「がんよりもある意味恐ろしい」800人以上を診てきた医師が語るコロナ“後遺症”

コロナの後遺症について語る平畑光一院長【写真:本人提供】
コロナの後遺症について語る平畑光一院長【写真:本人提供】

気持ちの落ち込みも深刻、根本には体のバランスの崩れも

 気持ちの落ち込みも深刻です。感染前から気持ちの落ち込みがあったのか、症状による落ち込みなのか、症状があることで引き起こされた落ち込みなのか、判別することは難しいですし、分けることに意味はないと思っていますが、皆さん少しずつ症状があって、その合わせ技で気持ちの落ち込みにつながっているんだと思います。

 後遺症として症状が現れる根本には、体のバランスが崩れていることがあります。ですから、それを整えるために当クリニックでは保険診療で漢方を処方しています。加えて、BCAA、つまりスポーツをされている方がよく飲んでいらっしゃるアミノ酸ですね。それを飲むと症状が和らぐ方が多いので処方しています。また、血液検査の結果を見ると亜鉛が足りていない方が多く、亜鉛を摂取することで抜け毛や味覚嗅覚異常に効くことがあるので、亜鉛のサプリを摂ってもらっています。

 あとは生活療法です。症状に合わせて、こういうことはやらないでください、というアドバイスを行っており、多くの方の症状は改善しています。ただ、症状が消せるかというと難しいことが多いです。特に症状の重い方に関しては、今のところ症状はなくなっていません。もしかしたら、一生治らない可能性もあるかもしれませんが、現時点では分からないというのが正直なところです。

 コロナの怖さは、人生を破壊してしまうことです。正直、当クリニックの後遺症外来を受診される患者さんのコロナ感染時の症状はそれほど重症ではありません。例えば無症状だった人や、家族が感染したために自身もPCR検査を受けたら陽性でしたという方がほとんどです。ICU(集中治療室)に入っていたという方はいませんし、せいぜい肺炎で入院して治療を受けていたというぐらいです。もちろん、そのときはすごく苦しかったに違いないのですが、他の病気とそれほど大差はないという思いもあります。ですが、その後のコロナ後遺症で働けなくなってしまった方もいますし、10代の寝たきりの患者さんがすごく多いのが実情です。

 当クリニックの患者さんに限って言えば、後遺症のために解雇された人は10人以上、休職した人も100人以上、在宅や時短勤務になった人も約60%います。陸上をやっていて元気に走り回っていたような子が、コロナに感染して、後遺症のために今は寝たきりになってしまっている。もしかしたら一生治らないかもしれない。そう考えると、非常に恐ろしいですよね。あまり、あおりすぎるのも良くないですし、将来的に新薬が出てくれば簡単に治せる可能性もありますが、例えば後遺症で5年間寝たきりだったとして、新薬が出て治ったとしても、寝たきりだった5年間は取り戻せません。そういった意味でも、本当に恐ろしいと感じています。

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