合唱団時代にソプラノを務めていた矢野は高音を得意とし、しっとりと歌い上げるバラードには定評がある。「第3回AKB48グループ歌唱力No.1決定戦」の予選でも、「あなたに逢いたくて」(松田聖子)で審査員を魅了して、3位通過を果たした。

　決勝大会に臨むにあたっては、課題に挙げる低音の特訓にも励んでいる。同時に、第1回大会でアップテンポのロックチューン「ブルーバード」を披露して強烈なインパクトを残したように、“新たな自分”を見せたいと意気込む。

「『バラード以外の曲も歌いこなせたら最強！』と自分でも思うので、みなさんのイメージを塗り替えられたらなと。歌う前は、歌詞を書き起こして、ストーリーの中に入って、歌の主人公になり切ります。それこそ演技みたいな感覚。そうすると声にも出るんです。もっと想像を膨らませて、個性やインパクト、ギャップを出していかないと1位にはなれない。そこが課題だと思います」

　AKB48グループにおいて、矢野が憧れる歌唱メンバーはSKE48の野島樺乃だという。歌唱力No.1決定戦の初代女王で、今回は優勝を争うライバルだが、シンパシーを感じる部分があると明かす。

「野島樺乃さんは曲の世界に入り込んで、歌っている姿が本当に気持ち良さそうなので、こちらも心地よくてずっと聞いていたくなります。バラード系の曲を歌う部分は少し似ているところがあるのかなと思っていて、野島樺乃さんみたいに歌える人になりたいです。第1回のファイナリストLIVEで、尊敬する憧れの先輩と歌えて、本当に幸せな時間でした。もう一度、ファイナリストLIVEで一緒に歌えるように頑張ります」

　STU48を全国に広めるためにも、矢野は歌唱力No.1決定戦への思いを改めて口にする。「歌で一番を獲りたい」「一番の景色をファンの方と一緒に見たい」と。

「これまで何かで一番になったことがないので、今回の歌唱力No.1決定戦で優勝することが21歳の目標。これに懸けています。私がSTU48を引っ張っていくためには、優勝しかない。やっぱり(優勝者に贈られる秋元康プロデュースによるオリジナル)ソロ曲がほしいです。自分の声だけが入っているなんてうれしいし、ファンの方には選抜に入れなかった時期、(けがで)ライブに出られなかった時期、私以上に悔しい思いをさせてしまったので、早く喜んでもらえるニュースを届けたい。私のファンだということに自信を持って、自慢してもらいたいので、絶対1位になります。応援していてください！」

　17歳でAKB48グループの曲を一曲も知らずにSTU48に加入した少女が今、歌でAKB48グループのNo.1を獲ろうとしている。ただ、アイドルになった当初に本人も「想像していなかった」“シンデレラストーリー”は、人生初の一番に輝いて完結するのではなく、きっとそこからが本番。「歌姫」の称号を手にした時、目の前にはまた新たな世界が広がっていくに違いない。だから、矢野は思いを乗せて歌い続ける。笑顔と元気を届けるために――。

□矢野帆夏(やの・ほのか)1999年8月6日生まれ、広島県出身。STU48 1期生。AKB48グループの歌姫候補は、週5回以上のジム通いを自らに課すほどのストイックガール。マイブームは髪のトリートメントで、1日どれだけの人に「髪の毛つやつやだね」とほめてもらえるかがモチベーションのバロメーターになっている。ニックネームは「ほのたん」。