「AKB48グループ歌唱力No.1決定戦」は年々し烈さが増し、第3回大会は3年連続で決勝大会に出場したAKB48/STU48の岡田奈々をして「過去イチレベルが高い」激闘となった。メンバーたちの成長をすべて見届けてきた竹中氏も、ここまでハイレベルな戦いが繰り広げられるとは立ち上げ当初は想像していなかったという。

「予選の収録で各グループの地を巡るんですが、ピアノと音を合わせた時に1音目でびっくりしました。例えば、第2回大会の山崎さんや矢野さん、HKT48の秋吉優花さんは1年前に聞いたのとはまったく違う声が聞こえてくるんです。1年間どれだけ努力してきたか、どれだけの練習をしないといけないのか、その1音で分かります。『ここまで一生懸命やってきてくれてありがとう』という感謝と感動ですよね。僕は“歌唱力ガチ勢”と呼んでいます（笑）。正直、第1回大会のファイナリストのレベルが、第3回大会のベスト20（決勝進出メンバー）のレベル。選曲、その日のコンディション、歌の仕上げ方、審査員との相性、ちょっとした誤差で結果が変わってしまうくらい、紙一重の戦いになってきています」

　第3回大会で言えば、STU48の快進撃も一つのトピックだった。優勝を果たした池田を筆頭に、岡田、矢野、谷口茉妃菜、峯吉愛梨沙、小島愛子、清水紗良と、各グループで最多となる7人が決勝大会へ進出（清水は20年11月に活動休止を発表して辞退）。ファイナリストに残ったメンバー以外にも、自分の色を出したパフォーマンスでインパクトを残した。竹中氏は“必然”の成果だったと語る。

「実は、歌がうまいこと以上に『熱量』が大事。何か目標に向かって努力し、一生懸命な姿を見せてくれるからこのイベントは素敵で、そこに真価があります。その熱量がどんどん広がっていて、成長をずっと後ろで見守っているバンドメンバーも彼女たちに愛着があるし、（審査員を務める）ゴスペラーズの黒沢薫さんが力強くサポートしてくださっている。池田さんが優勝して担当マネジャーさんが舞台袖で泣いているのを見て、『STU48は熱いな』と感じましたが、それもメンバーの努力が見えたからこそ。決して偶然の快進撃ではなくて、一体になって積み上げた熱量が結果になったと思います。普段アイドルさんの活動を見ていなくても、プロの耳にはちゃんと響くものなんですよね」

「AKB48グループ歌唱力No.1決定戦」は第1回大会から、予選、決勝大会の生放送のほか、舞台裏密着カメラが捉えた決勝当日の様々なドラマをドキュメンタリーとして放送してきた。そこには竹中氏の強いこだわりが込められている。

「僕は歌唱力No.1決定戦をスポーツイベントとして捉えている部分があって、実際、決勝当日の舞台裏は高校球児にとって甲子園さながらのドラマやストーリーが生まれます。ステージ上では感情を抑えていたメンバーが、袖にはけた瞬間に悔しくて涙を流していたり、喜びを分かち合っていたり、感情があらわになっている姿は、努力や熱量と同じく伝えないといけない。この企画は大会後にドキュメンタリーも見ていただくことも非常に大事だと思っています」

　出場を夢見て48グループに入るメンバーも増えている「AKB48グループ歌唱力No.1決定戦」。アイドル人生を変える一つのきっかけの場として、今後も進化を続けていく。

（後編に続く）

□竹中優介（たけなか・ゆうすけ）TBSテレビ局員プロデューサー。「アッコにおまかせ！」「輝く！日本レコード大賞」「櫻井・有吉のTHE夜会」「ROOKIES」などを担当。日向坂46ドキュメンタリー映画「3年目のデビュー」など、映画監督も務める。

日時：1/16(土)午後10:00～午後11:00にTBSチャンネル1で初回放送。
内容：2020年12月1日に開催された、AKB48グループの中で最も魅力的な歌い手を決める「第3回AKB48グループ歌唱力No.1決定戦」決勝大会の密着ドキュメントがテレビ初放送！ 決勝に進出した19人がステージに込めた思い、緊張感たっぷりのバックヤードの模様など、完全実力勝負の中で生まれたいくつものドラマが収録されている。
https://www.tbs.co.jp/tbs-ch/item/o2492/