学生時代に300万で購入→1000万超に高騰 フェラーリと交換話も「これ以上の車はない」

学生時代に覚悟のローンを決めた。22歳で手に入れたのは、“日本のスーパーカー”。34歳の男性会社員は、初めて買ったマイカーを今も大切に乗り続けている。新卒で就職した会社がまさかのブラック企業で、社会人になりたての頃は、支払いも重なって心身共に苦労を重ねた。それでも手放すことはしなかった。現在は「1食600円」という驚きの節約生活を送っている。そんな“マイカー全振り”の生き方に迫った。

34歳サラリーマンオーナーは学生時代からNSX乗りだ【写真:ENCOUNT編集部】
34歳サラリーマンオーナーは学生時代からNSX乗りだ【写真:ENCOUNT編集部】

【愛車拝見#334】「チャーハンが一番手っ取り早く、安く作れますよ」

 学生時代に覚悟のローンを決めた。22歳で手に入れたのは、“日本のスーパーカー”。34歳の男性会社員は、初めて買ったマイカーを今も大切に乗り続けている。新卒で就職した会社がまさかのブラック企業で、社会人になりたての頃は、支払いも重なって心身共に苦労を重ねた。それでも手放すことはしなかった。現在は「1食600円」という驚きの節約生活を送っている。そんな“マイカー全振り”の生き方に迫った。

「ひと目ぼれでした。リトラクタブルヘッドライトも気に入っています」。1993年式のホンダNSX。男性オーナーは誇らしげに見つめる。

 もともとクルマ好きで、「峠を走りたくて」と購入したのは大学4年生の時。価格は300万円だった。「4年間バイトで貯めに貯めた100万円を頭金にしました。残りの200万円はローンを組みました」。倉庫内のピッキング作業など、学生のアルバイトでコツコツ働いて軍資金を貯めた。

 当時、候補に挙がっていたのは日産スカイラインGT-R(R34型)、トヨタ・スープラ(80系)、そしてNSXの3台。「近所でたまたまこのNSXを見つけて、即決で買っちゃいました」と振り返る。決め手はスピード性能と、日本車らしからぬスタイリッシュなデザインだった。就職も決まっていたため、ローン支払いは月3.5万円ほどで無理のない範囲に設定した。

 順調な滑り出しの愛車生活だったが、社会人として思わぬ試練に見舞われる。就職した会社がブラック企業だったのだ。「入社2か月で辞めました。土日が休みではなく、せっかく車を買ったのに乗る機会も少なくて、そこが一番つらかったです」。ローンを抱えながらも新人で退職、“どん底”を味わった。周囲には心配されたが、辞めてからたまたま手にした求人チラシを頼りに、なんとか転職に成功した。「いい会社に入ることができました」。NSXを持っていること、楽しく走ることが何よりの励みになった。

 スポーツカーを乗り回すカーライフは、紆余曲折もあった。納車からわずか2週間後に事故。峠道でスピンして縁石に左後ろのタイヤをぶつけてしまった。「親に勧められて200万円分の車両保険に入っていたので、直すことができました。足回りの交換だけで済みました。ボディーが無事だったのは運がよかったです」。購入3年後には想定外の故障が。「オートマのミッションがぶっ壊れました。原因は不明です。この機会にマニュアルに載せ替えました。120万円かかって、ダブルローン状態になりました」。ピンチを乗り越えてきた。

 別のスポーツカーにも興味を持つようになり、トヨタ MR-S モノクラフトGT300に乗っていた時期もあったが、2年間だけできっぱり。NSXに愛情を注ぎ続けている。

 国産スポーツカーは世界的に注目度が高まり、近年の中古車相場は高騰。日本が誇るNSXも例外ではなく、「当時300万円で購入しましたが、今や1000万ぐらいですよ。昔は走り屋のクルマのイメージだと思いますが、もはや資産と言えると思います」。旧車ブームに驚きを隠せない。「街中を走るだけで周りからの視線が集まります。外国人観光客から写真を撮られまくりますね。大黒ふ頭に行くとすごいですよ」。

 さらに大きな人生の買い物をした。数年前にマンションを購入したのだ。「もし何かあったら車を売るつもりでフルローンを組みました。でも絶対に手放したくないから、頑張って働いています。仕事を頑張るしかないです!」。駅近マンションに住みながら、近所にガレージも借り、2か所の駐車場を確保するなど、NSXを中心とした生活設計になっている。

 車を資産として捉えつつも、それ以上に精神的な支えとして大事にしている。一方で、売ってほしいという引き合いが過去にあったという。フェラーリとの交換話を持ちかけられたこともあったが、手放すことはしなかった。「これを売ったら、次に何に乗ればいいのか分からない。これ以上の車はないですね」と断言する。

 愛車のために無駄遣いはしない。昼は会社の社食で250円、夕食は自炊中心で1食350円以内。朝食は抜いており、1日の食費はわずか600円だ。「チャーハンが一番手っ取り早く、安く作れますよ。毎日の食事をSNSに上げてます(笑)」。お酒も一切飲まない。愛車一筋は「全然つらくないです」と笑顔を見せる。

 週1ペースのドライブを息抜きに、マイカーや趣味にアクセル全開。「余裕があればエンジンに手を入れたいんですよね。まだまだ節約生活は続きますよ」と苦笑いだが、それも愛車のためなら苦にならない。「できる限り長く維持していきたいですね」。人生の相棒への、深い愛情が込められていた。

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