移民、生活保護、マイナンバー…スウェーデン人が明かす“日本で暮らす本音” 炎上経験も「いい勉強」
その国の本質は、内からの視点ではなかなか気付けないもの。時に「義理も人情もない」と言われるこの時代、日本社会は外国人の目からどのように映っているのだろうか。プロの噺家(はなしか)として、日本人よりも深く日本の人情を知るスウェーデン人落語家・三遊亭好青年に、十数年の日本生活で感じた疑問や、母国スウェーデンとの違いを聞いた。

『笑点』でおなじみの三遊亭好楽に弟子入り、二つ目を務めるプロの落語家
その国の本質は、内からの視点ではなかなか気付けないもの。時に「義理も人情もない」と言われるこの時代、日本社会は外国人の目からどのように映っているのだろうか。プロの噺家(はなしか)として、日本人よりも深く日本の人情を知るスウェーデン人落語家・三遊亭好青年に、十数年の日本生活で感じた疑問や、母国スウェーデンとの違いを聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)
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三遊亭好青年、本名ニルソンビョルク・ヨハンさんは、大学時代に交換留学で来日。留学先では落語研究会に所属、30歳のとき、日本テレビ系『笑点』でおなじみの五代目圓楽一門会・三遊亭好楽に弟子入りした。現在は二つ目に昇格、日本語と英語、スウェーデン語の“トリリンガル落語”にも挑戦し、落語の魅力を世界に伝えている。
日本に来て十数年。今では軽妙な日本語の語り口で多くのファンを魅了しているが、来日当初は戸惑いの連続だったという。
「最初に驚いたのが時間の感覚。スウェーデンでは2~3分の遅刻は誰も気にしませんが、日本は約束の時間通りに来ることをすごく重視する。特にこの(落語の)世界では、15分前には到着しているのが当たり前。始まる時間にはすごく厳しいのに、終わる時間にはルーズなのも不思議でした」
ルーズな文化として例に挙げたのが、飲み会。師匠や一門での宴会の機会も多く「二次会、三次会、終電まで行くのが当たり前。乾杯文化も不思議でした。スウェーデンでは飲み物が来た人から順に飲み始めるし、途中で満足して帰る人もいる。日本は全員がそろって、まるで儀式のように乾杯や三本締めをしますよね。『とりあえずビール』とか、お酌をしたり……これは日本というより、落語界が昭和文化なだけかもしれませんが」と率直な思いを口にする。
伝統芸能は、とりわけ上下関係が根強く残る世界だ。30歳で入門した好青年だが、落語では1日でも早く入った人が先輩。40歳を過ぎた後輩に世話をされるのは、なかなか慣れるものではなかったという。
「スウェーデンには敬語表現もほとんどない。大人も子どもも平等で、お互いに尊重し合う文化。先生と子どもが対等に意見し合うこともあります。礼節を重んじるという日本文化は新鮮でした」
3年ほど前には日本人女性と結婚。夫婦や家庭の在り方についても、「人前でハグやキスをできないのが一番の不満ですよ(笑)」とジョークを交えて語る。
「日本では『日本の男性は家事をしない』という言説もありますが、スウェーデンでは『男女はすべてにおいて平等であるべき』『性差は極力あるべきではない』というのが主流の考え方。一方で、最近はトラッドワイフといって、女性が家に入るのが正しい、裕福で理想的な古き良き家庭の在り方という主張も増えています。国によって傾向はありますが、結局は人それぞれなのかなと」
外国人政策を巡る不満の声に、当事者として風当りの強さを感じることも…
さまざまな面で先進的と言われる北欧諸国だが、まったく問題がないわけでもない。特にデジタル政策については、やりすぎと感じる部分もあるという。
「何でもタブレットで、読み書きのできない子が増えている。完全なキャッシュレス社会で、銀行にも現金がないから強盗がない一方、適応できないお年寄りもたくさんいる。ただ、日本で賛否あるマイナンバーはあった方が断然いい。引っ越しや契約の度に、2回も3回も指名や住所を書かされるのは、煩わしいったらないでしょう。スウェーデンでは自分が生まれる前から、名前と生年月日+4桁のマイナンバーを入れるだけですべての手続きが完了します。正直、マイナンバーのニュースは『まだやってなかったんだ……』と感じましたね」
日本では長引く経済の停滞から、政治に対する不信感も根強い。近年は外国人政策に対する不満の声も多く、当事者として風当りの強さを感じることもある。
「不景気で真っ先に外国人に矛先が行くのは、日本に限らず世界的な潮流です。日本では外国人の生活保護受給が問題視されますが、スウェーデンでも、充実した福祉を目当てにEU各国から貧しい人が集まり、治安や財政が悪化するという主張があります。ただ、データを見るとそう大きく治安は変わってないんですよ。何でもかんでも移民のせいだと、プロパガンダに利用されている面もあると感じます。もちろん、郷に入っては郷に従えという考えは大切。私も外国人代表として、印象を悪くしないよう気を付けています」
悪目立ちしないよう気を配っているというが、今夏はちょっとした“炎上”に巻き込まれたことも……。SNS上で「日本に来てずっと思ってるんですけど、どうしてあんなに冷房使ってるの?」「スーパーや電車の中は冷房が寒すぎて風邪引きそう」と素朴な疑問を投げかけたところ、一部から「他所から来て文句言うな」「嫌なら出ていけ!」と思わぬ批判を受けた。
「『みんなは寒いと思いませんか?』と率直な思いを書き込んだだけなのに、『嫌なら帰れ!』とまで言われ、そこまでひどい失言かな? とびっくりしてしまって……。もちろん『日本人でも寒いよ』という声もたくさんありましたが、外国人が何を言っても批判したい人は一定数いるんだなと。寄席と違って、文字だけだとニュアンスが伝わらないこともある。些細(ささい)なことで誤解を生まないように、いい勉強になりましたね」
外国人ならではの視点と、時に不完全な人間らしさに向けられる落語家の眼差し。座布団の上でも日常でも、言葉の機微と向き合い続ける日々は続く。
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