映画祭はリアルでこそ意味がある 行定勲氏がくまもと復興映画祭を開催した理由とは

コロナ禍で映画祭やコンサートなど大規模イベントの中止が相次ぎ、オンラインに振り替える中、「えがおPRESENTS くまもと復興映画祭2020」が10月2~4日までの3日間、熊本・熊本城ホールで開催された。コロナ禍で、くまもと復興映画祭はいかに開催できたのか?

登壇した行定勲監督
登壇した行定勲監督

映画祭がある日常に喜びの声

 コロナ禍で映画祭やコンサートなど大規模イベントの中止が相次ぎ、オンラインに振り替える中、「えがおPRESENTS くまもと復興映画祭2020」が10月2~4日までの3日間、熊本・熊本城ホールで開催された。コロナ禍で、くまもと復興映画祭はいかに開催できたのか?

 同映画祭は風光明媚な自然と温泉地で知られる菊池市で行っていた「菊池映画祭」が前身。2016年4月に発生した熊本地震を機に、17年以降は菊池市と熊本市内の2つを会場とし、毎年4月に開催してきたが、コロナ禍に見舞われた今年は延期していた。

 カンヌ国際映画祭を始め、日本国内でも多くの映画祭が延期やオンライン開催となる中、行定勲氏は通常の映画祭スタイルにこだわった。「映画祭は人と人が出会う場所。顔を突き合わせて話し、それが次の映画製作につながる。コロナはもちろん恐れないといけないが、きちんと対策を講じれば、乗り切れる」と話す。

 4月の延期決定後も、コロナの感染状況を見ながら、10月の開催を決定。熊本では9月22~28日にかけて、新規感染者が確認されなかったことから、5段階(「レベル4特別警報」「レベル3警報」「レベル2警戒」「レベル1注意」「レベル0平常」)の「レベル3警報」から「レベル2警戒」へ引き下げていた。

 今年は菊池での開催を見送り、会場は熊本城ホールに絞った。ここは昨年12月にオープンした復興のシンボルというべき複合施設「SAKURA MACHI Kumamoto」内にある。最大約2300席のホールは十分な広さがある上、最新の換気システムを導入し、3密を避けられた。さらには、一般客は1階席部分(1700席)に限定し、さらには1つずつ席を空ける対策も取った。

 オープニングは行定監督、山崎賢人、松岡茉優共演の映画「劇場」の上映と、その音楽を手掛けた「サニーデイ・サービス」のボーカル、曽我部恵一のライブ。オープニングセレモニーでは、一定の間隔を空けながら、マスクなしで登壇。小川紗良主演の新作「ビューティフルドリーマー」の本広克行監督は「5回目のくまもと映画祭ですが、新作映画が上映されるのは初めて。しかもワールドプレミアです」と話すなどゲストも映画祭がある日常を喜んだ。

 行定監督は「2020年は大変な年になりました。熊本は7月の豪雨で甚大な被害を受けて、尊い命を失いました。映画を作ってきた仲間たち(三浦春馬さん、竹内結子さん)の命も失った年にもなりました。今、改めて生活や人生を考えている時、人生を踏み出すきっかけになれば。熊本の人たちは絶望からはい上がってきた。こういう時代だからこそ、映画に触れていただく時間が必要」などと話し、7月に自ら命を断った三浦さんが主演した中国との合作「真夜中の五分前」(14年、行定監督)を追悼上映した。

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