国分太一、日テレより先にすべきだった「謝罪と説明」…株式会社TOKIOに危機管理体制はあったのか
日本テレビが今月20日、TOKIO・国分太一(50)にコンプライアンス上の問題行為があったとして『ザ!鉄腕!DASH!!』(日曜午後7時)からの降板を発表した。同社・福田博之社長の会見では、プライバシーを理由に問題行為の内容が説明されずに批判の声が上がったが、元テレビ朝日法務部長・西脇亨輔弁護士は一連の経緯に「国分氏側の対応にも大きな問題がある」と指摘する。

元テレビ朝日法務部長・西脇亨輔弁護士が指摘
日本テレビが今月20日、TOKIO・国分太一(50)にコンプライアンス上の問題行為があったとして『ザ!鉄腕!DASH!!』(日曜午後7時)からの降板を発表した。同社・福田博之社長の会見では、プライバシーを理由に問題行為の内容が説明されずに批判の声が上がったが、元テレビ朝日法務部長・西脇亨輔弁護士は一連の経緯に「国分氏側の対応にも大きな問題がある」と指摘する。
国分氏をめぐる日テレ社長会見は「炎上」した。直接の原因は「国分氏は何をしたのか」という大きな疑問に対してプライバシーを理由に回答せず、何のための会見か分からなくなった点にある。しかし、私はその他に「より根本的な炎上の原因」があると思っている。それは、国分太一氏自身が最初に謝罪や説明を行わなかったことだ。
福田社長は会見で、この事案に日テレ社員は関与しておらず「国分さん個人の問題です」と断言した。そうならば国分氏や、所属事務所である「株式会社TOKIO」が真っ先に謝罪や説明を行うのが筋だ。国分氏は今月18日に日テレから調査結果を伝えられたというから、「ザ・鉄腕!DASH!!」降板発表のタイミングで自ら記者会見を開くことは可能だった。そうしていれば、国分氏が何を謝罪し反省するのか説明する中で、必要な限度で事案を説明することになっただろう。また、日テレの社長会見を国分氏の後に設定すれば、同社は「国分氏の説明以上のことは明かすことができない」と回答することもできた。
ところが実際は、日テレ社長が単独で会見を開いて「炎上」し、国分氏や株式会社TOKIOはその後に文書でコメントしただけ。その内容も、事案の受け止め方について日テレとの「温度差」を感じさせるものだった。
日テレ側は、福田社長が事案を最初に知った際の心情を「もう、ただただショックを受けた。残念でしょうがない。信じたくないという……」と語るなど、事案を極めて深刻に受け止めたことを明らかにした。事案把握後は直ちに弁護士の調査を開始。福田社長は「事案とプライバシーは共通しているものだと思っています」と述べ、関係者のプライバシーと一体化した非常にセンシティブな事案であると示唆した。
一方、国分氏のコメントは「長年の活動において自分自身が置かれている立場への自覚不足、考えの甘さや慢心、行動の至らなさが全ての原因です」などというもの。この「自覚不足」「甘さ」「至らなさ」という言葉からは、国分氏が自分の行為を「つい過ちを犯してしまった」という性格のものととらえ、「絶対的な悪行」とまでは認識していないような印象も受ける。
そして、株式会社TOKIOは国分氏に「猛省を促すべく」「無期限で全ての活動を休止する」と発表した。一見重い処分にみえる「無期限活動休止」だが、実は「休止」であって「解雇」「解任」ではない。同社の法人登記を見ると、今月20日現在「代表取締役 城島茂、取締役 國分太一・松岡昌宏」となっていて、国分氏は取締役の座にとどまっているのだ。こうした国分氏側の姿勢は、日テレ側が極めてナーバスになっている事案への対応として十分なのか。
この点を考える中で気になるのは、そもそも国分氏や株式会社TOKIOに、今回のような重大事案に対応できる「危機管理体制」があるのかという問題だ。
株式会社TOKIOは、長瀬智也氏が旧ジャニーズ事務所退所の意向を表明した2020年7月に設立。当初は藤島ジュリー景子氏が代表取締役だったが、23年9月に同氏が辞任するとTOKIOメンバー3人のみが役員となった。STARTO ENTERTAINMENTとは「マネジメント契約」ではなく、営業活動などに限って依頼する「エージェント契約」。メンバーの危機管理までしてもらう関係にはない。このため、STARTO ENTERTAINMENTによるコメントは、「株式会社TOKIOから、当社とグループエージェント契約を締結しているTOKIOのメンバーである国分太一が、本日より無期限で活動休止するとの申し入れがありましたことをご報告いたします」という「距離を置いた」ものになっていた。こうした「自分の危機管理は、自分でしなければならない」状況でのタレント自身による不祥事対応の難しさは、同じく旧ジャニーズ事務所から「株式会社のんびりなかい」を作って独立した中居正広氏の問題でも浮き彫りになった。
今回、国分氏と株式会社TOKIOは自らのコンプライアンス問題に適切に対応できているのか。これができないと日テレにとって株式会社TOKIOは、同局の人権方針との関係で「不適切な取引先」となって取引継続に疑義が生じる。そうなると、事態は『ザ・鉄腕!DASH!!』の継続可否にかかわる恐れがある。
やはり今回の事案では、コンプライアンス違反を指摘された時点で、国分氏側が自ら主導して「謝罪と説明」を行うべきだったと、私は思う。そして、「謝罪と説明」は今からでも遅くはない。ネット上では既に「コンプライアンス違反」の中身についてさまざまな情報が飛び交っている。これが臆測や誹謗中傷につながらないためにも、当事者自らが、関係者のプライバシーに十分配慮した上で、説明できる範囲は誠意をもって説明し、自身の責任の取り方について理解を求める。そうした取り組みなくして、事態は沈静化しないのではないだろうか。
□西脇亨輔(にしわき・きょうすけ)1970年10月5日、千葉・八千代市生まれ。東京大法学部在学中の92年に司法試験合格。司法修習を終えた後、95年4月にアナウンサーとしてテレビ朝日に入社。『ニュースステーション』『やじうまワイド』『ワイド!スクランブル』などの番組を担当した後、2007年に法務部へ異動。社内問題解決に加え社外の刑事事件も担当し、強制わいせつ罪、覚せい剤取締法違反などの事件で被告を無罪に導いた。23年3月、国際政治学者の三浦瑠麗氏を提訴した名誉毀損裁判で勝訴確定。同6月、『孤闘 三浦瑠麗裁判1345日』(幻冬舎刊)を上梓。同7月、法務部長に昇進するも「木原事件」の取材を進めることも踏まえ、同11月にテレビ朝日を自主退職。同月、西脇亨輔法律事務所を設立。昨年4月末には、YouTube「西脇亨輔チャンネル」を開設した。
