「社会人になったらゲームをやめる風潮変えたい」…eスポーツ“兼業プロ”の覚悟
格闘ゲーム「ストリートファイター」シリーズのプロゲーマーであり、大手ゲーム会社スクウェア・エニックスの社員としての顔を持つネモ選手(34)。異色の「兼業プロ」は、競争激しいeスポーツで世界を舞台に戦い、黎明期にある日本で「セカンドキャリア」まで見据えて活躍している。追い求めるのは、「社会人になったらゲームをやめないといけないという風潮を変えていきたい」という信念と、選手引退後も安定した生活を築ける「モデルケース」だ。後編では、日本eスポーツ界の発展に力を注ぐレジェンドの情熱に迫った。
「Team Liquid」所属でスクウェア・エニックス勤務のネモ選手 10年前の賞金「3万円」から100万円単位に…日本eスポーツ界で稼ぐ道とは
格闘ゲーム「ストリートファイター」シリーズのプロゲーマーであり、大手ゲーム会社スクウェア・エニックスの社員としての顔を持つネモ選手(34)。異色の「兼業プロ」は、競争激しいeスポーツで世界を舞台に戦い、黎明期にある日本で「セカンドキャリア」まで見据えて活躍している。追い求めるのは、「社会人になったらゲームをやめないといけないという風潮を変えていきたい」という信念と、選手引退後も安定した生活を築ける「モデルケース」だ。後編では、日本eスポーツ界の発展に力を注ぐレジェンドの情熱に迫った。
今年6月に行われた、マネジメント契約を結ぶ大手芸能事務所アミューズの株主総会。例年実施される音楽ライブの中で、異例となるeスポーツコーナーが設けられた。両国国技館の大画面に映し出されたエキシビションマッチ。力強いパフォーマンスを披露したネモ選手はステージ上で、「社会人になるとゲームをやめないといけないという、そんな風潮を変えていきたい」と決意を語った。
世界的プロチーム「Team Liquid」のプロ選手として、今年だけでも国内外の約20大会に出場。開催中の「カプコンプロツアー」でも奮闘を続けている。世界を知るからこその切なる思いだった。
「入り口でどうインパクトを与えられるか」…認知度アップへの取り組み
日本のeスポーツ界は、徐々に認知度が高まってきているが、世界と比べると賞金額や大会規模はまだ差がある。ネモ選手が課題として挙げるのが、「一般層への理解度」だ。
今年10月に大会出場のためオランダ経由でロンドンを訪れた際のエピソードだ。「『Team Liquid』は向こうですごく有名で、チームから支給されるパーカーを着るのですが、空港で話しかけられます。ゲームを全然やっていないという人から『何のゲームが好きなの?』と聞かれるんです。いろいろな国に行きますが、話しかけられて興味を持たれる。ただ、日本でスポンサーのシャツを着ていても、『オタクだな』と見られてしまいます」と打ち明ける。
日本ではeスポーツの大会が活発化し、黎明期とも言える。「ゲーム自体に対する『いいイメージ』は、まだない。ゲームを朝から晩まで練習していたとなると『ゲームやり過ぎだよ』と思われてしまいます。でも、野球を朝から晩までやると『一生懸命やっているんだ』となるのではないでしょうか。ゲームをそこまでもっていかないといけない」と危機感を口にする。「日本の風潮を変える。それがプロとして一番やらなければいけないこと」。ネモ選手とっての使命だ。
認知度アップのため個人としても注力。アミューズの株主総会のような一般向けイベントで重視しているのが、「最初の入り口でどうインパクトを与えられるか」という観点だ。例えば、派手な技を決め、ゲームやeスポーツに興味のない人に「なんとなくすごい」という印象を持たせる。「最近はeスポーツの動画がたくさん出ているので、そこから動画を見てもらうなどして、興味を持ってもらい、中身を知ってもらえれば」と思いを込める。