入社1年目、航空会社社員の本音「働けて幸せ」…客からの「あなた感染してないよね?」に涙
新型コロナウイルスの感染拡大により、2日に10都府県の緊急事態宣言の延長が決定し、さまざまな業界に大きなダメージを与えている。「GoToトラベル」により客足が伸びてきていた航空業界もその一つだ。欠航便が相次ぎ、減収減益。会社は雇用を守るため、社員を一定期間、他企業へ出向させている。現場の社員に実情を聞いた。
出向先は希望できないけれど「いい経験になるかな」
新型コロナウイルスの感染拡大により、2日に10都府県の緊急事態宣言の延長が決定し、さまざまな業界に大きなダメージを与えている。「GoToトラベル」により客足が伸びてきていた航空業界もその一つだ。欠航便が相次ぎ、減収減益。会社は雇用を守るため、社員を一定期間、他企業へ出向させている。現場の社員に実情を聞いた。
羽田空港の国際線ターミナルで働く、社歴10年の多田かな子さん(仮名)。1月まで空港勤務を続けていたが、2月に本社への出向が決まった。「私は本社への出向だったから顔見知りの人もいるし、ラッキーでした。コロナで仕事に対するモチベーションが下がっていたし、私はこの仕事以外のことをやったことがなかったから、いい経験にもなるかなと思いました」と、前向きだ。
出向先は他企業や専門学校のマナー講師、近隣の高校の英語教師など、自身が持つ資格を活かせる職場へ派遣されることもあるという。出向はいつ、どんな職種になるかも分からず、また、いつ“本職”に戻れるのかも分からない。多田さんの同僚で出向した人も、まだ出向先からは戻ってきていないそうだ。
多田さんの同期入社の客室乗務員は「乗務してないから手当てがつかなくてかなり給料が減った」と嘆いていたという。「その同期は、出向の話を会社にされたそうですが、断固拒否したようです。『そんなことがしたくてこの仕事してるんじゃないのに!』と言っていました。それは私もそうなんですけどね……。こんな状況にもならない限り、他の仕事を経験することなんてできないし、やってみたら楽しいかもしれないのに。もったいないですよね」と話した。
チェックインカウンターも“時短営業”状態
多田さんに話を聞いたこの日の羽田空港第3ターミナル(国際線ターミナル)は、オープンしているカウンターも少なく、人出はコロナ禍以前の1割にも満たないほど。とても静かだった。閉まっているカウンターについて、多田さんに聞いてみると、「曜日や時間帯によって開いていることはありますが、どの航空会社も空港施設に支払う使用料などを抑えるために最短時間で業務を回している状況」だという。
運航便が限られている現状の中、「もっと(運航便を)増やせないのか」という旅客は少なくないそうで、「仕事や生活があるのは理解できるけれど、この状況でそんなこと言われてもどうすることもできないですよね……」と多田さんはうつむいた。
厳しい状況に置かれているのは、旅客も空港職員も同じ。それでも、マスク越しでも伝わる優しい表情で接客をする多田さんの姿を見て、たとえフィールドが変わったとしても活躍できるだろうと思った。