馬場や猪木が第3試合に登場 プロレス界の非常手段「逆取り」とは【連載vol.2】
コロナ禍に熱中症警戒アラートも加わり、今年の夏はまさに暑さとのデスマッチのようだが、かつて昭和の「夏のプロレス界風物詩」といえば屋外決戦だった。
金曜午後8時更新「柴田惣一のプロレスワンダーランド」
コロナ禍に熱中症警戒アラートも加わり、今年の夏はまさに暑さとのデスマッチのようだが、かつて昭和の「夏のプロレス界風物詩」といえば屋外決戦だった。
令和2年、新日本プロレスが8月29日(土)、21年ぶりに神宮球場で大会を開催することになった。気になるのはお天気。屋外大会では避けられない「雨天中止」。現在のプロレス界では、ほとんど聞かれなくなった4文字である。
屋外大会といえばスーパーの屋上駐車場、野球場、広場……。夏のシリーズには必ず、4、5大会は屋外特設リング大会が含まれていた。
大方、駅からは離れた場所にあり、バス停が近くにあればまだマシ。タクシーしか交通手段がないこともしばしば。携帯電話もまだまだ普及前で、公衆電話もなかなか見当たらず、記者泣かせだった。
もちろん、ファンが一番、不安だったはず。年に一度のプロレス観戦が雨で流れてしまっては悔しい限り。予備日も用意されていたが、休みが取れるとは限らない。
団体、関係者、プロモーターも気が気ではない。降るのか、降っていてもやみそうなのか。微妙な雲行きは心配の種だった。
運悪く雨粒が落ちてきたら……「逆取り(さかどり)」という非常手段がとられた。試合の順番を入れ替え、メインイベントから先にやってしまう。馬場さんや猪木氏を見られれば、万が一、途中で中止になっても、何とか納得していただけるはず。
前座試合の後、第3試合に馬場さんや猪木氏が急遽、登場するシーンを何度か見かけた。傘をさしながらも、ファンは喜んでくれたものだ。
リングマットは雨に濡れると滑る。試合が終わるたびに、モップがかけられたり、ロープをタオルで拭いたり、若手選手は大忙しだった。