37歳・満島真之介、人生の決断は「風に身を任せる」 枠にとらわれない柔軟な姿勢
常に太陽のような明るさを放ち、周囲を笑顔にする俳優・満島真之介(37)。しかし彼の奥底には驚くほど静かで、深く、ニュートラルな哲学が流れていた。映画『沖晴くんの涙を殺して』(10月2日公開)で感情の行き場を失う青年・冬馬を演じた満島は、カメラの前で何を思い、自らの人生とどう重ね合わせたのか。人との違いを受け入れ、風のようにしなやかに生きる満島の流儀について、静かな情熱を込めて語った。

映画『沖晴くんの涙を殺して』で演じたリアリティーのある役どころ
常に太陽のような明るさを放ち、周囲を笑顔にする俳優・満島真之介(37)。しかし彼の奥底には驚くほど静かで、深く、ニュートラルな哲学が流れていた。映画『沖晴くんの涙を殺して』(10月2日公開)で感情の行き場を失う青年・冬馬を演じた満島は、カメラの前で何を思い、自らの人生とどう重ね合わせたのか。人との違いを受け入れ、風のようにしなやかに生きる満島の流儀について、静かな情熱を込めて語った。(取材・文=磯部正和)
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映画『沖晴くんの涙を殺して』は、額賀澪氏の同名小説を矢崎仁司監督が映画化。不治の病におかされた京香(広瀬アリス)と、死神と取引して「喜び」以外の感情を失った沖晴(木戸大聖)が織りなす、ファンタジーと現実が交差する物語。満島が演じる冬馬は、彼らの一番近くにいながら、何もできずにただ現実を受け止めざるを得ない青年。葛藤や戸惑いを抱えながらも優しく寄り添う、作中で最もリアリティーのある役どころだ。
同世代の作家が紡ぎ出した、生と死への新たなアプローチ。満島は台本をめくりながら、現代における命のあり方について深く思考を巡らせた。
「戦後の世代から受け継がれてきたものとはまた違う、今の時代ならではの生きる感覚や命の捉え方が描かれている気がしました。それは僕自身が普段から考えていることと、とても近い部分があったんです」
冬馬という役は、愛する人が死に向かう中で、自らは日常を生き続けなければならない残酷なポジションに置かれている。唐突に喪失の予感と向き合わされるリアルな痛みを、満島は深く理解していた。
「自分が死の淵に立つわけでもなく、いつもの道が続いている途中で、当たり前にあると思っていたものが突然消えそうになる。怒りでも悲しみでもない、どうしようもない感情だけが残されてしまうんです」
タイパやコスパが重視され、すぐに結果が求められる現代社会。その中で、あえて答えの出ない思いを抱え続ける冬馬の生きざまは、満島の目に特別なものとして映っていた。
「一生このやり場のない思いを持ち続けなきゃいけない。でもそれが、今日この瞬間や目の前の人を大切にしないと何が起きるか分からないという、生きていくうえでの大きな学びを与えてくれます」

風に身を任せ「自分の中を常にニュートラルな状態に」
冬馬という名前が「冬の馬」と書くように、そこにはあらかじめ定められた運命のようなものが内包されている。満島自身もまた、自らの意志ですべてをコントロールするのではなく、見えない縁や流れを信じている。
「人生の大きな決断は、基本的に風に身を任せています。直感に従うための準備はしっかりしておくけれど、その瞬間に右だと思ったら右に行くし、誰かに思い切り委ねることも大切にしています」
世間は満島を「明るい人」と呼ぶかもしれない。だが、彼の中にはポジティブやネガティブといった概念すら存在しない。いかなる時も固定されたアイデンティティーを持たず、ただそこにあるのだ。
「自分の中を常に正常でニュートラルな状態にしておく。そうすれば、誰かがこっちに行こうと引っ張ってくれた時に、すぐ一緒に行けるから。俳優だからこうしなきゃいけない、という枠も持ったことはないですね」
多様なジャンルで活躍し、変幻自在な顔を見せる満島のスタンスは、驚くほど軽やかで自由だ。あらゆる場所に溶け込むことが、彼の生きるエネルギーに直結している。
「動く児童館みたいに、自分がいる場所でみんなが心のままに盛り上がってくれたら最高。海にも山にも都会にもなじめる幅の広さが、自分の原動力になっているのかもしれないです」

徹底された礼儀がくれた「素直さ」
枠にとらわれない柔軟な姿からは想像もつかないが、満島の根底には幼い頃に培われた強固なルールが存在している。それは他者への敬意であり、社会を生き抜くための揺るぎない背骨だった。
「子どもの頃、礼儀作法や上下関係、人を敬うことの大切さを徹底的にたたき込まれました。最初はガチガチに縛られて早く抜け出したいと思っていたけれど、大人になるにつれて、幼少期から学んだことが自分の力になっているのを実感し、感謝の気持ちとともに、どんどん心が軽くなっています」
厳しい規律があるからこそ、満島は誰に対してもズルをせず、素直な心で向き合うことができる。その真っすぐな姿勢が、結果として最高のチームと出会う道筋を作ってきた。
「真心込めて素直に人と関わっていくと、素晴らしい人たちに出会える。自然とチームが出来上がり、自分がここにいる意味みたいなものがすごく明確になってくるんです。それはとても居心地がいい」
人と違うことが個性だともてはやされる風潮の中で、満島の見解は至ってシンプルだ。奇抜さを追い求めるのではなく、ただ己の真ん中に立ち続ける強さを説く。
「みんな違う環境で育っているんだから、比べる必要なんて全くない。派手なことやトゲトゲしいことだけが個性じゃなくて、自分の真ん中に立って、どこへでも行けることこそが、本当の個性だと思う」

答えを出さない勇気と委ねる強さ
本作の撮影で訪れた瀬戸内海の穏やかな海を見つめながら、彼は自分自身のこれまでの歩みと現在地を静かに確認していた。夜明けの空の下で感じたのは、一つの言葉ではくくれない複雑な色合いの感情だった。
「朝の海を一人で眺めていたとき、懐かしさや悲しさ、美しさ、喜びや悲しさが全て混ざり合ったような感覚になりました。今回の作品を通して、言葉にならないマーブル状の思いを改めて感じさせてもらったんです」
役者として何かを提示し、はっきりとした答えを残したいと願うのは表現者の本能だ。しかし今作において、満島はあえて「答えを出さない」という大胆なアプローチに挑んだ。
「答えを出せない状態をそのまま表現するのは本当に怖いこと。でも今回は、矢崎監督や脚本、そしてあの風景を完全に信頼して、ただそこにたたずんで何かを感じることに挑戦してみたんです」
見ている者にすべてを委ねるという選択。それは、揺るぎない自己への信頼と、周囲への深い感謝がなければ決して成し遂げられない境地だった。
「自分が崩れないように支えてくれる人たちがいて、役者としての土台ができてきたんじゃないかと感じています。新しい自分に出会えた気がしますね。この映画を見て皆さんが何を思うのか、本当に楽しみです」
人は誰しも、自分を守るために何かの枠に入りたがり、明確な答えを求めてしまう。しかし満島は、自らその枠を取り払い、行き場のない感情すらもフラットに受け入れる道を選んだ。冬馬という難役に挑み、答えを出さない勇気を見せた満島の姿は、不確実な現代を生きる私たちに「無理に白黒つけなくてもいい」という優しいメッセージを投げかけてくれる。
□満島真之介(みつしま・しんのすけ)1989年5月30日、沖縄県出身。自転車での日本一周などを経て、2010年に舞台『おそるべき親たち』で俳優デビュー。12年のNHK連続テレビ小説「梅ちゃん先生」への出演で注目を集め、同年の映画『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』で報知映画賞新人賞を受賞。以降も映画『キングダム』シリーズやNetflixシリーズ「全裸監督」など話題作に出演するほか、日本テレビ系「メシドラ 兼近&真之介のグルメドライブ」のMCなどバラエティーでも明るいキャラクターでお茶の間に親しまれ、多方面で活躍している。
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