【プロレスこの一年 ♯18】崖っぷちアイドル愛川ゆず季の衝撃プロレスデビュー、杉浦貴がNOAHをけん引 2010年のプロレス

新日本1・4東京Dで後藤洋央紀を退けGHCヘビー級王座を防衛した杉浦貴【写真:平工 幸雄】
新日本1・4東京Dで後藤洋央紀を退けGHCヘビー級王座を防衛した杉浦貴【写真:平工 幸雄】

杉浦貴が、GHCヘビー級王座の最多防衛記録を更新

 新日本では恒例の1・4東京ドームをNOAH勢が席捲。新日本マットではじめてGHCヘビー級王座戦が行われ、杉浦貴が新日本の後藤洋央紀を破り防衛に成功。丸藤正道がタイガーマスクからIWGPジュニアヘビー級王座を奪い、3大メジャー(全日本、新日本、NOAH)のジュニア王座を史上初めて総なめする快挙を達成した。また、同大会では裕次郎(現・高橋裕二郎)&内藤哲也の「NO LIMIT」がメキシコから凱旋、3WAYマッチを制してIWGPタッグ王座を獲得した。

 敵地でGHC王座を誇示した杉浦は、この年のNOAHを牽引。7・10有明コロシアムは実に7年ぶりとなる同所での開催で、“プロレス界の帝王”高山善廣を相手に王座防衛に成功した。メインの試合後には高山がバックステージに現われ、奪取以来肩にかけられていたベルトを王者の腰に巻いてやった。まさしくそれは、高山から帝王学を伝授される儀式のような光景でもあった。杉浦は国内だけではなく海外でもGHC王座を披露。10月1日にはメキシコAAAで大型ルチャドールのチェスマンを相手に防衛。この年、同王座の最多防衛記録を更新し、チャンピオンとしてこのままベルトを守り抜いたのだった。

 全日本では武藤敬司&船木誠勝組が鈴木みのる&太陽ケア組から世界タッグ王座を奪取し10年が幕開け。その後、武藤は右膝手術により欠場となってしまったが、9月に復帰すると、世界ジュニア王座への挑戦をぶち上げるサプライズ発言。現実に武藤は減量に成功し、10・24横浜で同王座最多防衛記録を樹立したカズ・ハヤシのベルトに挑戦した。惜しくも王座奪取はならなかったが、旺盛なチャレンジ精神はマット界に大きな刺激と話題をもたらした。この年、三冠ヘビー級王座は小島から浜亮太、鈴木、諏訪魔へと推移した。

 4月の「チャンピオン・カーニバル」では鈴木が船木からのシングル初勝利をものにすると同時に、09年からの連覇を達成。しかし同月末には小島聡が5月いっぱいでの退団を発表、フリーとなった。その小島は古巣の新日本に戦場を移し、4年ぶりに「G1クライマックス」にエントリー。しかも8・15両国での最終戦で棚橋弘至を破り優勝。20回目の開催にして初めてとなる所属外選手の優勝だった。勢いに乗る小島は8・22有明でNOAH初参戦、モハメド ヨネとのシングルマッチに勝利した。同大会では金本浩二&タイガーマスク組が石森太二&リッキー・マルビン組を破り、GHCジュニアタッグ王者に就いている。

 ジュニアと言えば、この年はプリンス・デヴィットが大活躍。6月の「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア」で初優勝を飾ると、6・19大阪でNOAHの丸藤からIWGPジュニアヘビー級王座を団体に奪回。田口隆祐との「Apollo55」でもジュニア戦線を沸かせてみせた。この2人を止めたのが、DDTの“ゴールデンラヴァーズ”飯伏幸太&ケニー・オメガ組である。飯伏&ケニーは、小島が初戴冠の真壁刀義を破り5年半ぶりにIWGPヘビー級王座奪取に成功した10・11両国で田口&デヴィットからIWGPジュニアタッグ王座を奪う快挙。両者が新日本に上がり続けるきっかけになったと言ってもいいだろう。

 そして、新日本では年末に事件が起きた。11年の1・4東京ドームに凱旋が決まっている岡田かずちか(現オカダ・カズチカ)が12・23後楽園に乱入。タッグで対戦する高山にジャーマンスープレックスを見舞い宣戦布告してみせたのである。メキシコでデビューした岡田はこの年、アメリカTNAでの海外修行が決定、年頭の1・31後楽園で棚橋と壮行試合を行っていた。それ以来の日本。この時はまだ、“カネの雨”は降っていなかった――。

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