藤田朋子が明かす『渡鬼』石井ふく子氏の教え「あんた、自分を誰だと思ってるの?」

俳優の藤田朋子が、今月31日開幕のミュージカル『ALICE ~不思議の国のアリスより~』にハートの女王役で出演する。デビュー39年。61歳の今も舞台やコンサートで全国を巡り、ENCOUNTに音楽に懸ける思い、俳優人生における恩人との出会いなどを語った。

デビュー39年を迎える藤田朋子【写真:藤岡雅樹】
デビュー39年を迎える藤田朋子【写真:藤岡雅樹】

ミュージカル『ALICE ~不思議の国のアリスより~』でハートの女王役に挑戦

 俳優の藤田朋子が、今月31日開幕のミュージカル『ALICE ~不思議の国のアリスより~』にハートの女王役で出演する。デビュー39年。61歳の今も舞台やコンサートで全国を巡り、ENCOUNTに音楽に懸ける思い、俳優人生における恩人との出会いなどを語った。(取材・文=大宮高史)

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 同作は神奈川・小田原を皮切りに、来年2月27日の福島まで全国で48公演を開催する。藤田は『アリス』の物語の中で彼女が迷い込むハートの国の女王・ヴィラン役。キービジュアルから、イメージ通りの深紅の派手な衣装で存在感を見せている。

「とても冷酷な人に写るんですが、身の上にある不幸なことがあって喪失感を抱えている背景があります。その絶望から悪夢のような日々を周囲にもたらしてしまうけれど、アリスと出会って世界が動いていきます。『なぜ、そんなに冷酷にならなければならなかったのか』に興味を持ってもらえるようお芝居を練っています」

 悪役すなわち、ヴィランになり切るためのすごみの出し方にも、経験からくる自信がある。

「私自身はいつもついニコニコしてしまうので(笑)、怖い人になりきる時のさじ加減って難しいなと思います。でも、芝居はチームワークです。私がただ『この野郎!』って怒鳴るから怖くなるのではなくて、静かに『こんにちは』と言っても、周りがひれ伏すことで怖さが伝わったり。私一人の力ではなくみんなで作り上げてゆきたいです」

 俳優としては1987年のミュージカル『レ・ミゼラブル』で初舞台、翌88年のNHK連続テレビ小説『ノンちゃんの夢』でドラマ初主演を果たして、40年近く活動してきた。取材中もよく笑うが、「『藤田朋子』のマスクをかぶるとしゃべれるようになるだけで、本当は人見知りです。パーティーでも壁の花になってます」と謙そんする。

「今でも演出家さんに言われたことや、作品への向き合い方で分からないことがあると、石井ふく子先生に電話しちゃいます」

 90年の第1シリーズからレギュラー出演してきたTBS系ドラマ『渡る世間は鬼ばかり』。プロデューサーの石井ふく子氏のことを慕い、『渡鬼』以外でも縁が続いた。

「電話口で先生に泣きついたら『あんた、自分を誰だと思ってるの?』って言っていただきました。『ちゃんとあんたらしくやれば、それでいいのよ』と励ましてくださったのが、何よりもうれしかったです。先生は舞台でも私に、ちゃんと見せ場を作ってくださいます。私が『脇役だから』と思って、縮こまって、舞台上に一人いる場面で早くハケようとすると『あなたのための場面なんだから、たっぷりやりなさい』って注意されました。100歳になられた今でも、いつでも愚痴を聞いてもらえたり、勉強になる言葉をもらえるのは本当に感謝です」

藤田朋子の夫はアコーディオン奏者の桑山哲也【写真:藤岡雅樹】
藤田朋子の夫はアコーディオン奏者の桑山哲也【写真:藤岡雅樹】

音楽への情熱は変わらず「私も少しずつ歌えたら」

 全国を巡る公演の最中の11月18日には、アコーディオン奏者で夫・桑山哲也の故郷・札幌でコンサートを行う。藤田にとっては音楽も少女時代から生活の一部だった。

「声が通るらしく授業中に誰かがしゃべっていて一言リアクションしただけなのに、『藤田さん、ちょっとうるさいです』って注意されちゃうタイプでした(笑)。同年代がアイドルに夢中だった頃、私はタケカワユキヒデさんやさだまさしさんが好きで。そこからビートルズにハマったんですが、中学3年の時に、盤に写真が印刷された珍しいピクチャーレコードを見つけて、手に取ったのがビートルズだったんです。ポール・マッカートニーの顔がとにかく大好きでしたね」

 歌手デビュー後の90年代には、同じレコード会社だったCHAGEの深夜ラジオ番組にゲスト出演したことを機に意気投合。レギュラーとして共演を重ねる中で、自発的な音楽活動へと踏み出していった。

「CHAGEさんの音楽作りを間近で見て、『私もこういうものがやりたい』と思ったんです。そこからミュージシャンの方々と仲良くなってアルバムを作ったり、自主ライブを始めたりしました。自分がやりたい音楽を周りの人たちが助けて形にしてくれた感覚ですね」

 桑山とともに、音楽の先輩から文化を引き継ぎたい思いもある。

「夫もホームグラウンドであるシャンソンの世界の先輩方が少なくなり、自分たちの世代が業界を引っ張っていかなければいけない時代になってきたようです。夫は先輩から受け継ぎ、パリ祭で音楽監督を務める一方で、毎年『新春シャンソンショウ』でも演奏しています。人気のチャランポランタンさん、今回のミュージカルで共演のROLLYさんたちもレパートリーにシャンソンを入れたりしています。女優の先輩方が歌い継いできた文化でもあるので、私も少しずつ歌えたらいいなと思っています」

 昨年還暦を迎えたが、今なおチャーミングな俳優でいられる秘訣はいたってシンプルだ。

「ジムも行ったし、エステもヴィーガンもファスティングも、キックボクシングみたいなものも全部試しました。でも、自分がやりたいことをやって、それを続けるのが一番なんです。だから、ポール(マッカートニー)にディズニーにキティちゃんに音楽……と、好きなものに接する時間を増やすのが一番の健康法です(笑)」

 40年近く第一線で走り続けてきて、今は脇役でいることを本気で楽しめるようになったという。

「昔は周りの方が気を利かせて、真ん中に近い役をくれていたように思います。最近になって、それより出番が少ないような役も増えてきたんですが、それがうれしいんです」

 その感覚を夜空の花火に例えた。

「花火って、パーンと大きく上がって消えるだけだったら、つまらないじゃないですか。皆が歓声を上げた後に、名残惜しく残るチリチリチリ……っていう小さな火花がありますよね。あの火花のような存在になりたいんです。皆が意識していなくても、そこに必要とされる役者っていいなと思います。今回の女王はそれよりは目立ちますが(笑)」

 舞台に音楽と、若き日の自身がもらってきた文化のバトンの継承者でいたいと、静かな覚悟を見せている。

□藤田朋子(ふじた・ともこ)1965年8月3日、東京都生まれ。大学在学中の87年にミュージカル『レ・ミゼラブル』のオーディションに合格し、初舞台。翌88年にNHK連続テレビ小説『ノンちゃんの夢』ヒロインを務める。90年のスタートから終了までTBS系連続ドラマ『渡る世間は鬼ばかり』に岡倉長子役で出演。2005年にアコーディオン奏者の桑山哲也と結婚し、夫婦でコンサートなども開催している。

衣装協力:marble SUD

○全国42都市48公演全国ツアーミュージカル『ALICE ~不思議の国のアリスより~』
上演台本・音楽・演出:西田直木
出演:田中夢羽、藤田朋子、ROLLY、土屋アンナ(Wキャスト)、星野真衣(Wキャスト)、吉田要士、松村雄基ほか

愛知公演:2027年2月7日、アイプラザ豊橋
東京公演:2027年2月11日~14日、シアターH

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