全に息の根を止めるのは大変だと思うけど、路上だと分からないよ。頭を両手でつかんで、ガン! って後頭部を地面にぶつけるだけで相当だと思うよ。その辺の原っぱでもね」

――ホントそうですね。

「ブラジルだと。バーリ・トゥードでやっていたもの」

次のページへ (2/4) 最低限のルールを守らない“狂気”の男
1 2 3 4
あなたの“気になる”を教えてください