玉山鉄二、本読みで震え止まらず…織田裕二らを前に起きた“異変” 45歳が抱いた「恐怖」
織田裕二主演の連続ドラマ『北方謙三 水滸伝』(日曜午後10時、全7話)が話題になっている。全19巻、シリーズ累計1160万部を超える小説『北方水滸伝』の映像化。この壮大な群像劇において、梁山泊の面々を追い詰める「最大の敵」李富(りふ)という重責を担うのが、玉山鉄二だ。

「最大の敵」李富を熱演
織田裕二主演の連続ドラマ『北方謙三 水滸伝』(日曜午後10時、全7話)が話題になっている。全19巻、シリーズ累計1160万部を超える小説『北方水滸伝』の映像化。この壮大な群像劇において、梁山泊の面々を追い詰める「最大の敵」李富(りふ)という重責を担うのが、玉山鉄二だ。(取材・文=平辻哲也)
俳優として25年。数々の修羅場を潜り抜けてきた玉山だが、今回の現場はこれまでの経験が通用しない、異質な緊迫感に満ちていたという。インタビューの冒頭、玉山は噛み締めるように語り始めた。
「作品の偉大さはもちろん、今回のプロジェクトの規模そのものが、僕らが普段接しているドラマの枠組みを完全に超えていた。若松節朗監督という巨匠がいて、織田裕二さん、反町隆史さん、佐藤浩市さん……。この顔ぶれの中に自分がいて、『李富』という物語の心臓部を担う。責任感という言葉では足りない、もはや『恐怖』と言っていい感情に、撮影期間中はずっと支配されていました」
その恐怖が、身体的な異変となって現れたのが、制作の号砲ともいえる「本読み」の場だった。
「本読み、初顔合わせの時。今でもはっきりと覚えているんですけど、本当に震えが止まらなかったんです。ガタガタと震える自分の身体を、どうにかして抑え込もうとしていました。周りには日本を代表するような俳優さんたちがズラリと並んでいる。その熱気と、作品への期待値。正直に言えば、自分に対してそれだけ期待している部分もあったのかもしれない。でも、あの震えは、これまでの俳優人生でも経験したことのないものでした」
なぜ、キャリアを重ねた今、これほどまでに怯えるのか。そこには玉山という表現者の根源にある、極めて誠実な「臆病さ」がある。
「僕は、実はものすごく臆病なんです。『できなかったらどうしよう』という不安に一度捕まると、その暗闇から抜け出すのに人一倍時間がかかる。クランクインを迎えたり、現場でふと役の手応えを掴んだりすると、ようやく心がスッと軽くなるんですが、それまではどの作品でも、ある種怯えながら仕事をしている感覚があります。でも、最近はもう『それが僕なんだ』と割り切っている。この臆病さこそが、僕を突き動かすエンジンなんだと」
玉山は、自信満々に現場入りする自分を、あえて否定する。
「もし僕が、一切臆することなく現場に行って、それなりに平均点の、セオリー通りのお芝居を器用にこなしていたとしたら。あたかもベルトコンベアに物を置くような感覚で仕事をしていたとしたら、多分今の僕はここにはいない。現場に自分のアイデアを持っていかないことは、自分にとっての死を意味する。『こういうこともできる、ああいうこともできる』というトライを、一分一秒、若松監督にぶつけ続ける。その必死さこそが、李富という男を作る上で不可欠でした」

李富は「単なる悪党ではない」
今回演じる李富は、冷徹な知略家だ。物語の舞台となる北宋末期。腐敗した体制を内側から立て直すという思想を持ち、国家の危険の種となり得る梁山泊という「希望」を壊滅させようとする。玉山はこの男を、単なる悪役として片付けることを拒んだ。
「李富として大事にしていたのは、単なる悪党ではない、彼なりの悲哀です。あたかも自分の運命を最初から知っているかのように、自ら破滅に向かって進んでいく。その切なさが、観ている人に伝わればいいなと思っていました。心と体と頭が、それぞれバラバラに、独立して動いていってしまうような異様さ。そこが表現できれば、李富という男に唯一無二の深みが生まれる。そう信じていました」
玉山の役作りは、緻密な計算と、現場での直感を掛け合わせた不器用な構築作業だ。
「リハーサルやテストは、僕にとっての『違和感探し』です。自分の中に刷り込まれてしまった『役者としてのセオリー』。それを、怖がらずに捨てて戦っていけるか。セオリー通りにやれば楽ですが、それでは面白くない。分かりやすく言えば、現場では、本当に信頼した人以外は全員疑うところから始めています(笑)」
45歳、俳優・玉山鉄二。その鋭い眼光の裏側に潜む「臆病さ」と「震え」。それこそが、作品を支配する李富の、あの静かなる威圧感の正体だった。
□玉山鉄二(たまやま・てつじ)1980年4月7日生まれ、京都府出身。99年に俳優デビュー。2005年には映画『逆境ナイン』で初主演。09年公開の映画『ハゲタカ』で第33回日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞。14年、NHK連続テレビ小説『マッサン』では、劇中のモデルとなった竹鶴政孝を彷彿とさせる熱演で、国民的人気を得た。近年の主な出演作にドラマ『全裸監督』シリーズ、『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』、映画『次元大介』など。
○作品情報
連続ドラマ『北方謙三 水滸伝』
放送・配信開始日:2026年2月15日(日)
放送時間:毎週日曜午後10:00
話数:全7話
放送局:WOWOW(WOWOWプライム)
配信プラットフォーム:WOWOWオンデマンド、Lemino(同時配信)
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