ガレージに10年放置のトヨタ名車、「処分」検討も…50代オーナーが執念のレストア 公道復帰までの物語
約10年間放置していた、1985年式のトヨタ・カローラレビン。“あの日の情熱”を取り戻し、完全復活させた。青春時代から乗り続け、若い頃はレースを共に走った相棒。50代オーナーに、胸が熱くなる愛車物語を聞いた。
レースのデビュー戦優勝の過去も AE86歴は2台
約10年間放置していた、1985年式のトヨタ・カローラレビン。“あの日の情熱”を取り戻し、完全復活させた。青春時代から乗り続け、若い頃はレースを共に走った相棒。50代オーナーに、胸が熱くなる愛車物語を聞いた。(取材・文=吉原知也)
AE86歴は2台で、最初は白の2ドアモデル。25年前の98年に、現在の赤の3ドアを中古で手に入れた。個人売買で30万円ぐらいだったという。
そこからサーキットにのめり込んだ。ドリフト中に横転したこともある。レース場を駆け抜けてきたが、2010年にエンジンブロー。致命的な故障となり、ここで、「一度、僕自身がやる気を失ってしまったんです」。愛車はガレージで眠りにつくことになった。
普段使いのミニバンで生活。レースへの熱い気持ちはすっかり下火になってしまった。
転機が訪れたのは、くしくも新型コロナウイルス禍。外に出られない、何かしたいけど動けない――。そんなうつうつとした“外出自粛”の日々を過ごすうちに、レース場の記憶がよみがえってきた。
「在宅勤務が増えてきて、やる気が出てきたんですよ」。ほとんど置いたままにして、車検も切れてしまったカローラレビンの“復活計画”が始動した。
2020年5月、エンジンルームの塗装から開始。自ら手掛けた。何度も塗り直してきれいに仕上げ。そして、要となる「AE111の5バルブエンジン」の入手に成功し、レストアを進めた。翌21年7月に無事に車検を取得。公道復帰を実現させた。
「週末の時間をほとんどすべて使ってレストアに取り組みました。うまくいかないことも多くて。電装系はずぶの素人ですが、レース時代の知識をフル活用して、整備書を読み込んで、昔の仲間にも聞いて、それでなんとか復活させました。エンジンがかかったときは『やったー』って。それはそれはうれしかったですよ」と笑顔で振り返る。
ガレージに放置、と言っても、心に誓っていたことがある。「いつか必ず、復活させるぞ」。20代の頃から乗ってきた青春時代の相棒だ。「レースに出始めたとき、フレッシュ部門のデビュー戦で優勝して、翌年に2連覇したことがあるんです」。もちろん今も家にトロフィーを飾っている。一時は「どうしようかな」と「処分」の二文字が頭をよぎったが、邪念を振り払った。情熱の火が消えることは、けっしてなかった。
プチ自慢はボディーカラー。実は純正色ではなく、「ロッソコルサ」を採用。フェラーリの赤で“違い”を出している。今は妻とドライブの日々を思う存分に満喫。「もうレースはさすがに出ないかなと思っていますが、また楽しく乗っていますよ。できるだけ長く、このクルマを運転していたいですね」と目を輝かせた。