新幹線に乗って予約していた座席まで来たら、目を疑う光景が広がった。自分の席に、すでに誰かの荷物が置いてあるではないか。近くでは、スーツ姿の男女グループがお酒を飲んでわいわい騒いでいる。「えーっ、私の席……無い」。座席の無断使用とマナー違反に、あ然とした。車掌の対応も釈然とせず……。とんだ災難に遭った女性会社員に詳細を聞いた。

　西日本を走る新幹線の車内。指定席に向かうと、すでに乗っていた、日本人の30～70代の男女混合の7～8人グループが、酒盛りを始めていた。スーツなどのビジネス向けの服装で、出張か社員旅行のような雰囲気だったという。

　2人がけシートを4人ボックス席にして、まるで「パーティー」のように盛り上がっていた。女性は「声のトーンは大きく、笑い声も大きい。おつまみや缶チューハイを片手に席を立ち、ウロウロしていました。居酒屋での宴会と何ら変わりない様子でした」と振り返る。

　予約していた指定席に異変が。明らかに他人の荷物が置いてある。「自分の席を使用している形跡があるので、まず自分を疑い、便名と車両座席を何度も確認しました」。座席は間違いなかった。

　グループの人たちはお酒が入っている。下手に話しかけたら、トラブルに巻き込まれる可能性がある。女性は突如、難しい状況に追い込まれた。

「恐らくこの方たちだろう、と予測できたのですが、酔っ払いグループだったので、私が自らお声がけするのは避けました」。だが、車内で車掌を探したが、運悪く見当たらなかった。

　女性は心を決めた。「仕方なく、『すみません』とお声がけしました。乗車券を見せて、相手に確認していただいたのですが、酔った口調で、『はい、こちらですね』と、詫びることなく、私の席に置いてある荷物をよけようとしました」。

　とはいえ、どうしてもそのまま座る気は起きない。「やむを得ず、2席前に座ろうとしたら、『あ、そこ空いてるからそこに座ってください』と言われました。“お前が言うな！”という感じですよね」。ちなみに、周囲の状況はというと、「私が乗り合わせた時には、他の客と特にトラブルはなさそうでしたが、チラチラ後ろを確認するためにのぞき込む客が他にも数名いました。グループはかなりの泥酔、宴会っぷりでしたので、関わりたくないというのが本音だと感じました」。迷惑行為に、あきれてしまったという。

　女性がもやもやしているのは、車掌の言動だ。「後に車掌が回って来ました。理由を話し、席を移動してることを伝えました。座席チェック後、移動は問題ないとOKをもらえました。ただ、私のほうから、『かなり迷惑極まりない行為なのでどうにかならないのですか？』と、対応をしてもらえるようお願いしたのですが、『お客さまのお席は移動で問題ないことと、あとはこちら側の問題となりますので』との返事でした。やんわり宴会場に注意を促して去っていきました」。

　その後も宴会は続き、女性は当惑したまま次の駅で降りた。「車掌にとっても、酔っ払いをあまり刺激をしたくないというのが本音なのかな、と思いました」。続けて、「これってどうなの？　そう思います」とため息をついた。

　互いに気持ちよく、乗り合わせた時間が過ごせるよう、乗車マナーはしっかり守りたいもの。もし、新幹線で仲間とお酒を飲むにしても、相応の気遣いが求められる。

　当然、新幹線は居酒屋ではない。節度も必要だろう。「新幹線での飲み食いは規制されてないから何をやってもいい、というわけではありません。最低限のルールやマナーを守ってほしいです。人が集まり大人数になれば気持ちも大きくなって、『このぐらいいいだろう』と自分を許してしまいがちではありますが、気を付けてほしいです。この方たちも社会人で、普段はしっかり社会のルールを守って生活しているに違いないと思いますが、このように羽目を外して迷惑行為に及んでしまうのは、本当に残念でなりません」と話している。