綾野剛が肉を焼き、舘ひろしは背中で語った…藤井監督が明かす「ヤクザと家族」撮影秘話

綾野剛主演の映画「ヤクザと家族 The Family」が1月29日公開される。本作は日本アカデミー賞で作品賞、主演賞など主要3部門を含む6冠に輝いた「新聞記者」の藤井道人監督と製作会社スターサンズが再びタッグを組んだもの。藤井監督は「『新聞記者』は自分の中では満足できなかったが、『ヤクザと家族―』では一つの到達点を見せることができた」と自信を見せる。そのワケとは?

インタビューに応じた藤井直人監督【写真:ENCOUNT編集部】
インタビューに応じた藤井直人監督【写真:ENCOUNT編集部】

映画「ヤクザと家族 The Family」公開「一つの証、到達点に達した1本」

 綾野剛主演の映画「ヤクザと家族 The Family」が1月29日公開される。本作は日本アカデミー賞で作品賞、主演賞など主要3部門を含む6冠に輝いた「新聞記者」の藤井道人監督と製作会社スターサンズが再びタッグを組んだもの。藤井監督は「『新聞記者』は自分の中では満足できなかったが、『ヤクザと家族―』では一つの到達点を見せることができた」と自信を見せる。そのワケとは?(取材・文=平辻哲也)

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 東京新聞記者の望月衣塑子氏のノンフィクションを原案に、記者と官邸の攻防を描いた「新聞記者」は日本アカデミー賞で6冠。これは、一つの“事件”と言ってもよかった。 同賞は大手映画会社の社員が多く会員となっており、大手作品の方が有利。インディーズ映画製作会社がこれだけの数の賞を取るのは異例だったからだ。

 しかし、藤井監督はこの高評価に喜びつつも、どこかで「やりきれなかった」との思いを抱えていた。「『新聞記者』も精いっぱいやったのですが、新聞社がどんなところかも知らないところから急に勉強したので、自分の中でも描ききれなかった点、悔しい点がいっぱいあったんです。賞を取ったからといって、生活自体は大して変わっていませんよ。同級生と立ち上げた制作会社の平社員で、会社の経営権も株も持っていないから」と語る。

 一方、新作「ヤクザと家族―」には自信を持っている。「素晴らしいキャストと、大学時代からやってきたスタッフチームが合わさった一つの証、到達点に達した1本だと思っています」。一人のチンピラ青年(綾野)がヤクザ組長(舘ひろし)に心酔し、父子の絆を結びつつも、暴対法などによって変わっていく時代の中でも、変わらない男の生き方、家族の情を映像美できめ細やかに描いていく。確かに、藤井監督のベストムービーといった力作に仕上がっている。

「『新聞記者』の撮影が終わってすぐの2019年1月2日に、プロデューサーの河村光庸さんに呼ばれて、次の企画を話し合いました。以前、予算80万円くらいの自主映画でヤクザものを撮ったことがあったんですが、消化不良を感じていたんです。だから、オリジナルでリベンジしたい、と。河村さんもヤクザを描くことに関心を持っていたので、『ヤクザの家族ものをやろう』となったんです」。

 綾野は企画書段階から引き受けてくれたという。しかし、脚本家による本作りは難航し、クランクイン2か月前に自ら執筆することになった。「『新聞記者』の時も、急きょ自分が書くことになったので、相変わらずですね(笑)。ただ、自分でも何回か取材してきて、たまっていたメモもあったので、瞬発的に書けました。剛さんを当て書きできただけでなく、オファーしてない舘さん、尾野真千子さんも当て書き。狙っていたキャストのみなさんに出ていただけることになったんです」。

次のページへ (2/3) チンピラ役の綾野剛の魅力を語る「一つ一つの芝居にこだわり、強度を上げていく人」
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