上野凱、中3でジュノン準GP獲得から14年…1度は芝居を諦め五島列島に帰郷、再上京で見つけた“やりがい”
俳優の上野凱(28)が、公開中の映画『マッチモンド』(倉橋龍介監督)で不良チーム「マヨネーズ軍団」の宇田川喜之助を演じている。長崎・五島列島で育ち、中学2年時に母親が応募した「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」で準グランプリを受賞。高校から単身で上京するも、一度は島へ戻った。その後に再上京を決断し、再び俳優の道を志した。そんな彼の“芝居”との向き合い方を聞いた。

オーディションでつかんだ映画『マッチモンド』出演「自分の間違いが良い方に重なっていった」
俳優の上野凱(28)が、公開中の映画『マッチモンド』(倉橋龍介監督)で不良チーム「マヨネーズ軍団」の宇田川喜之助を演じている。長崎・五島列島で育ち、中学2年時に母親が応募した「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」で準グランプリを受賞。高校から単身で上京するも、一度は島へ戻った。その後に再上京を決断し、再び俳優の道を志した。そんな彼の“芝居”との向き合い方を聞いた。(取材・文=中村彰洋)
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今作の出演のきっかけはオーディションだった。しかし、それは上野が想定していたものとは異なるものだった。
「概要に目を通してはいたんですけど、『主演オーディション』といった大きな文字があったんです。『お、これは主演を狙っていかなきゃ』と意気込んで臨みました。でも、それは主演とメインキャストを決めるという企画で、それを理解していなかったのが逆に良かったのかもしれないです(笑)」
審査ではシャドーボクシングを披露し、手応えもあったが、決まったのはケンカがさほど強くないキャラクターだった。「“強く見せている弱いやつ”に見えていたのかもしれません。いろんな自分の間違いが良い方に重なっていったんだと思います」と笑う。
宇田川が所属するマヨネーズ軍団は、クセの強いキャラクターがそろっている。その中での在り方も強く意識した。「狂気的な部分とラフな部分の差がどうやって映るんだろうなと思っていたのですが、思っていたよりも自然にできていたと思っています」と手応えを口にする。
上野が芸能の世界に足を踏み入れたのは、五島列島でバスケットボール一筋の少年だった中学2年の時。母親が内緒で応募した「第25回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」がきっかけだった。その理由も「息子を芸能界に入れたいから」ではなく、「福岡旅行に行きたい」というものだった。
「1次審査に受かれば、福岡でオーディションだったので、それが目当てだったんです。母の中で1次審査は通るだろうと思っていたみたいです。突然、母から『1次通ったよ』と言われて驚きましたが、自分も旅行が好きだったので、『福岡行けるならいいか』ぐらいの感覚でした」
何一つ準備もしていなかった上野は、2次審査で周囲が自己PRを披露する中、名前だけを口にして控室に戻った。それでも通過し、そのまま東京での本戦へ進むと、準グランプリを受賞した。
「当時、楽しさは全くなかったです。『JUNON』の編集者の方にも、『一番やる気がないから目立った』と言われたくらいです。自分を表現するということが全く分からなかったんです」

高校進学を機に上京も…高3年で帰郷「いるべき存在じゃなかった」
高校進学とともに、所属が決まった事務所に入寮する形で上京を決断。2人の姉もバスケ強豪校へ進むため、高校進学時に島を出ていたこともあり、不安や迷いはなかった。
「自分はバスケがうまいわけではなかったので、推薦での上京は無理でした。『高校も五島で過ごすのか』と思っていたタイミングだったので、とにかく『ラッキー!』という感覚でした。芸能界に興味があるというよりも、島から出られるということが大きかったです」
進学したのは芸能コースのある高校。周囲は夢に向かって突き進む同級生ばかりだった。「自分がやりたい、やりたくないとかではなく、“やらなければいけないこと”なんだ、といった感覚はあったかもしれないです。島にいる家族も応援してくれていたので」と、当時は義務感で芝居に向き合っていた。
しかし、高校3年生になるタイミングで事務所を退所。同時に地元へと戻る道を選択した。「本気で芝居と向き合っている人たちの中にいるべき存在じゃなかったんだろうなという思いがありました」。
その後、島で過ごした高校卒業までの1年間が、上野の人生を大きく変化させていった。
「その期間で『役者をしたい』と初めて思いました。演技をすることが当たり前だった環境から、そうではない環境に変化したことが大きかったんだと思います。東京でのレッスンで、発声・ダンス・芝居をした時に、一番興味を持ったのが芝居だったんです。単純な興味でしたが、自分の意志で何かに興味を持つということが初めてだったと気付いたんです」
高校卒業後には、再び上京を決断。しかし、所属先のアテもなく、どうすればよいかすら分からない日々を過ごした。「最初に上京した時は、事務所にそもそも入っている状態だったので場所が用意されていたんです。何もない状態で上京して、どうすればいいのかを全然考えていませんでした」と苦笑いで振り返る。
半年ほどアルバイト生活を送る中、バイト先に客として来ていた、俳優の桜木健一との出会いが転機となった。役者を志していることを伝えると、桜木から「まずは芝居を学びなさい」と、桜木が所属する事務所の養成所を紹介された。
そこからの約4年間は、芝居と真っすぐに向き合った。高校時代の友人たちが活躍する姿に、刺激を受けながらも焦りはなかった。「そこに自分がいないのは当然だったんです。まだ芝居のいろはすらも知らない。とにかく追いつくために学ばなきゃいけないという思いでした」。
養成所での日々は、現在の上野の演技観に大きく影響を与えた。
「それまでは芝居に正解があると思っていたんです。でも、芝居には、個人個人のやり方や指針があって、それを共有して作り上げていくものだと気付くことができました。自分が学んだものがしっかりと積み上がっていくような感覚になりました」

気付けば芝居への思いが「大好き」へと変化「嫌いにはなりたくない」
そして、さまざまな縁も重なり、23歳の頃に現事務所・アソビシステムへの所属が決まった。
再上京から10年。ただの興味の対象だった芝居に、今では別の価値を見いだしている。家族でも友人でもない“他者”の気持ちを考えるという作業にやりがいを感じている。
「『この人は何を考えて、どういう人生を歩んで、これからどう生きていくのか』。こういった作業を、これからの人生で何回できるんだろうと思うことがあります。役という全く自分とは関係のない人物のことを考える。そういったことが人間力につながると思っています」
そんな上野にとっての指針は、他者ではなく、自分自身にある。
「周りに影響されることはあまりないです。小さい頃から、何に対しても自分が納得できるかどうかを大切にしています。オーディションは、一瞬一瞬に対応していく瞬発力が求められる場所で、それに対応できずに落ちた時はすごく悔しいです。でも、自分の100%を出し切れた時は落ち込まないです」
最初は義務感だった芝居が、今では心の底から「大好き」と言える存在になっていた。その根底には、幼少期に母からもらった言葉があった。
「自分は本当にうそがつけないタイプの人間なんです。でも、芝居は『よーい』の合図で、あたかも他人であるかのような言動をして、誰かに思いを届けることができる。人を救うためのうそみたいな感覚なんです。子どもの頃に『優しいうそもあるんだよ』と母親から言われたことがすごく記憶に残っていて、その感覚に近いのかもしれません。自分でしかいられないはずの世界で、自分ではない時間を過ごせる。そういった部分が魅力なのかもしれないです」
思い描く将来像は、再上京した当時から変わっていない。
「地元の小中学校に、たまに芸能人が来て、歌や話を披露してくれることがあったんです。自分も胸を張ってそこに立てる人間になりたいです。自分が学んできたこと、外の世界で感じたこと、そういったことを地元の子どもたちに伝えたいです。自分なんかが人の人生を変えられるなんて思ってはないけど、ちょっとだけでも誰かの歩幅に影響を与えられるような俳優になりたいです」
そのためには、これからもとにかくがむしゃらに芝居と向き合っていく。
「まだまだ頑張らなきゃなって思います。でも、自分が無理している感覚になるとつらくなってしまう。大好きな芝居を嫌いにはなりたくない。焦りだったり、嫉妬心のように、芝居を嫌いになってしまうかもしれない要素をとにかく省いていきたいです」
□上野凱(うえの・がい)1998年8月26日、長崎県五島列島出身。2012年「第25回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」で準グランプリを受賞。映画『あの娘は知らない』(22年)、『先生!口裂け女です!』(23年)、テレビ東京系ドラマ『クールドジ男子』(23年)、テレビ朝日系『大追跡~警視庁SSBC強行犯係~』(25年)などに出演。現在公開中の映画『マッチモンド』に宇田川喜之助役で出演中。
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