『鬼レンチャン』達成のKAY-I、貿易事務から再生2億回のアーティストに「誰かの人生を変えられる人になれたら」

シンガー・ソングライターのKAY-I(ケイアイ)が、オリジナル楽曲『他の誰かじゃない、ただ君を愛したい』を3月にリリースした。3人組グループ・ROYALcomfort(ロイヤルコンフォート)のボーカルとして活動し、コロナ禍で活動を制限された2021年から洋楽をカバーした「歌ってみた動画」を公開。23年にはフジテレビ系『千鳥の鬼レンチャン』で、楽曲のサビをカラオケで音程を外すことなく10曲連続で歌いきる“鬼レンチャン”を達成した。SNSの総フォロワー数は100万人超。ENCOUNTはそんなKAY-Iをインタビューし、これまでの歩みや目指すアーティスト像を聞いた。

自身の歩みと目標を語ったKAY-I【写真:増田美咲】
自身の歩みと目標を語ったKAY-I【写真:増田美咲】

コロナ禍の2021年から「歌ってみた動画」公開

 シンガー・ソングライターのKAY-I(ケイアイ)が、オリジナル楽曲『他の誰かじゃない、ただ君を愛したい』を3月にリリースした。3人組グループ・ROYALcomfort(ロイヤルコンフォート)のボーカルとして活動し、コロナ禍で活動を制限された2021年から洋楽をカバーした「歌ってみた動画」を公開。23年にはフジテレビ系『千鳥の鬼レンチャン』で、楽曲のサビをカラオケで音程を外すことなく10曲連続で歌いきる“鬼レンチャン”を達成した。SNSの総フォロワー数は100万人超。ENCOUNTはそんなKAY-Iをインタビューし、これまでの歩みや目指すアーティスト像を聞いた。(取材・文=コティマム)。

 東京・目黒川沿いのオフィス。KAY-Iは桜色のシャツ姿で入ってきた。スラリと伸びる手足と鍛えあげられたボディーは、アスリートかと思わせる。記者の夫が「歌ってみた動画」のヘビーリスナーであることを伝えると、「えっ! こんなリアルに聴いてくれている人がいるなんてうれしいです。ありがとうございます」とさわやかな笑顔を見せ、何度も頭を下げた。

――「歌ってみた動画」では、バック・ストリート・ボーイズ、マルーン5、エド・シーラン、ブルーノ・マーズ、ジャミロクワイなど幅広い洋楽を中心にカバーされています。幼少期から音楽の道を目指していたのですか。

「興味はずっとありましたね。父親が音楽好きで、家でレコードを流していたんです。そこから洋楽が流れてきて好きになりました。小学生の頃から『歌ったら楽しいな』という思いはありましたが、実は人前に出るのはあんまり好きじゃなかったんです」

――意外です。

「部屋で歌って、それをテープレコーダーに録音して聴いていました。自分の歌を録音して聴いて、『もうちょっとこうしたい』と修正する作業が小さい頃から好きでした」

――当時から「歌ってみた」を実践していたのですね。どんな曲を歌っていたのですか。

「アメリカのコーラスグループのボーイズ・II・メンをめっちゃ聴いて歌っていました」

――ボーイズ・II・メンを聴く小学生は珍しい気がします。

「めっちゃレアですよね。父親が聴いていて、彼らのアルバムの中でも『Evolution』が一番好きで、『A Song for Mama』をすごく歌っていました」

――ヒットアルバムではなく『Evolution』を選ぶあたりが渋いです。

「ですよね(笑)。『こういうの好きやな』と思って。僕は京都の宇治出身なのですが、当時はYouTubeもないので、栄えている京都市内まで行ってCDを買っていました」

――音楽系の習いごとやレッスンはしていたのでしょうか。

「していないです。ピアノはちょっとだけ通いましたが、すぐに辞めちゃいました」

彫りの深い顔立ちでハーフにも間違われるも、「生粋の京都人」のKAY-I【写真:増田美咲】
彫りの深い顔立ちでハーフにも間違われるも、「生粋の京都人」のKAY-I【写真:増田美咲】

大学時代に気づいた「人より歌が上手い」

――人前で歌うようになったきっかけは。

「ずっと心の奥底に『いつか人前で歌ってみたい』という思いはありました。でも、人前に出るタイプじゃなかったので、カラオケに行くのも恥ずかしかったんです。大学時代に友達に誘われて初めて行って、その時に初めて人前で歌いました。そこで周りから『上手い』と言われて、これまで一人で歌い込んできたから『人よりは上手いんやな』と自覚した感じです」

――大学時代にやっと自分の歌唱力に気づいたと。

「そうですね。それまで洋楽ばかり聴いていたから日本の歌も知らなかったんですけど、この頃から『日本の曲もいいな』と思って聴くようになりました。それと小学時代からのサッカー友達とライブイベントにはよく行っていたんです。その友達からも大学に入って『歌が上手いな』と言われて、『俺らもライブやろう』と音楽活動をスタートしました。そのメンバーが今のROYALcomfortの2人です。『やろう!』と決めてから、それぞれ音楽を勉強し始めました」

――未経験ながらグループを結成したのですね。

「このバンドでやっていきたいと思いつつも、大学を卒業して一度、みんな会社員として働いています。僕は精密機器メーカーで、海外に製品を輸出する部署で貿易事務をしていました。でも、2012、13年頃にインディーズでCDを作ったんです。その時に3人で、『仕事を辞めようか』と話し合いました。仕事もバンド活動もどっちも中途半端になると思って。会社は人に恵まれて楽しかったですが、『歌だけに絞ろう。食べていけなくなったらアルバイトしよう』という覚悟でした」

――ROYALcomfortの活動中にコロナ禍がありました。そこがKAY-Iさんのソロ活動の起点になっています。

「コロナ禍でバンドのライブができなくなって、SNSでボーカリストとして歌い出したのがきっかけです。そこからグループのことも知ってもらえるようになりました」

――洋楽もあれば、ちあきなおみさんの『喝采』など昭和歌謡もカバーされていて幅広いです。

「一番好きなのはコーラスグループです。もともとは、ボーイズ・II・メンのような人の声が持つパワーやハーモニーに魅力を感じてスタートしました。でも、ソロではハーモニーはできない。声の持つ力や、日本語の曲を聴く中で、『言葉でこんなに感情が動かされるんだ』というところに興味を持ちました」

――これまで何曲くらいカバーしていますか。

「数えたことはないですが、リリースしているものからライブ配信で歌っているものも含めたら、1000曲はいっていると思います。『約1000曲』で(笑)」

――洋楽カバーでは英語も流ちょうで、顔立ちもエキゾチックです。海外にルーツがあるのでしょうか。

「『ハーフですか?』と結構聞かれるのですが、生粋の京都人です(笑)。高校の時に海外に1か月くらい行ったことはありますが、英語はあいさつ程度。ペラペラではないので英語で一気に話しかけられたら、全部は理解できないです。でも、耳で聴いたままを再現するのは得意なので、英語曲も歌えるんだと思います」

――動画を見ていると、英語が得意な人に見えます。

「実は海外まで届いた動画もあって、インドネシアの方が僕のことをインドネシア人だと思ってコメントをくれたこともあります(笑)。コメントを翻訳してみたら、『あなたはインドネシアの誇りだ』と書かれていて、『俺、日本人なんやけどな』って思いました(笑)」

――カバーの選曲はどのように決めているのですか。

「自分で選ぶのとコメントで『これを歌ってください』とリクエストをいただくので、その中から自分の声に合いそうなものを選んでいます。あとは『これは歌われへんやろ』という曲を歌って、驚かせたい気持ちもあります。『これ、日本人が歌ってるんや』『日本語の曲もいいな』と思ってもらいたい。最初は、洋楽を歌っている男性があまりいなかったので、『何か引っかかればいいな』と思って始めましたけど、今は日本の曲も聴いてほしいと思っています」

――オリジナル曲『他の誰かじゃない、ただ君を愛したい』は、90年代王道のJ-POPサウンド。DEENやWANDS、FIELD OF VIEWを彷彿とさせます。

「今回の曲は全部日本語。洋楽は雰囲気で伝わるじゃないですか。意味が分からなくても『かっこいいな』と思えたり。でも、年齢を重ねて日本語の持つパワーや僕の歌声も含めて、『歌詞カードを見なくても歌詞が入ってくる』ということをやりたくて。分かりやすいメロディーと届けやすい言葉を意識したら、自然とそうなっていきました」

「歌ってみた動画」から広がったSNSの総フォロワー数は100万人超。さらに知名度アップを目指すKAY-I【写真:増田美咲】
「歌ってみた動画」から広がったSNSの総フォロワー数は100万人超。さらに知名度アップを目指すKAY-I【写真:増田美咲】

レコーディングで「録り直し」のこだわり

――こだわった点は。

「最近はボーカルのレコーディングをした後にタイミング、ピッチ(音程)をしっかり直すのが主流なのですが、この楽曲に関してはそれを行わず、OKテイクが出るまで何度も録り直しました。また、『歌詞を見ないでも歌詞が分かるメロディーと歌詞』を意識して作り込みました。僕の声に合う楽曲を作る中で、聴いてきた大好きなJ-POPに近づいていきました。また懐かしいだけではなく、今の時代に合わせるべく、フランス在住のプロデューサーでミキシングエンジニアのチャーリー倉田さんにミキシング作業を依頼しました。サウンド全体は懐かしいJ-POPですが、全体的なまとまりはインターナショナル基準になるように試行錯誤しました」

――最後に、今後はどんなアーティストを目指しますか。

「カバーではSNSを通じて知ってもらえて、『歌声は聴いたことある』という方が少しずつ増えてきてうれしいです。次は自分の曲でその人の気持ちを動かして、『この曲、この人の歌やったんや』というところまで行きたい。グループはグループ、ソロはソロで、オリジナルを人に届けるフェーズを目指します。『KAY-Iの曲を聴いて人生が変わった』と言われるような誰かの人生を変えられる人になりたいです」

□KAY-I(ケイアイ) 1984年9月、京都府生まれ。2013年に3人組グループ・ROYALcomfortとして活動スタート。コロナ禍の21年から洋楽を中心としたカバー曲の「歌ってみた動画」をSNSでアップしたところ、約1年半で総再生数2億回を突破。23年にフジテレビ系『千鳥の鬼レンチャン』で、“鬼レンチャン”を達成。現在のSNS総フォロワーは100万人超。ドラマ主題歌や映画劇中歌の制作も手掛けている。

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