父と会話はほぼなし→20歳娘が“運命の出会い” 400万円愛車購入で激変「好きな車に乗ればいい」

20歳で思い切って手に入れたセダン車が、父との関係を大きく変えた。全く関心がなかった自動車。「大人になっても絶対に運転したくない」と苦手意識を持っていたが、車社会の地方暮らしで両親から促され、18歳で教習所に通い始めたことが転機に。今では自動車販売の仕事に就いている。ほとんど会話のなかった父とは愛車を通じて、笑顔で話すようになった。「車のことは父に何でも頼っています」。24歳女性会社員のオーナーに、“父と娘の愛車物語”を聞いた。

トヨタ・カムリが人生を変えた【写真:株式会社ロイヤルオートサービス提供】
トヨタ・カムリが人生を変えた【写真:株式会社ロイヤルオートサービス提供】

「大人になっても絶対に運転したくない」から車好きに成長

 20歳で思い切って手に入れたセダン車が、父との関係を大きく変えた。全く関心がなかった自動車。「大人になっても絶対に運転したくない」と苦手意識を持っていたが、車社会の地方暮らしで両親から促され、18歳で教習所に通い始めたことが転機に。今では自動車販売の仕事に就いている。ほとんど会話のなかった父とは愛車を通じて、笑顔で話すようになった。「車のことは父に何でも頼っています」。24歳女性会社員のオーナーに、“父と娘の愛車物語”を聞いた。(取材・文=吉原知也)

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 長野出身。もともと車には全く興味がなかった。一方で、1人1台マイカーを持つような車社会の地域。高校卒業を機に、両親から「車がないと生活できないよ」と言われ、しぶしぶ教習所に通うことになった。

 まさに、食わず嫌いだった。「走ってみると、『私って意外と運転できるじゃん!』って(笑)」。楽しく通うことができ、“車嫌い”は払拭された。高卒で自動車業界ではない業種に就職した。

 免許取得を機に最初に買ったのは、日産マーチNISMO。初めてのマイカー購入のため、父に付いてきてもらった。父との関係が変化する第一歩にもなった。「車屋さんに行って、『これがいい』とピンと来ました。マフラーの音、純正のホイールやエアロも付いていて、かっこよさにひと目ぼれでした」。コンパクトカーは運転に慣れるのにもってこい。走る楽しさを知っていった。

 街中を走る車を観察するように。引きつけられたのが、セダン車だった。ただ、両親はセダン好きではなく、兄はスポーツカー愛好家。「本当に自然と好きになっていました。セダン車の上品さ、私にとってオーラを強く感じました。『絶対にセダンに乗る』って。当時、クラウンマジェスタ、フーガ・インフィニティ、スカイラインなど、乗りたい車がたくさんありました。実家が雪深い地域にあるため、『雪道に強いFF(前輪駆動)か、四輪駆動であること』を条件に探しました」。

 20歳の時、“運命の出会い”が訪れる。トヨタの人気モデル・カムリだ。金銭面を含めた条件に悩んでいると、父から「見に行ってくれば?」と促された。初めて1人で訪れる販売店。緊張しながらも、説明を受けているうちに、あれよあれよで仮契約までいった。家に帰って報告を受けた両親は「マジで?」と仰天。後日父と一緒に再訪し、もう一度話を聞いたうえで購入が決まった。2019年式のカムリ70系(WSレザーパッケージ)。色はプラチナホワイトパールマイカで、価格は約400万円。マーチも気に入っていたため後ろ髪を引かれる思いもあったが、下取りに。貯金など自分のお金で購入した。

 カムリに乗って3年以上。「納車の日を今でも覚えています。初めて自分で運転して。ハイブリッドなので本当に静かで、段差があっても衝撃を感じない。あの乗り心地の感動は忘れられません」。夕暮れ前の陰影が美しい、ボンネットの造形もお気に入りだ。カスタムにも傾倒。マフラーや足回りなどこだわり、なんと費用総額は100万円に上る。長さ約5メートルある大きな車体を、すいすいと乗りこなしている。

 車に関わる仕事を志すようになり、転職。自動車の販売・車検・整備・レンタカーなど幅広く手がける「株式会社ロイヤルオートサービス」(長野・松本)で働いて3年目を迎えた。販売担当のカーアドバイザーとして業務にまい進。名刺の裏には「愛車:カムリ」と記載しており、「父親世代のお客様とも車談義で盛り上がることが増えました」と充実の表情を浮かべる。

 高速道路ドライブが大好きで、手洗い洗車でいつもピカピカ仕上げ。「かわいいものが好きなので、車内にはマイメロディやクロミのぬいぐるみを乗せています」。カーイベントにも積極的に参加して同世代との交流を深めている。内向的な性格が変わったことも実感しているという。

「かわいいもの好き」でぬいぐるみもカムリに乗せている【写真:株式会社ロイヤルオートサービス提供】
「かわいいもの好き」でぬいぐるみもカムリに乗せている【写真:株式会社ロイヤルオートサービス提供】

「『車は勇気とハンコがあれば乗れるぞ』という父の名言もあります(笑)」

 父との関係も、カムリが前向きに変えてくれた。教育に厳しい両親。父はもともと物静かで、「幼少期、父はとても怖い存在で、笑顔で会話をした記憶がありませんでした。社会人になるまで、ほぼ会話はなかったです」。そんな親子は、車を通じて、徐々にコミュニケーションを重ねるようになった。

「父は職業柄、機械全般に強く、カムリを購入してからは車の相談をすることが増えました。娘に頼られることが父もうれしかったようで、それがきっかけでいろいろなことを話すようになりました。ちょっとした故障を直してくれたり、カスタムについて助言をくれたり、私が変なパーツを買ってきても、いい形で取り付けてくれます(笑)。今では笑って話せる関係になりました」。

 マイカー購入の際にも付き添ってくれた父。両親の愛情は伝わっており、「父は『好きな車に乗ればいいんだよ』と受け入れてくれています。それに、『車は勇気とハンコがあれば乗れるぞ』という父の名言もあります(笑)。ちなみに、母は『またこんなもの買って』と言いつつも、楽しそうにしている私を見て理解してくれています。両親からは『絶対に運転なんてしたくないと言ってたのに、こんなにデカい車に乗るようになって。信じられないよ』と、今でも言われます」。温かく見守ってくれている。

 カーアドバイザーとして、顧客に親身に寄り添う姿勢を貫く。だが、親友の女性に車を売った時はこんなエピソードが。「親友の子からは『こんなでっかい車を買ったの?』と最初は驚かれましたが、今では助手席の乗り心地を気に入ってくれています。今年に入って新しく車を購入してくれたのですが、自他共に認める運転ベタということもあり、残念ながら軽自動車でした(笑)。セダン車の魅力を伝える、私のアプローチがまだ足りなかったみたいです」と苦笑いだ。

 普段から中古車情報をチェックし、オークション情報も見ている。乗りたい車はたくさんある。「限られた人生なので、好きな車に乗り換えていこうと考えています。でも、なんだかんだでカムリに乗っているんだろうなとも思っています。やっぱりカムリが好きなんですよね」。運命の1台と、まだまだ一緒に走っていく。

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