藤原季節「暗闇でろうそく生活」の過去 “生き急いでいた”理由にはスーパースターたちの存在
俳優の藤原季節が、映画『幕末ヒポクラテスたち』(5月8日公開、緒方明監督)に出演する。幕末の京都の村を舞台に、人々を救おうと奮闘する医者たちを描いた医療時代劇。藤原は主要キャストの一人、気性の荒い青年・新左を演じた。やんちゃながらも愛嬌のあるキャラクターで、役作りには日本を代表する名優の演技を参考にしたという。公開前に本作や自身の俳優人生について話を聞いた。

時代劇好きを公言
俳優の藤原季節が、映画『幕末ヒポクラテスたち』(5月8日公開、緒方明監督)に出演する。幕末の京都の村を舞台に、人々を救おうと奮闘する医者たちを描いた医療時代劇。藤原は主要キャストの一人、気性の荒い青年・新左を演じた。やんちゃながらも愛嬌のあるキャラクターで、役作りには日本を代表する名優の演技を参考にしたという。公開前に本作や自身の俳優人生について話を聞いた。(取材・文=水谷賀奈子)
作品は、映画『ふんどし医者』(1960年)が原案。2022年に他界した映画監督・大森一樹氏の最後の企画で、緒方監督が大森監督の遺志を引き継いだ。現代医学の夜明け前、身分などの差を問わず、命に向き合った医師たちの奮闘を描く医療時代劇だ。佐々木蔵之介が主人公の蘭方医・大倉太吉を演じる。
藤原は前回のインタビューで「幼少期、時代劇好きをきっかけに剣道を始めた」と、時代劇好きを公言していただけに、「僕が大好きな高倉健さんも活躍された、歴史ある京都の東映太秦映画村での撮影は、うれしかったですね。しかもこの物語のキーパーソンとなる新左役を演じられて光栄でした」とまずは感無量の心境を打ち明けた。
藤原が今回挑む新左は、喧嘩っ早くて博打好きな一方で妹思いというキャラクター。ある日、瀕死の重傷を負ったところを、蘭方医の太吉(佐々木)に救われるという展開だ。
「問題児で不良ですよね(笑)。でも、愛嬌があります。『そういう演技もされる俳優さんって誰だったっけ』と考えたとき、70年代の水谷豊さんとか沢田研二さんが思い浮かびました。人間の弱さや愛嬌みたいなものを兼ね備え、人間臭さも表現される。役作りとして、先輩方を参考にさせていただきました」
また新左は、太吉による腎臓摘出手術を受けたことをきっかけに「人の体のことを知りたくなった」と医学を学び始めるが、自身との共通点も見つけた。
「思い込みが激しいところは似ています。新左の『俺は医者になるんだ』と思った時の爆発力はすごいですよ。向こう見ずというか。20歳ぐらいの僕がまさにそうでした」
そう明かすと、自らの“青春”を回顧し始めた。藤原は大学進学を機に地元の北海道から上京し、「家族と離れ、一人で出てくるのはしんどかったし、人生で一番大きな出来事でした。でも、地元とか人間関係、自分のことを知っている人たちに囲まれた生活から抜け出したかった」と当時を振り返った。そして演劇と出会い、没頭したという。
「『俺は役者になる! なんで、みんなバイトしてるんだ。そんな暇、俺にはないんだ』と自らに言い聞かせ奮い立っていましたね。ただもう目も当てられないような生活で……。お金を借りては小劇場の芝居に出ていたので、電気も止められて、真っ暗闇でろうそくを立てて生活をしていました。まさに新左です。当時、結局は取り返しがつかなくなって、アルバイトを始めるんですけど(苦笑)」
夢を胸に真っすぐに突き進んだ過去。今では「若気の至りだった」と省みる。
「経験値がないからこそ『俺にもできる』と思っちゃったんです。当時の自分に何を言っても聞かないと思いますけど、『焦るな』と言われたら『馬鹿か、お前。焦らなくてどうする。俺の人生は短けぇんだよ』って。そんな奴と喋りたくないですよね(笑)」
なぜそこまで“生き急いで”いたのか。そこには、憧れにも似た強い思い込みがあった。
「米俳優のジェームズ・ディーンは24歳で、リヴァー・フェニックスは23歳で、歌手の尾崎豊は26歳で亡くなりました。『俺も超大スターになって、あと数年で人生が終わるんだろうな』と勝手に思っていました」
その考えが「間違っている」と気付いた瞬間を、今も鮮明に覚えている。
「忘れもしない、24歳の誕生日を迎えた時でした。自主制作映画『ケンとカズ』(2015年)のキャストとお酒を飲んでいて、0時を過ぎた瞬間に、『俺、全くスターになれていない。なれませんでした!』と大号泣しました。それで『コツコツやろう』と思いました。生活が限界で、お金もないし、芝居の台本が欲しいのに声がかからないということに薄々感づいていたのが、その時にあふれました」
そこから文字通り、地道に映画やドラマ、舞台にと幅広く出演。少しずつ追い風を感じ始めることに。
「コロナが明けた26~27歳の時、新人賞をもらっても授賞式に行く交通費がないくらい生活は厳しかったのですが、無理やりバイトを辞めました。でも少しずつ食べていけるようになりました。アルバイトしていた時間を全部ものづくりに費やして、自分で舞台もやり始めて、お芝居のことだけを考える時間を確保したら、徐々に、いい波が来るようになったかなって」

エンターテインメントの在り方とは
現在も、日々芝居のことばかりを考えている。
「例えば、16時間起きていたら15時間半くらいはお芝居のことを考えています。そろそろこの生き方を変えないととは思っていますが、それ以外に生き方を知らないし。役のために本を読んでも読んでも、時間が足りないぐらいです」
芝居に真摯に向き合う一方、作品などの動画配信真っ盛りともいえる現代のエンターテインメントの在り方に、思うところもあるようだ。
「今は作品を表現する場所も伝える方法も変わってきました。作品には観客を喜ばせる面白さがどんどん求められていく。もちろん、面白い作品はどんどん創り出されるべきで、“時代のうねり”もあると思います。その中で傑作が生まれることもまた事実です。時代の変化によって失われていくものもあります。映画館や時代劇もその一つです。ただ面白ければいいということじゃない。そのことを忘れないでほしい」
そんな時代に、自信を持って勧めるのが『幕末ヒポクラテスたち』だ。
「この作品を見た時に『うわ、映画だ!』と思いました。映画館の中では幕末にタイムスリップできるし、時代劇の登場人物たちに現代人にはないダイナミズムがある。面白かっただけではなく、楽しかったんです。僕たちが取りこぼしていったもの、落としていったものを、まさに拾い集めているような映画だと思っています。『日本にはこういう宝物もあるんだよ』というメッセージがある作品に参加できたことはうれしかったです」
熱い思いを持って語る姿は、まぶしかった。
□藤原季節(ふじわら・きせつ)1993年1月18日生まれ、北海道出身。小劇場での活動をへて2013年から俳優としてのキャリアをスタート。20年には、主演を務めた『佐々木、イン、マイマイン』がスマッシュヒットを記録し、『his』とあわせて同年の第42回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞。翌年には第13回TAMA映画賞最優秀新進男優賞を受賞するなど、デビュー以降、映画やドラマ、舞台など幅広く活動を続けている。その他映画出演作に『くれなずめ』(21年/松居大悟監督)、『わたし達はおとな』(22年/加藤拓也監督)など。26年にはドラマ『ちるらん 新撰組鎮魂歌』、NHK連続テレビ小説『風、薫る』の出演、27年に主演映画『赤土に眠る』(金子雅和監督)の公開が控えている。
□『幕末ヒポクラテスたち』
5月8日(金)新宿ピカデリー他全国公開(配給:ギャガ 配給協力:大手広告)
ヘアメイク:須賀元子
スタイリスト:入山浩章
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