父から娘が受け継いだ日本車の傑作 “家の車”18歳から一筋「この車に乗っていると怖くない」

「この世の誰よりも長く、そばにいる存在」。愛車への思いがあふれ出た。当時新車で購入した父親から受け継いだ1974年式の名車。ピアノ講師の女性オーナーが、18歳の頃からずっと乗っている。足かけ3年かけたフルレストアを施し、コーティングの仕上げはピカピカで、走りは現役バリバリの好調。これからも……。“人生の1台”の愛車秘話とは。

フルレストアで現役バリバリのいすゞ 117クーペ【写真:ENCOUNT編集部】
フルレストアで現役バリバリのいすゞ 117クーペ【写真:ENCOUNT編集部】

【愛車拝見#358】 イタリアの巨匠が手がけた名車

「この世の誰よりも長く、そばにいる存在」。愛車への思いがあふれ出た。当時新車で購入した父親から受け継いだ1974年式の名車。ピアノ講師の女性オーナーが、18歳の頃からずっと乗っている。足かけ3年かけたフルレストアを施し、コーティングの仕上げはピカピカで、走りは現役バリバリの好調。これからも……。“人生の1台”の愛車秘話とは。

 74年式いすゞ 117クーペ XG。117クーペは、イタリアの巨匠カーデザイナー、ジョルジェット・ジウジアーロ氏が手がけ、日本車の傑作として知られる。父が手に入れ、子どもの頃から乗せてもらい、日常的に触れてきた。「でも、『家にある車だな』というぐらいの認識で、車には全然興味がなかったんですよ」。

 18歳で運転免許を取得。仮免許の練習には父が付き合ってくれた。当時は車名もあまりよく分かっていなかったが、「家にあるんだから、これに乗りなさいって父から言われて」。“とりあえず”で乗り始めた。

 通勤やピアノの出張レッスン、普段の買い物。乗れば乗るほど、愛着を深めていく。結婚式の二次会にも愛車が立ち会ってくれた。人生の節目に寄り添ってくれて、女性オーナーにとって欠かせない存在になっていった。

 人生において親子関係、家族の間はいろいろあるもの。「父とはけんかをしたこともありました。父は他の車に乗っていて、私がこの車に入れ込んでいたので、父は親子げんかのたびに、『売っちゃうぞ』と言ってきて……。出かける時に、車検証を持って旅行に行っていたこともあります。私がいない間に売られないように(笑)」。仰天エピソードを披露してくれた。「でも、この車を残してくれて、父にはすごく感謝しています」。

 父が亡くなり、15年ほど前から女性オーナーの名義に。リフォームした自宅ガレージでは、グランドピアノの横に117クーペが鎮座している。愛車にピアノの音色を聴かせ、「今日も頑張ろうね」など優しく声をかけている。「ペットと言うか、家族と言うか。今すごく旧車ブームで、『いいのに乗ってるね』とよく言っていただきますが、あまりそういう感覚はなく、うちの車ですね。特別感はなく、当たり前という存在です。主人よりも付き合いは長いんですよ(笑)」。

 長く維持するため、女性オーナーは決断した。フルレストアだ。8年前に足かけ3年の大がかりな整備が完了した。時間をかけて大事に――。工場に通い、丁寧に仕上げてもらう過程をしっかりと記録に残している。

自宅ガレージではピアノと一緒に置いている【写真:本人提供】
自宅ガレージではピアノと一緒に置いている【写真:本人提供】

車歴は「この1台だけ」

 今回、日本最大級のクラシックカーイベント「Nostalgic 2days(ノスタルジック2デイズ)」のオーナー車両の展示企画「選ばれし10台」に選出され、晴れ舞台で大きな注目を浴びた。

 車歴は「この1台だけ」。他界した両親の思い出が詰まっており、そして、「父の形見」でもある。「夜にお墓の前を通っても、高速を走っても、この車に乗っていると怖くないんですよ」。“見守ってくれている”という大きな安心感があるという。初心者マークの頃から一緒に走ってきた。「もみじマークまで頑張って乗っていきたいです」。優しくほほ笑んだ。

次のページへ (2/2) 【写真】父の形見になった貴重な国産車、実際のボディー
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