RENAらを輩出したシュートボクシング(SB)を率いるシーザー武志会長(65)。1985年にSBを創設してから早くも35年の月日が流れたが、その間、格闘技界の栄枯盛衰を間近に体感した。そんなシーザー会長に、実は“元祖・路上の伝説”としてケンカに明け暮れた日々を過ごしていた思春期の話から、アントニオ猪木、佐山聡、前田日明、高田延彦、千代の富士、朝青龍、RENA、那須川天心……といった時代を彩った主役たちとの様々なエピソードを語ってもらった。衝撃の最終回！(聞き手◎“Show”大谷泰顕)

――RENA選手をはじめ、最近は女子格闘技の人気があるじゃないですか。

「嬉しいね。確かシュートボクシングが初めてじゃないかな。女子選手だけのイベントをやったのは。川崎のクラブチッタっていうとこ。1998年かな。だから仕掛け人という自負はありますよ(笑)」

――シーザーさんから見て、女子の試合はどう見えますか？

「1985年のシュートボクシング創設当初から女子のプロの試合は組んでいたんだけどね。引退後はレフリーも務めた仁あきらを筆頭に、その後、女子プロレスラーになった風間ルミとかね。最初からガチンコでやってたんだけど、経験の浅い選手も多かったし今とは技術も違うからどうしても男子の試合の合間に組むと迫力に欠けるというか、お客さんにはつまらなく見えてしまうこともあった」

――つまらない？

「女性は男よりも柔らかいし実は頑丈というか、倒れないんだよ、なかなか」

――あ、その点で。

「だけど、女子もボディーが打てると違う。だからボディー打ちができるヤツは絶対に強くなる。倒せる。だからRENAもそうでしょう。あいつ(RENA)の左は天才的に上手い。左のボディーを打てるヤツってなかなかいないからね。まあ今はネットとか映像がたくさんあるから格好だけマネしてやってるヤツは一杯いるけどね。でも腹を効かせるっていうのは全然違う。何発もいらないんだよ」

――そうなんですね。

「ウチでいえばアンディ・サワー。あれが格段に上手かったし、ボクシングは別にしてアンディがレバーブローをキックとか格闘技界に広める一端を担った部分もあると思うよ。これからボディー打ちが上手い選手が出てくると、絶対に立ち技のレベルが上がる」

――RENA選手は引退を口にしていますけど、それに関しては？

「彼女としては30歳くらいまでやりたいんじゃないかな」

――最近、あと3試合くらいと公言しました。

「いや、たぶんまだやると思う」

――やりますか(笑)。

「本人も『2～3戦って、MMAだけじゃなくSBの試合とかも考えたら言いすぎちゃいました』って言ってたし」

――SBの試合のこともちゃんと考えてくれてるんですね(笑)。

「1年に1回でも2回でも。あれが引退したくて仕方ないヤツだったらとっくに辞めてますよ。たぶん、未練もある。まだ燃え尽きてない」

――まだやり残したことがあると。

「この間の試合(9月27日、さいたまスーパーアリーナでの富松恵美戦)はちょっとらしくなかったね。キレが悪かった。急なオファーで契約体重が重かったのもあるけど、もっとガンガン行けたのにね。ボディーが怖くて、相手の選手は息が上がってた。だから行けばいいのに行けない。それはやっぱり勝負事の世界にいる選手っていうのは、試合の感覚が開くと一瞬の躊躇でいけなくなるんですよ」

――試合勘が鈍るんですね。

「俺は、顔面にはパンチを当ててるんだから左を使って中に入って行けって思ってたんだけどね。RENAがもう1発腹に行ってたら、アレで終わってますよ」

――RENA選手が踏みつけをやる場面があると、覚悟を感じます。普通、ルールで許されているからって、やらないじゃないですか。

「あれはね、いつも姉妹ゲンカをして姉にイジメられてたから出来るんだろうね」

――そこで覚えたんですか？

「そう。だから踏めるんですよ(笑)。凄いケンカらしいよ、あの姉妹。(普通は)ちゅうちょするよね。俺たちみたいなのはちゅうちょしないけど(笑)」