「日本社会で人質救出は無理」 シリア拘束の安田純平氏、涙ながらに私見語る
2015年から18年まで、内戦中のシリアで約3年余りにわたり武装勢力に拘束されたフリージャーナリストの安田純平氏が7日、渋谷のユーロライブで行われた映画「ある人質 生還までの398日」公開記念トークイベントに登壇。生々しい自らの体験談を涙ながらに語った。
ノンフィクション映画「ある人質 生還までの398日」のトークイベントに登壇
2015年から18年まで、内戦中のシリアで約3年余りにわたり武装勢力に拘束されたフリージャーナリストの安田純平氏が7日、渋谷のユーロライブで行われた映画「ある人質 生還までの398日」公開記念トークイベントに登壇。生々しい自らの体験談を涙ながらに語った。
「ある人質 生還までの398日」は13年から14年にかけ、ISIL(イスラム国)に拘束されたデンマーク人の写真家ダニエル・リューの救出劇を描いたノンフィクション作品。身代金確保のために奔走する家族の姿や、同じく人質となったアメリカ人ジャーナリスト、ジェームズ・フォーリーとの友情が描かれている。
そのジェームズと12年、シリアの内戦取材中に同じ部屋で過ごしたという安田氏は「彼が映画の中で話しているのを見るだけで、本当のジェームズを見ているようで……。本当に紳士的な男だった。ジェームズは自分に対する交渉が行われていないことを知りながら、周りを励ましていた。それを分かって見ると、もう……」と目を腫らし声を詰まらせながら感情的に語った。
自身を拘束したのはISIL以外の武装勢力の一つだとし、「イスラム国は見せしめやアピールのために映像を流すのであって、映像を流した時点で交渉は終わってる。助かった人はみんな映像は公開されてない。私の場合はなぜ流されたのか分からないが、たぶん商売。日本政府に完全に無視されていたので、メディアに向けて映像を売ったんでしょう」と話した。
さらに、「彼らから『日本政府に連絡しているが、まったく無視されている。どこにかければいいのか』とも聞かれました。仲介希望のブローカーからは私の家族にも連絡がいったらしいが、家族が『いくら欲しいんだ?』と聞いたら見積もり票が送られてきたと。生存確認の質問も解放されたときにされたのが最初。生きてるかどうかの確認をしてないのに、交渉なんかしてるはずがない」と、改めて日本政府による交渉の可能性を否定している。
聞き手で映画評論家の森直人氏から、自己責任論について問われると「自己責任とは本人が行動した結果として、本人の身に起こること。身代金を払って助けるかどうかは政府や社会が決めることで、本人で選択しようのない話。ダニエルはお金を集めて救出できた。なぜ日本人の我々は後藤さんや湯川さんを救出できなかったのか。日本社会でこれができるかといったら、はっきり言って無理。誰かが絶対詐欺だと言い出すに決まってる」とISILに拘束され殺害されたジャーナリストの後藤健二さん、湯川遥菜さんを偲びつつ、私見を述べていた。