「ネットとAVは一生消えない」出演作巡る訴訟でメーカーと和解、大島薫が明かす“配信時代”の誤算
2023年、過去の出演作の販売・配信停止を求め、AVメーカーを提訴した元祖“男の娘”AV女優の大島薫さん。今年2月には和解が成立、過去作の販売停止や海賊版の違法アップロードに対する削除要請が認められた。引退から月日がたった今、なぜ訴訟に至ったのか。一連の裁判を起こした経緯と真意を聞いた。

過去の出演作の販売・配信停止を求めメーカーを提訴、今年2月に和解が成立
2023年、過去の出演作の販売・配信停止を求め、AVメーカーを提訴した元祖“男の娘”AV女優の大島薫さん。今年2月には和解が成立、過去作の販売停止や海賊版の違法アップロードに対する削除要請が認められた。引退から月日がたった今、なぜ訴訟に至ったのか。一連の裁判を起こした経緯と真意を聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)
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性転換手術やホルモン治療を行わず、純粋な男性として、ゲイビデオからAV業界に参入した大島さん。女装男子を示す“男の娘”をコンセプトに、多数の一般AVに出演し、大きな話題を呼んだ。
15年にAV業界を引退。作家としてのセカンドキャリアを歩み始めたが、引退から8年あまりが過ぎたタイミングで、なぜ訴訟に至ったのか。
「AV女優だった過去を否定したい気持ちはありませんが、引退して作家やタレントとして活動を始めても、全年齢向けの著書を18禁扱いされたり、『やっぱりAV女優はちょっと……』と直前で出演を断られたり、さまざまな偏見にさらされました。それ自体は仕方のない部分もある。時がたてば新しい子が出てきていずれ忘れられるだろうと思っていたのですが、問題はネットの配信視聴があったことと、メーカー側が何度も過去作をオムニバスとして再販したこと。引退から何年たっても『新作が出ているから現役女優だろう』という見られ方をする。まさか、自分の裸にここまでの価値があるとは思わなかった」
AV撮影で嫌な思いをした経験はなく、現役時代は業界に対し悪いイメージは抱いていなかったが、引退後に一方的に販売されるオムニバス作品には辟易とさせられたと振り返る。
「文句を言う窓口もない。さらに、自分が混同されるのを嫌っていたニューハーフもの作品として特集されることもあって……。こうなるとタレントイメージにも影響してくる。極め付きがあの週刊誌報道でした」
17年、週刊誌で大手実業家との密会を報じられると、販売作品にはそれを揶揄(やゆ)したあおり文句が多数飛び交った。話題になれば何をしてもいいという業界の姿勢に、強い憤りの思いが募っていったという。

AV新法は「必要だった」 業界内の自主規制では限界も…
20年には、当時存在していた業界団体「AV人権倫理機構」の枠組みを利用し、全作品の販売停止を申請。多くのメーカーが申請を受け入れたものの、一部は申請に応じず、販売を続けた。
「AV人権倫理機構はあくまでも業界内の自主規制団体で、罰則も強制力もありません。助けてほしくて頼ったのに、『やっぱりできませんでした』で終わり。業界内では『AV新法なんていらない』『適性AVはクリーン』という声も多かったですが、自主規制に従わないメーカーがいる以上、ああいった法律は必要だったと思います」
23年11月、前年に施行されたAV出演被害防止・救済法(AV新法)に基づき、大島さんはメーカー側に映像データの販売差し止めや1320万円の損害賠償などを求め、東京地裁に提訴。今年2月には、今後の製造・販売・譲渡を行わず、すでに流通している作品の回収と、解決金の支払いを命じる判決を受け、和解が成立した。
「ネットとAVは一生消えない。頭では分かっていても、ここまでとは思わなかった。ネットにあふれる海賊版もありますが、今回の和解では、自分も権利者の1人として、海賊版に削除要請ができるようになりました。また、再度メーカー側から流出が起きた場合には、罰則を設ける規定も盛り込んであります。出演者である自分も、作品の権利者であることが認められたんです」
大島さんがAVやその前身でゲイビデオに出演していた時代は、作品視聴はVHS(ビデオ)が主流。ビデオテープは時間がたてばいずれ過去作は製造されなくなるが、今日のように、動画配信でいつでも再編集ができる時代は、映像が永遠に権利者の手元に残り、作品が再生産され続ける状況となっている。
AV新法を巡っては、現場の混乱や業務負担の増大から、規制緩和に向けた改正案も議論されているが、「ネットとAVは一生消えない」と大島さんが口にするように、時代の流れとともに映像が残り続けることのリスクは高まっている。制作側と出演者、両者の権利のバランスをいかに守っていくのか。さらなる議論が求められている。
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