タクシー運転手は見た 緊急事態宣言下の大阪 「飲食店の次はビルオーナーの破綻」

生活はどうなのか? 「何とかしのいでいるのが現状です」

 ストレートに聞いてみた。生活はどうなのか? 運転手は「社会福祉協議会からの複数回にわたる借入金140万円と住宅ローンの元金返済猶予交渉によって、何とかしのいでいるのが現状です。会社からの借入金増額や返済猶予を社と交渉しているドライバーは数知れないですが、今日の点呼場の雰囲気は諦めムードが充満していた」と切迫した状況を明かした。未曽有の逆境がタクシー運転手を日に日に追いつめているのだ。

 今回の緊急事態宣言で社会福祉協議会からの追加借入が可能になるという期待が不安を和らげる材料になっているというが、「とはいえ借金に違いはなく、これを返済できるのかというさらなる不安がつきまといます」と表情は暗い。

 タクシー運転手の目に、今の大阪の街はどのように映っているのだろうか。「夜の街を流しながら目につくのは、テナント募集看板の多さです。大阪の一等地ミナミの路面店でさえ空きだらけ。飛田新地も全店が20時で閉店している。飲食店の次は、ビルオーナーの破綻へと続く気がしてなりません」と予測した。

 そしてこう窮状を訴えた。「今回の緊急事態宣言は、度重なる時短要請をこれ以上できないので府が国に頼み込んだということと、助成金の国負担を求める苦肉の策に思えてなりません。世の中の不景気は、タクシー業界の不景気に直結しているだけに、明日からの営業が不安で仕方ない、というのがタクシー乗場に延々と並びながら抱いている今の私の心境です」。

 この日の勤務シフトは午後8時から翌朝7時までだった。希望に満ちた朝を迎えられる日はいつ戻って来るのだろうか――。

次のページへ (3/3) 【写真】緊急事態宣言が発出された13日深夜3時頃の大阪・ミナミの東心斎橋(八幡筋)
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