元バンドボーカルがプロレスで「再生」 夢だった“後楽園でのライブ”を違う形で実現させた異色レスラーの挑戦

東京女子プロレスの恒例興行ともいえる、毎年の1.4後楽園ホール大会。今年は神嵜志音(かんざき・しおん)がデビュー戦を行った。前編で紹介した通り、バンド活動を行ってきた神嵜は、趣味として見続けていたプロレスで今一度自分自身を表現し始めた。デビュー戦のために書いた楽曲のタイトルは『再生』。生まれ変わった神嵜は、どのようなプロレスラーになろうとしているのか。

プロレスラーとして”再生”した神嵜志音【写真:橋場了吾】
プロレスラーとして”再生”した神嵜志音【写真:橋場了吾】

プロレスの練習はすぐにはできるようにはならなかったが楽しかった

 東京女子プロレスの恒例興行ともいえる、毎年の1.4後楽園ホール大会。今年は神嵜志音(かんざき・しおん)がデビュー戦を行った。前編で紹介した通り、バンド活動を行ってきた神嵜は、趣味として見続けていたプロレスで今一度自分自身を表現し始めた。デビュー戦のために書いた楽曲のタイトルは『再生』。生まれ変わった神嵜は、どのようなプロレスラーになろうとしているのか。(取材・文=橋場了吾)

 神嵜志音はバンド活動に一区切りをつけ、東京女子プロレスの会場に足を運んだ。そこで感じたこととは。

「プロレスの試合がすごいのは当たり前なんですけど、個性を出せる場所というか皆さんすごくキラキラして見えて憧れるようになりました。雰囲気が暖かくてアットホームな感じがして、もともとバンド活動をやっていた部分の個性を生かせる場所かなって思いましたね」

 東京女子は通年で練習生を募集しているが、神嵜は思い立ったが吉日ですぐに連絡をした。

「面談が2回あって、それから道場へ行きました。初めて面接へ行く前の日に、両親に話しました。プロレスをやりたいという気持ちはずっと伝えられなかったんですが、さすがに面接に行く前には話さないといけないなと思って。実は母親が大のプロレスファンで父親は真面目なタイプなので、父親の反応が怖かったんですけど『頑張れよ』って後押ししてくれました。逆に母親の方が、プロレスの凄さを知っているだけに心配して泣いちゃって……でも今は、二人とも応援してくれています」

 スポーツ経験は中学時代3年間の剣道のみ。神嵜は入門から半年でデビューしているのだが、プロレスの練習を始めたときはどんな感じだったのだろうか。

「楽しかったです。プロレスが好きで見ていたので『自分がプロレスをやっているんだ!』という気持ちが強くて。ただ運動が得意な方ではないので、すぐにはできるようになりませんでしたね。ただ楽しい気持ちを持ち続けて、だんだんできるようになりました。ロープワークで内出血を起こすことはありましたけど……」

鬼気迫る表情でスリーパーを仕掛ける神嵜【写真:(C)東京女子プロレス】
鬼気迫る表情でスリーパーを仕掛ける神嵜【写真:(C)東京女子プロレス】

誰かの人生の支えになるようなプロレスラーになりたい

 そして1.4後楽園ホール大会でデビューした神嵜。カードは高見汐珠&七瀬千花vs小夏れん&神嵜志音。タッグチームの場合、先輩やベルト保持者の入場曲を使用するのが通例だが、特例的にこの日のために神嵜が書き下ろしボーカルを吹き込んだ『再生』という楽曲で入場することになった。

「(そのアイデアが出たときに)本当にいいのかな?と思いました。この曲は、バンドを解散した後に作ってあって、歌詞は全部今回のために書きました。プロレスの練習をしながら、移動中のバスの中で歌詞を書き溜めていって。『再生』……再び生きる自分そのものですね。入場前はめちゃくちゃ緊張していたんですが、入場してからは『いい曲だな!』と思いながらリングに上がりました(笑)」

 主催者発表1564人。超満員札止めの観客が見守る中、神嵜のデビュー戦は行われた。全身黒のコスチュームの神嵜は、強烈なエルボーや首投げなどで見せ場を作ったものの、高見のコブラクラッチにギブアップ負けという結果に終わった。

「バンド時代の夢は『後楽園ホールでライブをすること』だったんですが、ある意味叶えられたのかな……。コスチュームのテーマは、パンクロックのイメージで黒とシルバーにしたいなと思っていて。そもそも黒が好きなのもあるんですけど、デザインが上手な友達にイメージを伝えて作っていきました」

 デビュー2戦目は、風城ハルとのシングル。3戦目でも6人タッグながら風城と当たったのだが、その風城に神嵜の印象を聴いてみた。

「まだ自分も新人気分が抜けない(風城は2023年3月デビュー)ところはあるかなと、思っているんですよね。タイトル戦(1.4後楽園大会でプリンセスタッグ王座に挑戦した)終わりだったのもあって、自分ももっと強くならなきゃと思っていて、そのタイミングで志音ちゃんとのシングルだったので、実はドキドキでした。

 今日(1.17横浜大会)でデビュー3戦目ですよね……(神嵜の)デビュー戦は何度も見返して、凄く堂々としていてかっこいいなと思いました、自分と比較すると特に。ポテンシャルの塊だなと思っているんですけど、戦ってみるとまだまだ子どもですかね(笑)。でも風城は志音ちゃんの初シングルの相手になったので、志音ちゃんの記憶に残り続ける選手になったかなと。エルボーひとつとってもしっかりしていて、意欲もありますし熱いものも持っているので、もっと来いよって思います」

 このコメントを神嵜に伝えると……。

「プロレスに関しては、まだ全然だと思っています。入門する前にどういう動きが向いているのか考えていたんですが、練習してデビューした今も、何が自分に向いているのかはわからない状態です。個人的には、パワーあふれる技を使ってみたいという気持ちもあります」

 最後に、どんなプロレスラーになっていきたいかを聴いてみた。

「自分が今まで苦しいときには、プロレスに何度も助けられてきて頑張ろうと思えたので、誰かの人生の支えになるようなプロレスができるプロレスラーになりたいですね」

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