【プロレスこの一年 #27】プロレス界激動の2020年を振り返る コロナ禍のサバイバル、無観客配信、有観客大会…
新日本が21年ぶりとなる神宮球場大会を開催
緊急事態宣言も解除され、プロレス界も対策を取った上での有観客大会が解禁となっていく。まずは新日本が6月15日からの再開を6月9日に発表。15日は110日ぶりの開催で、延期されていたシングルトーナメント「ニュージャパンカップ」が16日にスタート。決勝戦は7月11日の大阪城ホールで、EVILがオカダを破り初優勝を達成するとともに、内藤を裏切りロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンを離脱、バレットクラブに合流するビッグサプライズを起こしてみせた。しかも翌日には内藤を破り、IWGP二冠を強奪したのである。
7月に入ると後楽園ホールでの有観客大会も解禁。12日に大日本プロレス、18日にNOAHが興行を開催し、人数制限がありながらもプロレスが聖地に戻ってきた。ところが、第2波ともいうべき事態がすぐにマット界を襲う。8月7日にwaveの宮崎有妃に陽性が発覚、その後の大会が中止された。13日には新日本の宇和島大会が直前で中止。これは発熱症状のある選手がいたための緊急措置だったが、不明な点の多い新型ウイルスだけに賢明な判断ではあった。また、スターダムの8・15大阪も観客を入れてから開始直前で中止を決定。巡業にはついていない選手の陽性が当日朝に判明し、濃厚接触の可能性がある選手がいたことによる苦渋の決断だった。しかもその後、選手から1人の陽性者が出たため8・22&23横浜武道館のこけら落とし興行が前日に消滅。新会場での大会は、10月3日にあらためて開催されることとなる。
8月29日には新日本が実に21年ぶりとなる神宮球場でのスタジアム大会を決行。メインはEVIL対内藤のIWGP二冠戦で、内藤が元同門のEVILを破り2本のベルトを奪回。試合後には花火が打ち上げられ、夏の屋外大会らしい風景が現出した。
秋には、コロナ禍で延期されていた主要団体のシングルの祭典が集中的に行われた。新日本の「G1クライマックス」は10・18両国が決勝で、飯伏がSANADAを破り2連覇達成。また、新日本では秋の「ワールドタッグリーグ」と初夏の「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア」をシリーズ同時開催で2つの恒例行事を完走させた。タッグではIWGPタッグ王座戦線常連のタマ・トンガ&タンガ・ロア組が前年度覇者のジュース・ロビンソン&デビッド・フィンレー組を破り意外にも初優勝。ジュニアではヒロムがエル・デスペラードを破り日本武道館のメインを飾ってみせた(ともに11月15日)。
全日本の「チャンピオン・カーニバル」はゼウスが宮原を破り初優勝(10・5後楽園)。年末の風物詩「世界最強タッグ決定リーグ戦」はゼウスの欠場というアクシデントこそあったが予定通りの開催にこぎ着け、最後は宮原&青柳優馬組が優勝(12・7後楽園)。NOAHでは中嶋勝彦が清宮海斗を退け、「N-1ビクトリー」を制覇した(10・11大阪)。また、ZERO1の「火祭り」も秋に開催となり、元WWEコーチのハートリー・ジャクソンがJUST TAP OUTの田村ハヤトを破り、初優勝を成し遂げたのだった。
WWE入りが決まりながらも渡米が延期されていたSareeeがシードリング8・26新宿に登場、30日には古巣ディアナで半年ぶりの試合を行った。これをきっかけに、Sareeeは「WWEカウントダウン」として日本での試合を許可される。その後、黒潮イケメン二郎のWWE契約と渡米が明らかになったが、Sareeeは自身がアメリカに行くまで日本で試合をする道を選んだ。Sareeeは、お菓子作り動画で話題の世志琥とライバル関係を超えたタッグを結成、シードリングのタッグ王者になるとともに、初代タイガーマスク主宰リアルジャパン(ストロングスタイルプロレス)のリングにも連続参戦を果たした。Sareeeと組んだ世志琥は12月26日、高橋奈七永とともにスターダムのリングに電撃登場。21年に向け、引退騒動の原因となった古巣に喧嘩を売ったのだ。
21年を迎え、今後もしばらくは、コロナ対策を取りながらのプロレスが続いていきそうだ。会場で思う存分声を出し、応援(&ブーイング)できる環境が待ち遠しい。