芸能人の不倫、安倍総理辞任、コロナ…「女性セブン」のリアルタイム連載小説が書籍化
予測のつかないコロナ禍が小説の展開にも影響
連載第1回の発行日は今年2月27日。ちょうどダイヤモンド・プリンセス号の乗客が下船した頃で、当然新型コロナウイルス禍がここまで世界を一変させるとは予想だにしていなかった。現実が小説に干渉するという試みである以上、コロナ禍は無視できず、変更を迫られる点も多々あったという。
「武漢でウイルスがどうのと話題にはなってはいましたが、当初はここまでとは思わず、五輪がヤマ場かなと思っていました。一番頭を悩ませたのはロックダウンの可能性が取り沙汰された時。県をまたいでの移動が制限されたら神奈川の海まで行っての犯行ができない、そうなったらこの話は成立しないなと(笑)。結果的には何とか破綻することもなく、二重構造が逆に伏線のように効いてきました。何より、こんな一大事を小説の形で記録できたのは作家冥利に尽きます。ある意味、リアルタイムの歴史小説になったかなと思います」
非常に挑戦的な試みとなった本作。それだけに、今回の単行本化にあたっては連載時とはまた違った楽しみ方もおすすめだ。
「一本通しで読むことでまた読後感が違う。連載で読んでいただいた方も、あらためて一息に読んでもらえたら新たな発見があると思います。未読の方はこの未曽有の1年を振り返るという意味でも、ぜひ年末に読んでみてはどうでしょうか」
変容する現実世界が作者の想定すら追い越し、誰一人として予測できない結末を迎えたリアルタイムミステリー。年の瀬に“事実は小説より奇なり”な読書体験はいかがだろう。
□志駕晃(しが・あきら)1963年生まれ、神奈川県出身。本名は勅使川原昭(てしがわら・あきら)。ニッポン放送でラジオディレクター、プロデューサーを務め、48歳の時に小説の執筆を開始。2017年に書籍化した「スマホを落としただけなのに」が第15回「このミステリーがすごい!」大賞で隠し玉賞を受賞。「ちょっと一杯のはずだったのに」(18年6月、宝島社文庫)、「あなたもスマホに殺される」(19年2月 角川文庫)、「オレオレの巣窟」(19年8月 幻冬舎文庫)、「私が結婚をしない本当の理由」(20年10月 中央公論新社)など著書多数。