コロナ禍で取材形態に変化「もどかしかった」取材者が振り返る2020年【編集部座談会】

コロナ禍でタレントには大きなダメージ「芸能界は表現してナンボの世界」

司会:コロナはテレビ業界のあちこちに影響を与えたわけですが、インタビュー記事を量産した中野さんはいかがでしたか?

中野:大人数が集まるイベント取材をする記者に比べ、私は少人数が集まるだけのインタビュー取材をメインにしているので、コロナ禍でも影響は比較的少なかったと思います。インタビュールームを開け放しにして、マスクをして、距離をとって取材をすれば、「3密」にはならなかったので、取材は普段よりは減りましたが、まあまあできていました。

リサ:それはうらやましいですね。私が取材に出かけた記者会見はおおむね「3密」対策が取られていましたが、ある大物ポピュラー歌手の会見は、普段と同じように前方に大勢の記者がべた座りしてひしめきあってました。そのど真ん中に案内されそうになって……。さすがに身の危険を感じましたよ(苦笑)。

中野:春に緊急事態宣言が出されたときは、電話取材だけになり、もどかしかったですね。予定していた出張も飛んでしまい、その後もそこへの取材はかなわないまま。「ほんの数日、取材を前倒しにしておけば行けたのに……」と、ものすごく悔やまれました。何年も「取材したい!」と思い続けている相手なので、コロナが明けて、早く取材しに行きたいなと思っています。相手の方には、それまで無事でいてほしいと願うばかりです。

司会:取材相手はコロナとどう向き合っていたのでしょう?

中野:緊急事態宣言が解除された直後は、タレントさんたちの様子に少し変化がありました。「自粛期間中、どうしていましたか?」というこちらの質問に答えているときに、突然、泣き出した方がいたんです。驚きました。ほかにも、取材予定の時間をオーバーしたので、話を切り上げて帰ろうとする私やカメラマンに、食い下がるようにして話し続けた方もいました。もっとしゃべりたい、まだ帰らないで、という感じでした。自粛期間中、彼らが感じた不安や孤独は、私が想像するより大きかったんだなあと感じましたね。

リサ:芸能界は表現してナンボの世界でもありますから、表現する機会が失われたときのダメージは私たちの想像以上かもしれません。ただ、表現の現場でコロナ感染者が出てしまうのも深刻なダメージとなってしまう……。

中野:実際、この1年で取材した方のなかに、コロナに感染してしまった方が複数いました。その後、なかなか退院のニュースが出ないので心配になりました。彼らはコロナに感染しても、退院しても大きなニュースになって、いろいろ言われてしまう。だから感染しないよう、私よりも気をつけている方が多かったように、取材をしていて感じました。

リサ:タレントさんもそうですが、舞台などの主催者の苦労たるや壮絶でした。取材した演劇関係者はこう打ち明けてくれました。「初日公演のまさに前日に出演者全員のPCR検査の結果が出そろって全員の陰性が分かったときは心底ほっとした」と。1人でも陽性が出たら公演は中止ですから。気持ちが痛いほど分かりました。

次のページへ (3/3) 「“有観客”コンサート」という名称の違和感
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