【プロレスこの一年 ♯30】人気絶頂のタイガーマスク、馬場とハンセンの一騎打ち、長州力の噛ませ犬発言…82年のプロレス

今から39年前の1982年は、初代タイガーマスクのブームが頂点に達した年でもある。また、アントニオ猪木とラッシャー木村率いる国際軍団の抗争が激化し、メキシコから凱旋帰国の長州力が藤波辰爾に牙をむく“噛ませ犬発言”で日本人対決が激化。タイガーには“虎ハンター”小林邦昭が襲いかかった。新日本プロレスが快進撃を続けた82年のプロレス界を振り返ってみよう。

タイガーマスクがWWFジュニア王座を防衛(82年8月5日蔵前国技館)【写真:平工 幸雄】
タイガーマスクがWWFジュニア王座を防衛(82年8月5日蔵前国技館)【写真:平工 幸雄】

タイガーマスク人気で快進撃を続ける新日本

 今から39年前の1982年は、初代タイガーマスクのブームが頂点に達した年でもある。また、アントニオ猪木とラッシャー木村率いる国際軍団の抗争が激化し、メキシコから凱旋帰国の長州力が藤波辰爾に牙をむく“噛ませ犬発言”で日本人対決が激化。タイガーには“虎ハンター”小林邦昭が襲いかかった。新日本プロレスが快進撃を続けた82年のプロレス界を振り返ってみよう。

 82年のプロレスは元日に幕を開けた。新日本が1月1日、後楽園ホールにてテレビ生中継の特別試合を開催したのだ。メインでは猪木が78年11月の欧州遠征で敗れたローランド・ボックと日本で初めての一騎打ちを敢行。ラウンド制の試合で反則勝ちを収めた。

 前年にデビューし日本中に大ブームを巻き起こしたタイガーは、ダイナマイト・キッドを破り藤波辰巳が返上したWWFジュニアヘビー級王座を奪取。前年12月のエル・カネック戦で左足首を負傷していたが、これがタイガーとして初めてのチャンピオンベルトになった。ヘビー級転向の藤波には「飛龍十番勝負」が用意されこの日がスタート。ボブ・バックランドに挑んだ。また、長州力とアニマル浜口が初のシングルマッチを行ったのも、82年元日興行である。

 ベルトを巻いたタイガーは1・28東京体育館でキッドと対戦、返り討ちにしてWWFジュニア王座を防衛した。猪木はアブドーラ・ザ・ブッチャーと全日本から移籍後初の一騎打ち。しかしバッドニュース・アレンの介入により、不本意な反則勝ちとなった。

 3月2日&3日、IWGP実行委員会が京王プラザホテルで行われれ、海外のプロモーターが集結。猪木世界統一の野望に向けて、具体的な一歩を記すことになった。その新日本は3・10大田区で10周年記念興行を開催。4・1蔵前では「第5回MSGシリーズ」決勝戦が行われた。しかし、決勝に出場するはずの猪木がヒザの負傷で棄権。代わりに駒を進めたのがキラー・カーンだった。が、優勝はカーンを破ったアンドレ・ザ・ジャイアント。アンドレには初のMSG制覇だ。

 新日本は4月8日から初の中東ドバイ遠征を実施。日本人選手は猪木、坂口征二、藤波、長州、タイガーらが参加し、外国人選手も同行。タイガーはこの3連戦でブレット・ハート、キッドを連破した。

 4月21日の大阪には、タイガーを狙うブラック・タイガーが初登場。いきなりWWFジュニア王座に挑戦し、両者リングアウトの引き分けに終わった。タイガーには初となるドロー防衛、新しいライバルの誕生である。

 辛くもベルトを守ったタイガーだが右ヒザを負傷し、5月2日に王座返上。空位となったWWFジュニア王座は、5・6福岡にてブラックとグラン浜田の間で王座決定戦が行われ、ブラックが新王者になった。

 タイガーは5月20日に復帰しシリーズに合流、タイトルマッチ2連戦を敢行。5・25静岡でレス・ソントンのNWA世界ジュニアヘビー級王座を奪取すると、翌日の大阪ではラウンディングボディープレスを公開し、ブラックにフォール勝ち。タイガーはWWFジュニア王座の奪回に成功するとともに、ジュニア2冠王の栄冠に輝いた。

 ヒザの負傷により4月27日から欠場していた猪木が6・18蔵前で復帰。初来日のスコット・マギーを短時間で破り、カムバック戦を飾った。タイガーはウルトラマンとのヒーロー対決を制してWWFジュニア王座を防衛。藤波は「飛龍十番勝負」第4戦でカネックと両者リングアウト、アンドレとハルク・ホーガンの一騎打ちも両者リングアウトの痛み分けに終わった。

 復帰した猪木だが、今度は糖尿病により夏のシリーズ全休が決定。猪木不在の7・23金沢でメインに上がったのは、ジュニア2冠王のタイガーだった。タイガーはキッドとノンタイトルで対戦し、フェンスアウトの反則負け。タイガーはデビュー以来、初めての黒星を喫した。結果的にはこれが、タイガーマスク唯一の敗戦となる。タイガーとキッドは8・5蔵前で改めて対峙。タイガーが勝利し、WWFジュニア王座防衛に成功した。また、藤波はバックランドのWWFヘビー級王座に挑戦するも、ベルト奪取はならなかった。欠場中の猪木はこの日、放送席から試合を見守った。

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