パフォーマー卒業から10年 松本利夫を支えるEXILEでの経験と、HIROから学んだ「人を一流にする覚悟」
EXILE・松本利夫の主演舞台、LEGENDSTAGE feat. カムカムミニキーナ『よろしく候~BOTTOM OF HEART~』(作・演出/松村武)が今月26日から30日まで東京・シアター1010で上演される。2015年にパフォーマーを卒業後も、EXILEのメンバーとして俳優業にまい進する松本。主演舞台は3年ぶりとなる。座長としての心境や俳優のやりがい、エンターテイナーとして飛躍するきっかけをくれたEXILEやHIROへの思いを語った。

3年ぶりの主演作『よろしく候~BOTTOM OF HEART~』は幕末の蒸気船が舞台
EXILE・松本利夫の主演舞台、LEGENDSTAGE feat. カムカムミニキーナ『よろしく候~BOTTOM OF HEART~』(作・演出/松村武)が今月26日から30日まで東京・シアター1010で上演される。2015年にパフォーマーを卒業後も、EXILEのメンバーとして俳優業にまい進する松本。主演舞台は3年ぶりとなる。座長としての心境や俳優のやりがい、エンターテイナーとして飛躍するきっかけをくれたEXILEやHIROへの思いを語った。
『よろしく候』の舞台は激動の幕末。黒船来航に揺れる幕府が、日本初の海軍養成プロジェクトを創設し、そこに集められた武士、百姓、漁師らさまざまな出自の若者たちが奮闘する姿を描く。松本は、若者の1人、旗本の息子・榎本釜次郎を演じる。
蒸気船「観光丸」に乗り込んだ榎本は、船の最深部、通称「ぼっとん」で石炭をくべ続ける若者を率いている。罪人の小六(今江大地)、幸吉(小笠原健)、大作(松本祐一)ら寄せ集めの彼らに少しずつ仲間意識が芽生えていき、訓練で日本各地を巡るうちに、歴史を動かすことに――。物語の場面がほとんど船底で進められるという、ユニークな作品だ。
――まず、榎本釜次郎という役への抱負をお聞きします。
「榎本釜次郎は僕の実年齢よりも若い役なので、若々しさをどう見せていくかが今回の課題ですね。彼はエリートの旗本なんですが、船底で、船の中の文字通り最下層の仕事をすることになります。舞台は僕にとって、自分のすべてがさらけ出されるような感覚がありますが、さらに踏み込んで、釜次郎のように泥水をすする覚悟でやりたいです」
――主演舞台は2022年の『アップデート』以来3年ぶりとなりますが、座長としてはどうカンパニーを盛り上げたいと思いますか。
「座長をさせていただくのは久々ですが、僕が『行こうぜ!』と引っ張っていくよりは、チームの相乗効果で熱量が上がっていくような舞台にしたいと思っています」
――小六役の今江さんら、共演する方々の印象は?
「皆、僕の若い頃よりも断然上手です。だから自分の芝居心に今、火がついています。そもそも僕は怠けがちだし、稽古やリハーサルもあまり好きではなくて。だからこの舞台のように、毎年あえてハードルの高いことをやって自分を律しているところがあります」
――練習が好きではない、というのはなぜでしょうか?
「1人でいるとすぐ怠けてしまって……。もともとの性格が面倒くさがりだからでしょうか(苦笑)。でも表現することは好きですし、EXILEのパフォーマー時代も自分を高めてくれる仲間がいたから、一緒に努力してこられました」
――そのEXILEの経験で、今糧になっていることは。
「EXILEでは自分たちは『ダンサー』とは言わず『パフォーマー』と言っていました。決められた振りを踊るのではなくて、その場の空気を操って、歌の物語を伝えていくのがパフォーマーです。そして空間の熱気を作っていく。だから、観客が求めているものを感じ取る力もすごく養われた気がしますね。場を操る力は、舞台でも役立っていると思います」
――パフォーマーを卒業後も、舞台や映像で俳優を続けてきましたが、どんなところにやりがいを感じてきましたか。
「全てが順調で楽しい、なんてことは全くなくて、何度やっても『俺、上手くないな』と反省してしまいます。どの作品でも完璧を目指して、でもその度に自分の及ばないところが見つかって悩む。この繰り返しです。けれどもこの苦しみの先で、作品が形になった時の気分はたまらないので、芝居に挑む度に山登りをしている気分です」

パフォーマー勇退後、俳優にまい進「表現者としての責任感」
松本は16歳でダンスを始め、MAKIDAI、USAらと共にダンスチーム・BABY NAILを結成。ここでの活動が当時ZOOのメンバーだったHIROの目に止まり、HIROに誘われて1998年に彼が率いるJapanese Soul Brothersに加入。このグループが翌99年にJ Soul Brothersとしてメジャーデビューし、01年にEXILEに改名した。パフォーマーと俳優業を両立してきたが、難病のベーチェット病を患う苦難もあった。2015年に40歳でパフォーマーを勇引退した時、仲間の熱い姿に刺激を受けてきた故の覚悟ができた。
――パフォーマーを勇退した時、未練はなかったのでしょうか。
「『歌やダンスも、いつまでも若い頃のようにはできない』と覚悟はしていて、未練はありませんでした。ただ、残って頑張るメンバーに対しての責任感というか、自分の決断でステージを離れたからには、彼らにも顔向けできることをやっていかないと、と思ってきました。だから今でもEXILEの看板を背負って役者をしています。この責任感も、HIROさんの影響かもしれないですね」
――それは、HIROさんのリーダーシップからも学んだことでしょうか?
「HIROさんは『人の人生を左右してしまうことへの責任感』がすごく強い人だなと思います。オーディションで下す合否一つで誰かの人生が変わります。僕も誘ってもらったから今の自分がありますし、『選んだ人を一流にする』という覚悟は一貫している人です。そんな人たちを見てきたから、僕も表現者としての責任感がつきました」
――では、松本さんなりの責任感とは?
「芝居を続けること、頑張っている姿を見せることですね。簡単に結果が出るものではないですし、オファーをもらわないと始まらないので、EXILEと違って“アウェイ”で戦っている気分です。でも芝居で努力して得られる幸福感で、僕自身が楽しそうに生きているように見えれば、それがファンや後輩に僕ができる貢献かなと思います」
――最後に、これからも表現者としてどう生きていきたいか、抱負をお聞きします。
「『稽古、やりたくないなあ』と思いながらもこれだけ続けて来られたのは、やはり芝居が好きだからです。今でも悩みながら舞台に立っていますが、『苦悶するのが楽しい』という感覚って、僕よりずっと年上の大御所の方も感じているんじゃないかと思うんです。60歳や70歳になってもこんな風に苦しみつつ楽しんでいるのかなと思うので、この“仮説”が本当かどうか、将来の僕自身で確かめたい気持ちも抱いて、長く俳優を続けていたいです」
□松本利夫(まつもと・としお)1975年5月27日生まれ。神奈川県川崎市出身。1999年にJ Soul Brothersとしてメジャーデビューし、2001年にグループはEXILEに改名。2007年には劇団EXILE第1回公演『太陽に灼かれて』で俳優活動をスタートさせる。2010年には1人舞台「松本利夫ワンマンSHOW『MATSUぼっち』」を上演し、21年まで延べ7回公演。2015年12月31日にEXILEのパフォーマーを卒業。その後も映画「無頼」(2020年)や、サンテレビ「ライ麦畑でGIGをして」(2023年)に主演するなど、俳優として活動を続けている。
ヘアメイク/稲野麻亜里
スタイリスト/jumbo (speedwheels)
