映画史上初、渋谷駅前のスクランブル交差点での大爆破シーンはどう実現したのか?
「交渉人 真下正義」では5000人規模のエキストラ「経験値があった」
――撮影でこだわった点は?
「観客の皆さんと同じ目線の高さで撮るのが重要と思っていました。渋谷の爆破なんて、あってはならないことだし、一生経験しなくていいことじゃないですか。でも、それを体験できるのは映画の醍醐味です。そこをいかに衝撃的に描くか。そこはスタッフ、俳優部と一丸になったところですね。一瞬の爆破をこんなに長く描いた映画はないと思います」
――地面の部分はスクランブル交差点を再現して、周りはグリーンバックを張って、後からCG合成する、ということですよね。
「カメラは僕の作品の特徴であるステディカムを始め、クレーン、ドローン、オズモポケット(YouTuberがよく使う手ブレ防止機能のついた小型カメラ)iphoneがあって、それぞれで撮影したカットに合成してもらいました。VFXは撮影から1年近くかかっています。シーンとしては昼間、夕景、夜、爆破後が出てくるので、それぞれ照明も違ってきます。昼間はビル陰もあるので、曇りで撮らないといけない。夕景では太陽の角度も計算しないといけない。夜のシーンでも渋谷は電光掲示板など色とりどりで明るい。緻密なプランニングのもと撮影の現場ではいろんな明かりを再現して、やれることはやりましたが、合成をやったVFXチームは本当に大変だったと思います」
――コロナ禍の今では、とても撮れない、密な撮影ですね。
「そういう意味では、とても運がよかったんじゃないかと思います。『サイレント・トーキョー』はすべてコロナ禍前に撮り終えて、後は編集とCG合成の作業だったので、コロナの影響は大きくは受けていないのですけども、別の作品(WOWOW『コールドケース3~真実の扉~』)では撮影が2か月ほど中断し、エキストラも10人程度しか呼べないなど大変でした」
――佐藤浩市、石田ゆり子、西島秀俊と主役級の俳優がそろいましたね。エピソードを教えてください。
「キャスティングはプロデューサー部と相談して決めたのですが、理想通りでした。佐藤さんはセリフが少なかったので、現場に来た中でマイクをつけない日もありました(笑)。それでも、浩市さんの存在感が消えない。すごいなと思いました。映画は群像劇になっているので、俳優部とはいろいろ話しました。皆さん、難しい役を丁寧に表現してくれました」
――たくさんの登場人物が出てきますが、上映時間は1時間39分と短い。ここもこだわった部分ですか。
「台本の段階から、100分以内の作品に仕上げようと決めていました。一気に見られることが重要と思ったんです。(秦建日子さんの)原作はスピード感があったので、それを大事にしたいと思いました。原作では数日間の話ですが、1日にまとめて、登場人物の背景にも色を加えました。肩肘張って、さて映画を見ようという感じではなく、最初は、『渋谷が爆発するんだって』という興味本位、気楽な気持ちで見ていただき、見終わった後に『何が原因だったのか?』って話してもらえれば。初号の後では、みんながざわついている感じがあったのですが、映画を見た皆さんも、そんな感じだとうれしいですね」