「俳優って何してるか分からない」 山田孝之が大型オーディションで伝えたい芝居の正体

俳優の山田孝之が、大型俳優オーディション番組『THE OPEN CALL -MAIN PARTNER 山田孝之-』で審査する側に立った。約1万4000人の応募者を前に、「なんでこの人たち活躍してないんだろう」と驚く一方、この企画で伝えたいことがある。「俳優って何してるか分からないじゃないですか」。俳優という仕事の正体を語った。

インタビューに応じた山田孝之【写真:増田美咲】
インタビューに応じた山田孝之【写真:増田美咲】

俳優オーディション番組『THE OPEN CALL』で審査に参加

 俳優の山田孝之が、大型俳優オーディション番組『THE OPEN CALL -MAIN PARTNER 山田孝之-』で審査する側に立った。約1万4000人の応募者を前に、「なんでこの人たち活躍してないんだろう」と驚く一方、この企画で伝えたいことがある。「俳優って何してるか分からないじゃないですか」。俳優という仕事の正体を語った。(取材・文=平辻哲也)


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「芝居が上手い人はいっぱいいる。『なんでこの人たち活躍してないんだろう』って本当不思議に思うぐらい。すごい芝居が上手い人いますよ」

 10月1日からLeminoで独占配信される同番組は、15歳以上なら性別、国籍、所属事務所、演技経験を問わない大型俳優オーディション。全国と海外11の国・地域から約1万4000人が応募し、山田はメインパートナーとして審査に参加している。

 1次、2次、3次と審査を進めてきた。応募者は私服で会場に入り、芝居をする。それでも、優れた俳優は目の前の空間を一変させるという。

「こういう部屋で私服で来てお芝居するわけじゃないですか。でもそこからぐっと引き込まれて背景が見えてきて、衣装まで見えてくるくらい引き込んで。芝居が終わってもその後の三つ先くらいまで想像が見えてくる。『うわ、すげえ』みたいな」

 審査で重視するのは、単純な演技のうまさだけではない。

「やはりその役に見えるかどうかです。その人の背景、今までの過去だったりとか設定を自分なりに作ってくるわけじゃないですか。ここからこの人はこのシーンが終わった後どうやって生きていくんだろうか。この人の人生がどれくらい見えてくるか。そこはかなり大きいですね」

 今回の企画は、俳優の阿部進之介の提案から始まった。山田は「それは確かにやった方がいいというか、やる意味があるね」と共鳴した。

「ほとんどの人が俳優って何してるか分からないじゃないですか。だから『俳優ってこういうことやってるんですよ』っていうのを、知ってもらうのも大事かなと思って」

 芝居とは何か。役作りでは何を考え、何をしているのか。その過程を見せることに意味があると考えた。

「俳優って何なのか、芝居って何なのか、役作りって何なのかみたいな、それをする上で何をしてるのか、何を思ってるのかみたいなことが見えていくと面白いかなと思いました」

審査を通して刺激を受けているという【写真:増田美咲】
審査を通して刺激を受けているという【写真:増田美咲】

「芝居」に興味を持つ人が生まれることに期待

 山田と阿部は映画『デイアンドナイト』を製作し、その後も短編映画プロジェクト『MIRRORLIAR FILMS』を続けてきた。そこで掲げてきたのが、新たなクリエイターの発掘だった。その延長線上で長編映画に挑戦する話が持ち上がり、俳優に特化したオーディションへと発展した。

「長編をせっかく作るんだったらしっかりオーディションをやっていこうと。番組にして、俳優っていうもの、映画作りっていうものが見えてくるような番組にした方がよりいいじゃないかと仲間たちと考えました」

 今回は、先に脚本と配役を固めるのではなく、候補者の個性や芝居を見ながら脚本を紡ぎ、オリジナル映画につなげていく。

「全部オーディションで、その人は売れてる・売れてないも関係ないですし、経歴も。しかも脚本がないからこの役にあった人っていう選び方でもない。もう純粋に芝居がいいかどうか」

 歌やダンスのオーディション番組は珍しくない。しかし、決められた完成形がない中で、芝居だけを見る。

「『じゃあ何がいいのか悪いのか』っていうことも可視化して言語化して番組にしてるから、『あ、そういう仕事なのね』っていうのは伝わると思います」

 山田自身も審査を通して刺激を受けている。

「見てて『うわ、すげえな。俳優おもろいな』と思ってると、やっぱり自分も俳優なので、それが結局ワクワクするからモチベーションに繋がっていくっていうのはあります」

 約30年にわたって俳優を続けてきた。それでも、他人の芝居を見て改めて「俳優おもろいな」と思える。約10年前、『デイアンドナイト』を初めてプロデュースした時にも同じ感覚があった。

「皆さんの芝居をずっと現場で見てて『俳優ってすげえな』みたいな。『あ、なんかもうちょっと自信持って俺俳優ですって言っていこうかな』って思いました。それは多分皆さんにもそう思ってほしいから」

 番組にはゲストパートナーとして浅野忠信、髙石あかり、ムロツヨシも参加。「俳優とは何だ?」という問いに、浅野は「変な人」、ムロは「嘘ばかり」、髙石は「ゴールはない」と表現した。

 山田はムロの言葉について、こう受け止める。

「全体引いてみたら嘘なのに、虚構の世界で、それを事実にしてしまう。自分の中で自分は役になるっていうのはいかに自分を消すか・自分を騙すかって最後になってくるんです」

 髙石の「ゴールはない」にも納得する。

「優勝とかないですから。得点王とかもない。映画祭はありますね。でもそれ1回獲ったらもうレジェンドかって言ったらそんなことも全くないです」

 では、山田自身にとって「俳優」とは何なのか。

「いかに自分を消すか。記憶も含めて、経験とかも含めて消すかっていうこともあるし。都度変わる部分でもあるけど、『俳優って何だ?』って僕からすると、『じゃあ人間って何?』って質問返しになっちゃいます」

 番組を見た俳優が何かに気付き、芝居に向き合いやすくなること。それまで興味がなかった人が「芝居をやってみたい」と思うことにも期待している。

「番組に関しては、芝居する俳優たちが何をやってるのかっていうのが見えたらいいなとは思っています。今まで興味なかったけど、これ見て『ちょっと芝居やってみたいな』って人が出てくるのも期待してます」

 約1万4000人が集まったオーディションで、山田が見つめているのは、誰が勝ち残るかだけではない。「俳優って何してるか分からないじゃないですか」から始まった今回の試み。その答えは、参加者たちが芝居と向き合う姿の中から見えてきそうだ。

□山田孝之(やまだ・たかゆき)1983年10月20日生まれ、鹿児島県出身。99年に俳優デビュー。2003年の『WATER BOYS』でテレビドラマ初主演、05年の『電車男』で映画初主演を務める。主な出演作に『闇金ウシジマくん』シリーズ、『全裸監督』、NHK大河ドラマ『どうする家康』、映画『クローズZERO』『十一人の賊軍』など。映画『正体』で第48回日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞。『MIRRORLIAR FILMS』をはじめ、監督、プロデュースなど活動は多岐にわたる。

【番組情報】
『THE OPEN CALL -MAIN PARTNER 山田孝之-』
10月1日から定額制映像配信サービス「Lemino」で独占配信。毎週木曜更新。第1話は無料、第2話以降はLeminoプレミアムで配信される。15歳以上であれば性別、国籍、所属事務所、演技経験を問わないオープンコール形式で、全国11の国・地域および海外から約1万4000人が応募。選ばれた俳優が出演するオリジナル映画は2028年に全国劇場公開予定。

ヘアメイク:南辻光宏
スタイリスト:飯田恵理子(CORAZON)


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衣装:シャツ/3万5200円/Ground Y(グラウンド ワイ)

<お問い合わせ先>
Ground Y(グラウンド ワイ)
ヨウジヤマモト プレスルーム/TEL 03-5463-1500

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