服用増加、体動かず実感「無理は3日まで」 ひかる一平が語る“還暦高校生”の裏側

俳優・ひかる一平(61)が43年ぶりに主演を務めた映画『還暦高校生』(6月27日公開、河崎実監督)で、まさかの“現役高校生”役に挑戦した。42回受験に失敗し、いまだに高校に通い続ける椎名という“人生経験チート級”の生徒。昭和の熱血学園ドラマへのオマージュと、バカ全開のエンタメを融合させた、いわば“令和の珍作”とも言える作品に出演した思いとは――。

インタビューに応じたひかる一平【写真:増田美咲】
インタビューに応じたひかる一平【写真:増田美咲】

『還暦高校生』で主演

 俳優・ひかる一平(61)が43年ぶりに主演を務めた映画『還暦高校生』(6月27日公開、河崎実監督)で、まさかの“現役高校生”役に挑戦した。42回受験に失敗し、いまだに高校に通い続ける椎名という“人生経験チート級”の生徒。昭和の熱血学園ドラマへのオマージュと、バカ全開のエンタメを融合させた、いわば“令和の珍作”とも言える作品に出演した思いとは――。(取材・文=平辻哲也)

「60歳で学ラン着る日が来るなんて……。16歳の自分に『お前、60になっても制服着てるぞ』って教えてあげたいですね(笑)。最初は冗談かと思いました。河崎監督から『主演どう?』って言われて、『え、僕?』って。まさか本当にやるとは思ってなかったし、学生役なんて想像もしてませんでした。でも、制服を着て現場に立ったら、不思議と気持ちは16歳に戻ったんですよね。体はついてきませんでしたけど(笑)」

 本作のメガホンを取ったのは、『いかレスラー』『地球防衛未亡人』などで知られる“日本バカ映画の巨匠”・河崎実監督。昭和の学園ドラマに込められた熱量とノスタルジー、そして笑いが詰まった本作には、『3年B組金八先生』で共演した直江喜一、1970年代に活躍した少年アイドルグループ『ビッグマンモス』の森井信好ら、昭和のスターたちも集結した。

「河崎監督の“昭和愛”が爆発してます。ツッコミどころ満載だけど、本当に楽しい作品。撮影中はまるでタイムスリップしているような気分でした。直江くんや森井くんは昔からの知り合いで、現場は同窓会みたいな雰囲気でしたね」

 物語は、型破りな新任教師・野々山(石田泰誠)と、何度も高校受験に落ちながら青春を貫く椎名(ひかる)らが、弱小サッカー部を舞台に巻き起こす友情と涙の“青春応援歌”。椎名は、「千本シュートを止めたら入部する」と無茶な条件を出し、野々山との対決が描かれる。

「気持ちは若く戻れるんですよ。学ラン着てると脳が勝手に若返る(笑)。でも、体がついていかない。こんなに動けないのかって驚きました。撮影後は薬が増えましたね。『無理は3日が限界』って身に染みて感じました」

 昨年、還暦を迎えた際には、仲間たちが飲み屋でサプライズパーティーを開いてくれた。

「『ああ、やっぱ60なんだな』って実感しました。30代の時に想像していた60歳と、実際の60歳ってまったく違う。いろんなことが急に変わっていきます。でも、考え方は全然変わらない。新しいことをやりたいという気持ちは今も強い。ただ、体がついてこないというのが一番の苦労ですね」

 健康面にも気を使うようになった。

「普段は運動しないので、最近は意識して歩くようにしています。でも車生活なのでなかなか歩かない。薬は年々増えて、膝用、花粉症用…。R-1が効くらしいって聞いて、4月から飲んでます。サプリもどんどん増えてますけど、気休めでも『脳を騙せればいい』って思ってます。芝居も脳を騙す作業。そういう意味では生き方そのものが芝居なのかもしれません」

俳優業以外にも多忙な毎日をすごしている【写真:増田美咲】
俳優業以外にも多忙な毎日をすごしている【写真:増田美咲】

東邦音楽大の非常勤講師も務める

 俳優業と並行して、芸能プロダクション・株式会社スカイアイ・プロデュースの代表取締役、そして東邦音楽大の非常勤講師も務める多忙な毎日。

「『いかに自分を騙して切り替えるか』って、すごく大事なんです。僕も『今日はひかる一平として仕事をする』ってスイッチを入れてます。家に帰れば、ただの父親ですけど。でもその切り替えがあるから、色んな場面で自分を保てるんだと思う」

 映画『還暦高校生』は、昭和の熱さと不器用さを、ユーモアを交えて今に伝える作品だ。

「若い人が観たら『こんな時代があったんだ』って思うでしょうし、大人は懐かしさで笑えるはず。肩の力を抜いて楽しんでもらえたら嬉しいです」

 年齢も常識も軽やかに飛び越え、“青春”をもう一度走り抜けたひかる一平。還暦を超えたひかるが学ランに袖を通し、全力で“今”を生きる姿に、大人も若者もきっと背中を押されるはずだ。

□ひかる一平(ひかる・いっぺい)1964年5月11日生まれ、東京都出身。1980年、TBSドラマ『3年B組金八先生 第2シリーズ』の椎野一役で俳優デビュー。翌81年には旧ジャニーズ事務所より歌手デビューも果たす。『必殺仕事人III』など多くの作品に出演。2012年12月に「株式会社スカイアイ・プロデュース」を設立し、代表取締役に就任。2019年より東邦音楽大学にて非常勤講師としても活動。趣味は野球観戦。身長172センチ。

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