戸田菜穂、思春期の娘2人を育てる「昭和的」な子育て術 壁に貼った高村光太郎の言葉

『遥かな町へ』(10月9日公開、監督・錦織良成)で主人公の母親役を演じた俳優・戸田菜穂。50代を迎えた現在も、年齢や役柄のカテゴリーにはあまりこだわらない。近年は母親役も多いが、実は30代後半から演じてきた。私生活では14歳と12歳の娘の母。自身を「昭和的なお母さん」と表現し、礼儀作法には厳しいと語る。

インタビューに応じた戸田菜穂【写真:井上学】
インタビューに応じた戸田菜穂【写真:井上学】

30代後半から演じてきた母親役、年齢のカテゴリーを気にしない50代の現在地

『遥かな町へ』(10月9日公開、監督・錦織良成)で主人公の母親役を演じた俳優・戸田菜穂。50代を迎えた現在も、年齢や役柄のカテゴリーにはあまりこだわらない。近年は母親役も多いが、実は30代後半から演じてきた。私生活では14歳と12歳の娘の母。自身を「昭和的なお母さん」と表現し、礼儀作法には厳しいと語る。(取材・文=平辻哲也)

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 若い頃のヒロイン役から母親役へ――。そんな変化を意識したことはないという。

「別になくて、結構早いうちから母親役をやらせてもらっていたので、30代後半から。あんまり娘から母だからというカテゴリーは気にしないです」

 では、演じてきたさまざまな母親像が、自身の子育ての参考になることはあるのか。

「あんまりないですね(笑)」

 そこはあっさりしている。

 自身はどんな母親なのかと聞くと、「私は昭和的なお母さんかもしれないですね」と返ってきた。

「礼儀作法に厳しく言いますし、ご挨拶とかちゃんと教えます。大人になった時に困らないように」

 娘たちは思春期の真っただ中だが、戸田の口調は柔らかい。

「とってもいい子たちです。素朴で、この映画に出てきそうな、すれてない優しい子たちです。子どもたちを信じるようにしているので」

 子育てで大切にしている言葉もある。「正直親切」。高村光太郎の言葉だという。

「本を読んでいたら高村光太郎さんの言葉で『正直親切』と書かれていて、学校の額に飾ってあったのを見ていい言葉だなと思って、『正直』と『親切』、この2つができればいいんじゃないかと紙に書いて貼っておきました。自然に触れさせたり、昔の子どもみたいな感じがいいかなと思って育てています」

 その考え方は、自身が母親から受けた教育とも重なる。戸田の母親は幼い娘を映画やバレエ、伝統芸能に連れて行った。戸田も「本物を見せる方が早い」と考えている。

「あまりぎゅうぎゅう締め付けない方がいいし。連れて行きたい場所があって、私は京都が好きなので『本物を見せる方が早い』と思って連れて行ったりします」

 2年ほど前には母親とも京都で合流し、清水寺などを巡った。

「昨日も江の島や由比ヶ浜に一緒に行きました。仲良し親子なんです。妹たちも近くにいるのでみんなでワイワイ」

俳句について語った戸田菜穂【写真:井上学】
俳句について語った戸田菜穂【写真:井上学】

長く続けている俳句、現在も月に1度は句会に参加

 女優、母という顔とは別に、長く続けているものもある。俳句だ。写真家・浅井愼平さんが主催する「東京俳句倶楽部」に参加し、現在も月に1度、句会に顔を出す。

「句会に行った時に4句詠むんですけど、その時だけですね。普段から作っているわけではなくて、見て吸収して、机で集中しないと出てこないタイプです。オフの時しかできないので、撮影がある時は全然詠めないです。緊張して頭が解放されないので」

 戸田にとっては、俳句そのものと同じくらい句会が楽しいという。

「俳句も面白いんですけど句会が面白くて。文化人の方が多く、新聞記者や作家やカメラマンさん、アーティストが集まる句会で、皆さんが選んでくれるとうれしい。選ばれた短冊は宝物です」

 会場は新宿の天ぷら店。酒と食事を楽しみながら句を競う。

「言葉のセンスを磨くのには最高で、コピーライターさんに近いんじゃないかと思います。飲みながら食べながらやる楽しい句会です」

 俳句には、仕事とは違う頭の使い方が必要らしい。

「1回だけ句会の後に撮影が入っている時に行ったら、0点だったことがあって(笑)。完全にリラックスしてオフじゃないとダメなんだと分かりました」

 句会では、年間のトロフィーもある。

「年間で、トロフィーをもらえるんです。ガラスのトロフィーに名前を刻んでいくんですけど、優勝しないと取れなくて」

 芝居、子育て、家族との時間、俳句。50代を迎え、この先に何を目指すのか。そんな問いにも、戸田は大きな目標を掲げなかった。

 「目標は決めないかな。常に挑戦はしていたいですけど、幸せでもありたいので。子どもたちが寝る時に『今日も1日ありがとうございました。明日もよろしくお願いします』って心の中で言えるような、日々感謝して生きられたらいいなと思います」

 先の目標を決めるより、その日をきちんと終える。戸田の50代は、そんな日々の積み重ねの中にある。

□戸田菜穂(とだ・なほ)1974年3月13日生まれ、広島県出身。1990年「第15回ホリプロタレントスカウトキャラバン」でグランプリを受賞し芸能界入り。91年に『五月の風』で女優デビューを果たし、同年『葡萄が目にしみる』でドラマ初主演。93年NHK連続テレビ小説『ええにょぼ』のヒロイン役に抜てきされ全国的な人気を得る。以降、ドラマ『ショムニ』シリーズ、『人生は上々だ』、『続・星の金貨』、『JIN-仁-』、映画『女はバス停で服を着替えた』、『沈黙のパレード』など多数の話題作に出演。

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