市川中車、60歳で父・三代目猿之助の当たり役に初挑戦「父への尊敬の念を抱かずにはいられない」

歌舞伎俳優の市川中車と市川團子が、東京・新宿区のTHEATER MILANO-Zaで3日から上演されている歌舞伎町大歌舞伎『三代目猿之助四十八撰の内 獨道中五十三驛(ひとりたびごじゅうさんつぎ)』の初日前会見で意気込みを語った。

会見で意気込みを語った市川團子(左)と市川中車【写真:ENCOUNT編集部】
会見で意気込みを語った市川團子(左)と市川中車【写真:ENCOUNT編集部】

大学卒業の市川團子は歌舞伎業に専念「仕事に突き進みクオリティーを上げる」

 歌舞伎俳優の市川中車と市川團子が、東京・新宿区のTHEATER MILANO-Zaで3日から上演されている歌舞伎町大歌舞伎『三代目猿之助四十八撰の内 獨道中五十三驛(ひとりたびごじゅうさんつぎ)』の初日前会見で意気込みを語った。

『東海道四谷怪談』などで知られる四世鶴屋南北が手がけた同作は、文政10年(1827年)に江戸河原崎座で初演された。京都を起点に江戸を目指しながら五十三次の宿場で物語が展開され、道中で出会う人々を早替わりで演じる。長らく上映が途絶えていたところ、昭和56年(1981年)に三代目市川猿之助(二世市川猿翁)が歌舞伎座で復活上演させた。澤瀉屋の中でも特に人気が高い作品でこれまでに12回再演され、三代目猿之助が2010年に撰した市川猿之助家のお家芸『三代猿之助四十八撰』のひとつにも数えられている。

 中車は十二単をまとって宙を飛ぶ猫の怪を初役で務め、THEATER MILANO-Zaで初の宙乗りを行う。團子は丁稚の長吉や信濃屋娘のお半、弁天小僧菊之助など13役早替わりに挑む。さらに今回は、古典歌舞伎を人気声優が語り演じる松竹のオリジナル朗読劇『こえかぶ 朗読で楽しむ歌舞伎』とコラボレーション。置鮎龍太郎や山口勝平、関智一、櫻井孝宏ら第一線で活躍する17人の人気声優が日替わりで出演し、老若男女問わず道中に登場する13役を声で演じ分ける。

 猫の怪の衣装で登場した中車は、「父(三代目猿之助)が1981年、42歳の時に初演しました。そして最後に演じたのが1997年の57歳の時。42歳から57歳まで、僕の役も(團子の役も)両方全部やったんです。さらに『こえかぶ』の方々のお役も全部父がやっていました」と振り返り、「今、時を経て、僕はこの一役ですけれど、これだけでも本当に大変。父が42歳から57歳まで一人でずっとやっていたということに対して、改めて尊敬の念を抱かずにはいられません」と敬意を表した。「僕自身も60歳になりまして、父が57で“引退”した役を60歳で、しかも初役でやる。頑張って自分に鞭打って、一生懸命やっていきたい」と意気込んだ。

 今回は、THEATER MILANO-Zaで初の宙乗り。中車は「高さが12メートルあるらしくて。歌舞伎座が8メートル半なので、歌舞伎座よりも高いです。無我夢中です」と語った。

 13役早替わりに挑む團子は、「劇場で初めて踊らせてもらって思ったのは、お客さまとの距離が近いということ。早替りは、姿は変わりますが、それよりも大事なことは自分の性根(しょうね)。『役の雰囲気が変わる』ということが大事なので、そういう意味では、近くで見ていただけるので役の雰囲気がより伝わりやすいのかな」と分析。「この作品は『三代目猿之助四十八撰』の中でも人気で、13役早替りは特に見どころ。子どもの頃から純粋にかっこいいなと思って見ていた作品ですので、初心を忘れずに精一杯勤められたら」と語った。

 また、とんかつ好きで有名な團子は「早速昨日、この地(新宿)のとんかつを食べました。おいしかったです!」と新宿のとんかつ店をチェックしたと報告。すかさず中車が「僕は外に出られない。もう60ですから……。60が歩く感じではない、若者の街ですから」と笑いを誘った。團子はこの春大学を卒業し、歌舞伎俳優が専業に。生活の変化について聞かれると、「大学に行っていた時間がなくなるというのが、意外と自分の中では心の変化があって。大学にいる時に強制的に普段の自分に戻る時間があったんだなと感じました。授業と両立して舞台をさせていただいていたので、大学に行っている時は気づかなかったけど、後になって『あの時間が自分の中で支えになっていた』と気づきました」と振り返った。

「その分、時間が空いたということで、『この時間はしっかり仕事に突き進んでクオリティーを上げなきゃ!』と、日々思っております」と気合いを入れた。

※澤瀉屋の「瀉」の正式表記のつくりは“わかんむり”

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