長州力はなぜ若者の心をとらえたのか 「ハッシュドタグ」「飛ぶぞ」流行語連発を本人に直撃
「飛ぶぞ」がギャルの間で流行
短い言葉で話題を生む力はレスラー時代から突出していた。「藤波、俺はお前のかませ犬じゃない」「またぐなよ」「キレちゃいないよ」。マット界には長州の放った数々の名言が残っている。
時代がアナログからデジタルに移行する中、長州の言葉はインターネットの普及という潮流に乗った。「SNS流行語大賞2020」にノミネートされた「ハッシュドタグ」以外にも、クローズアップされたせりふがある。
2018年に関西ローカルで放送された番組「相席食堂」の中で発した「食ってみな、飛ぶぞ」という言葉が、ネットフリックスやアマゾンプライムなどの新時代の配信プラットフォームで再放送されたことをきっかけに話題になり、若者に浸透。ギャル雑誌主催の「egg流行語大賞2020」で6位にランクインする反響となった。
それでも長州は「話題になるのは、悪い話題じゃなかったらいいじゃん」と受け止めつつ、顔色を変えることはない。「そんなものは、現役時代からしゃべっている言葉であって。45年間、どれだけしゃべってきてる」と、“何を今さら”という口ぶり。ちなみ「飛ぶぞ」の真意は、「だから飛ぶぞって、食ったら飛ぶぞ!、びっくりするから飛ぶぞ!」と説明した。
テレビで話題にならなくても、ネットで脚光を浴びる。10~20年前と比べ、ヒットの仕掛けが根本的に変化している。それを反映したのが長州というギャップ。昭和を代表する革命戦士が新しいメディアと融合する姿は新鮮で、痛快だ。
長州はSNSを使ったマーケティングでも変革をもたらした。ツイッターが話題になった長州は、コロナ禍の中、テレビCMや動画広告など最大11社とスポンサー契約を結ぶ人気者になった。
「このご時世だから、すごくありがたく感じるよね」と感謝の長州。しかし、ここでもハプニングが起こる。ツイッターを使った最初の広告で失敗。商品名を間違えてツイートしてしまった。
通常なら、広告塔にあるまじきNG行為だが、長州の場合は違った。そのことがさらにニュースになり、結果、商品やスポンサーの宣伝につながる“副作用”が発生。「全く自慢になりませんが、結果的にスポンサーに喜んでいただいた(笑)」(マネジャーの谷口正人氏)という結果になった。
最近では、スポンサーと契約を結ぶ際、本人が間違えて発信してしまうことも織り込み済みだという。舞台裏では、マネジャーとスポンサーとの間でこんなやり取りもあった。「間違えてしまってもいいですか?」「むしろ間違えてください」。