ウーバーイーツは稼げるのか? コロナ禍で実際に配達を始めた舞台俳優に聞いてみた

自転車による配達で健康的に変身した長沼さん【写真:ENCOUNT編集部】
自転車による配達で健康的に変身した長沼さん【写真:ENCOUNT編集部】

「意外と稼げるんだな」という率直な感想

 意外と稼げるんだな、とも思います。働き方によるんですけど、僕の場合は時給換算すると、1500円ぐらいになります。がむしゃらに働いているわけではなく、配達は1日10~17軒。昼間は自宅に帰って、昼食を兼ね2時間休憩を取っています。雨のときは自転車のタイヤが滑って危険なので避けています。ハプニングといえば、始めて1週間ぐらいのとき、タピオカドリンクを配達していて中身を全部こぼしてしまったこと。でも、サポートセンターに電話をしたら、優しく応じてくれました。

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 Uber Eatsで働く前は知人の飲食店の手伝い、そして、掛け持ちで派遣会社に登録し、単発や短期でパソコンの打ち込みや自動販売機の飲料の補充などをしていました。役者の仕事は波があって、仕事があるときとないときの差が激しく、オーディションが急に入ったりもするので、単発や短期のバイトは助かるんです。気も楽でしたし。でも、仕事は面白いとはいえず、経済的にも厳しかったですね。

 Uber Eatsの配達を始めたら、無駄遣いをしなくなったことも良かったです。それまでは、特に必要がないものとか、食べなくていいものとかも、惰性で買ったりしていたんです。でも、Uber Eatsで配達を完了したら“今の配達でいくらになった”と表示されるので、たとえばコンビニに入って何かを買おうとしたとき、「これは配達1回分ぐらいになるんだな」と考えるようになって、無駄なものは買わなくなりました。頭の中の整理もできるようになった気がします。

身体も頭もスッキリで、コロナ明けに向けワクワクしている

 気を付けているのは交通事故。事故だけは起こさないようにって。実際、配達しているとき、他の配達パートナーが事故を起こして相手と話し合ってる光景を、何度か見たことがあります。だから、他人事だと思っちゃいけない、と気を引き締め、めちゃめちゃゆっくり安全運転をしています。注文したお客様は「遅いなあ」と思っているかもしれませんけど(笑)、クレームを受けたことはありません。

 コロナが落ち着いたら、身体も頭もスッキリ、充実した状態で動き出せそうで、今、すごくワクワクしています。落ち込んだこの数か月も、表現者として貴重な経験で、今後、生かせると思います。今、表現者集団「生きることから逃げないために、あの日僕らは逃げ出した」のメンバーとして活動しているんですけど、すごく可能性を感じていて、大泉洋さんや安田顕さんらの演劇ユニット「TEAM NACS(チーム・ナックス)」のようになれたらいいな、なんて思っています。Uber Eatsに出会えて良かったですけど、やっぱり、アルバイトなしで、表現者として多くの人の心を動かせるようになりたいですね。

□長沼薫 (ながぬま・かおる)1989年6月11日、北海道亀田郡七飯町生まれ。登別大谷高校卒業後、北翔大学進学も1年で中退し20歳の誕生日に上京。09年、「劇団シャイボーイ」を結成し下北沢の小劇場を中心に活動するほか、特攻隊ミュージカル「流れる雲よ」などに出演した。19年2月、激情シネマ舞台「生きることから逃げないために、あの日僕らは逃げ出した」に出演し、その舞台から生まれた9人組の表現者集団「生きることから逃げないために、あの日僕らは逃げ出した(通称:生き逃げ)」のメンバーとして活動中。21年1月25日、「KT Zepp Yokohama」で公演「第四回囚人博覧会~囚人スペクタクルワンダーランド~」開催。

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